日本大百科全書(ニッポニカ) 「風車小屋だより」の意味・わかりやすい解説
風車小屋だより
ふうしゃごやだより
Lettres de mon moulin
フランスの作家アルフォンス・ドーデの短編集。1866~69年に主として『エベヌマン』紙、『フィガロ』紙に発表したコントを集めて、69年に単行本として出版、そののち6編が追加され、79年の決定版では25編。題名の「風車小屋」とは、パリ在住のドーデが、南仏プロバンス地方、アルル近傍に買い求めた小屋。そこで見聞した農民、羊飼いたちの話をパリの友人に送る書簡体の趣向をとる。なかでもよく知られるのは、『スガンさんの山羊(やぎ)』『コルニーユ親方の秘密』『二軒の宿屋』、オペラ脚本の原作にもなった『アルルの女』などである。プロバンス地方の明るい風土を背景に、もの悲しい挿話が諧謔(かいぎゃく)的文体に包まれ、そこはかとない詩情を醸し出している。
[宮原 信]
『『風車小屋だより』(桜田佐訳・岩波文庫/村上菊一郎訳・新潮文庫/大西克和訳・角川文庫)』