…たとえば綾は前代に中心をなした四枚綾から,3枚,6枚の組織を主体とするようになり,地を三枚綾,文を六枚綾とした固地(かたじ)綾や,地を三枚綾とし緯を浮かして文様を織り出した浮文綾,平地に色の異なる絵緯(えぬき)を浮かして文様を織り出した浮織物,あるいは文様も共色で織った浮織物にさらに別の色の絵緯をもって異なった文様を縫取り風に織り出した二陪(ふたえ)(二重)織物などが新たに考案された。また綟り織物には,従来の2本もじれにさらに1本を加えて3本の経糸をもじらせた3本もじれの紗や,隣りあう経糸のもじれをたがいに反対にした,いわゆる対綟(むかいもじれ)(観音綟)が出現したほか,紗の組織と平組織とを組み合わせて地を紗とし,文を平織で表した顕紋紗,紗の組織を利用した特殊な変化組織である縠織(こめおり)なども考案された。これらの新たな織物類は主として公家装束の料として開発され,重用されたが,反面,織部司の弱体化にともなって,その技術は総体的に低下していった。…
…日本では平安以降〈うすもの〉と称して,装束類の夏衣料に広く活用されてきた。無紋の紗を〈素紗〉,文様を織り出したものを〈紋紗〉といい,さらに紋紗は地を紗織とし文様を平組織とした〈顕紋紗〉と,地を平組織として文様を紗織とした〈透紋紗〉とに分けられる。また金襴の製織とともに日本でも近世以降,紗地に金糸を織り入れた〈紗金〉(金紗ともいう),多色の絵緯(えぬき)を織り入れた〈繡紗〉などが作られた。…
※「顕紋紗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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