織物の三原組織のうちの一つ。織物組織のうちもっとも基本的であり、簡単な組織で、経(たて)糸と緯(よこ)糸とが1本ずつ交互に上下して、浮沈しながら交錯するものである。この組織は、経糸も緯糸も浮く長さが最小限に止められるから、地合いはがっちりと組織されることになり、じょうぶな織物組織を構成することができる。
平織組織からなる織物は、織物の発生のうちもっとも早く出現するもので、時期的には新石器時代の初めに現れ、エジプトでは紀元前4200年ごろの断片が発見されており、日本では弥生(やよい)時代の登呂(とろ)遺跡や北九州の遺跡から、やはり断片が発見されている。この組織は、おそらくそれ以前にあった編物組織(もじり編みと仮称している組織)から綜絖(そうこう)の発明によって転換し、急速に編物文化から織物文化へ発展する契機となった組織であったと推測される。
この組織は、経糸と緯糸との単位当りの糸本数により構成されるが、その比率関係によって、(1)経糸本数が緯糸本数より多い経(たて)地合いのもの、(2)経糸本数と緯糸本数がほぼ同じの平(ひら)地合いのもの、(3)緯糸本数が経糸本数よりも多い緯(よこ)地合いのもの、に分類できる。そして経緯糸の太さ、撚(よ)りの強弱、色糸の使い方を変化させることにより、地合い・外観の変わったものが生み出されることになる。たとえば、経糸または緯糸の一部に、一定間隔ごとに太い糸を織り込んで勾配(こうばい)織にするとか、別の糸を部分的に織り込んで「糸入り」や縞(しま)にするとか、あるいは緯糸を全幅にわたって緯通しすることなく、模様部分だけ編み綴(と)じるようにして織った綴織(つづれおり)などの変化組織が構成されることになる。
この基本組織は、実用的方面においてもっとも広く利用されており、衣生活のなかで用いられる大部分の織物に、この組織が使われている。
[角山幸洋]
織物の基本となるもので,経糸と緯糸が1本ずつ交互に浮沈交替して織り合わされる組織。綜絖(そうこう)2枚の最も単純な織機でも織製が可能なため,織物中最も広く応用されており,いざり機(地機)のような原始織機にたよった地方の織物や,未開地の織物には,これによるものが多い。絹による平織物を一般に〈平絹(ひらぎぬ)〉と称しており,古名にある〈縑(かとり)〉〈絁(あしぎぬ)〉などは絹糸の太い細い,組織の粗密によって区別された名称である。そのほか縞,絣,銘仙,縮緬(ちりめん),羽二重,甲斐絹(かいき),富士絹,紬(つむぎ)などは,経緯の絹糸の種類,太さ,密度,撚りの強弱および色糸の用法などにより外見は異なるが,いずれもその組織は平織を基本としている。また木綿ではキャラコ,天竺,金巾(かねきん),縞木綿,木綿絣などがあり,そのほか苧麻(ちよま)布,芭蕉布,藤布,葛(くず)布,楮(こうぞ)布,科(しな)布など植物の雑繊維を用いて,地方の地織としてつくられたものの大部分は平織のものである。
執筆者:小笠原 小枝
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…さらにインドのモヘンジョ・ダロ遺跡や南アメリカのペルー北部のワカ・プリエッタ遺跡で発見された綿布の断片は,ともに紀元前3000‐前2500年ころとされている。中国では1958年に浙江省呉興銭山漾の新石器時代遺跡第4層内の竹筐(ちくきよう)の中から,平織の小裂(こぎれ)や撚糸,組帯が発見されている。その素材は家蚕の絹糸とされているが,この地層から併出した稲もみの放射性炭素による時代判定では紀元前2750±100年となっており,この時点で中国では養蚕がなされ,絹織物を製織していたことになる。…
※「平織」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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