ドーデ(読み)どーで(英語表記)Alphonse Daudet

デジタル大辞泉 「ドーデ」の意味・読み・例文・類語

ドーデ(Daudet)

(Alphonse ~)[1840~1897]フランス小説家。故郷プロバンス地方の風物を叙情性豊かに描いた。短編集「風車小屋便り」「月曜物語」「タルタラン」、戯曲「アルルの女」など。
(Léon ~)[1867~1942]フランスの批評家の長男。王党主義の日刊紙「アクシオン‐フランセーズ」を創刊。

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精選版 日本国語大辞典 「ドーデ」の意味・読み・例文・類語

ドーデ

  1. ( Alphonse Daudet アルフォンス━ ) フランスの小説家。劇作家。故郷のプロバンス地方の風光を背景に人々の生活を描いた。代表作「風車小屋便り」「月曜物語」。(一八四〇‐九七

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドーデ」の意味・わかりやすい解説

ドーデ(Alphonse Daudet)
どーで
Alphonse Daudet
(1840―1897)

フランスの小説家。南フランスのニームで生まれる。幸福で放浪的な幼少年期を送ったが、家業が破産したため、田舎(いなか)町アレの中学の代用教員となって自活、のち小説家、評論家の兄エルネストErnest Daudet(1837―1921)のつてでパリに出て、作家としての修業時代を過ごした。やがて詩集『恋する女たち』(1858)で名声を得たが、出身の南フランスのプロバンス地方の人情風俗を描いた短編集『風車小屋だより』(1866)で作家としての地位を確立した。ほかにこの地方に直接題材を仰いだものとして、『タラスコンのタルタラン』(1872)、『アルプスのタルタラン』(1885)、『タラスコン港』(1890)からなる「タルタラン三部作」がある。陽気でおしゃべり、威勢のいいほらを吹く反面、気が弱くて人のいい南仏人の典型を戯画化したような主人公タルタランの珍妙な冒険物語は、現在でも人々によく知られている。

 1870~80年代のフランスでは、ゾラ、モーパッサンゴンクール兄弟をはじめとする自然主義小説家たちが、人生の「醜さ」「暗さ」を深刻な態度で描くことが多かったが、そのなかでドーデは、現実を直視する姿勢では彼らと一致しながら、いつもそれを南仏人独特の笑いと詩情でくるみ、弱者に対する同情を直接表現することによって、多くの読者に喜んで迎え入れられた。ドーデ自身のいうように「幻想と現実との奇妙な混合」こそ彼の作風の特色といえよう。

 ほかに自伝的小説『プチ・ショーズ(おちびさん)』(1868)、プロイセン・フランス戦争やパリ・コミューンのドラマにテーマをとった短編集『月曜物語』(1873)、同時代の恋愛風俗を描いた『ジャック』(1876)、『サッフォー』(1884)、ビゼーの音楽で有名な戯曲『アルルの女』(1872)などがある。なお、アクシオン・フランセーズ運動の中心人物の1人レオン・ドーデは彼の息子である。

[宮原 信]

『原千代海訳『プチ・ショーズ』(岩波文庫)』『朝倉季雄訳『サフォ』(1947・文体社)』


ドーデ(Léon Daudet)
どーで
Léon Daudet
(1867―1942)

フランスの批評家。作家A・ドーデの子。パリ生まれ。反ユダヤ主義の論客として世に出、ドレフュス事件を通じてモーラスに私淑、『アクシオン・フランセーズ』紙の主筆として国家主義を鼓吹する一方でいち早くプルーストを評価するなど、鋭い鑑賞眼に貫かれた皮肉な批評によって一家をなした。『幻と生者』Fantômes et Vivants(1914)、『オランダ通信』(1928)などの優れたエッセイ集を残している。

渡辺一民

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百科事典マイペディア 「ドーデ」の意味・わかりやすい解説

ドーデ

フランスの作家。南仏ニーム生れ。1857年兄をたよってパリに出,詩集《恋する女たち》(1858年)以後文学に専心。ゴンクール兄弟やゾラフローベールらの影響で,自然主義の作風であるが,弱いものへの温かい情感が特色。短編集《風車小屋だより》(1866年),《月曜物語》(1873年),小説《プティ・ショーズ》,〈タルタラン〉三部作,戯曲《アルルの女》ほか。その長子レオン〔1868-1942〕は批評家で,《アクシヨン・フランセーズ》紙をモーラスらと創刊。
→関連項目武林無想庵ビゼーファランドール

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改訂新版 世界大百科事典 「ドーデ」の意味・わかりやすい解説

ドーデ
Alphonse Daudet
生没年:1840-97

フランスの小説家。南フランスのニームに生まれた。父親が事業に失敗,破産したため,貧困のうちに幼少期をすごし,南仏を転々とし,一時は中学の舎監をつとめたりする。17歳のとき,作家であった兄を頼ってパリに出て,文学活動を始める。詩集《恋する女たち》(1858)がきっかけで,モルニー伯爵の秘書の職を得た。1866年,26歳で発表した《風車小屋だより》によって一躍有名になった。南仏プロバンス地方を舞台にした25の短編から成る作品集で,日本でも親しまれている〈スガンさんの山羊〉や,戯曲化され,ビゼーの作曲で有名な〈アルルの女〉などが含まれている。ドーデはパリでゴンクール兄弟,ゾラ,フローベールらと交際し,自然主義文学の影響を受けたが,ゾラのような理論や壮大な想像力はなかった。彼はつねにたずさえている手帳に,見聞きした庶民生活の印象的な出来事や個人的体験をメモしておき,それをもとにほろりとするような小さな物語をこしらえるのを得意とした。このほかに中学の舎監時代の体験にもとづいた《プティ・ショーズ》(1868),南仏人の典型のようなほら吹きのお人好しを描いた《タルタラン・ド・タラスコン》(1872),普仏戦争やパリ・コミューンを素材にした短編集《月曜物語》(1873)などがある。なお1896年にはゴンクール兄弟の遺言により,アカデミー・ゴンクールの創立会員に選ばれた。
執筆者:


ドーデ
Léon Daudet
生没年:1867-1942

フランスのジャーナリスト。A.ドーデの子。最初医学を修めたが,ドリュモンに共鳴して《リーブル・パロール》紙に反ユダヤ主義の論説を発表することでジャーナリストとしての天性に目覚めた。ドレフュス事件に際してモーラスの君主制主義を支持し〈アクシヨン・フランセーズ〉に加盟,1907年モーラスらとともに日刊紙《アクシヨン・フランセーズ》を創刊した。以後,同紙の主筆として現代文明の悪をしんらつな筆致で告発しつづけ,極右の論争家として令名をうたわれた。彼の活躍は多方面にわたり,《やぶ医者》(1894)などの風刺小説,《シェークスピアの旅》(1896)のようなユニークな伝記,《愚かしき19世紀》(1922)のような文芸評論,《幻影と生者》(1914),《ユダの時代》(1920)などの優れた回想録を残している。彼の小説鑑識眼もよく知られ,プルースト,ベルナノスらの才能をいち早く見抜き,文壇に推挙した。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドーデ」の意味・わかりやすい解説

ドーデ
Daudet, Alphonse

[生]1840.5.13. ガール,ニーム
[没]1897.12.16. パリ
フランスの小説家。富裕な家庭に生れたが,破産のため大学をあきらめ文学を志して 1857年パリに出,E.ゴンクールの弟子となり友となる。南フランス人らしい明晰さで事物や人生の機微を詳細に観察し,それを手帳に記して作品に活用するなど,客観性を追求したが,一方,人間に対する深い愛情があふれ,人間の愚かさや醜さを批判して皮肉るときでさえ,そこには憐憫の情が織込まれており,人間の宿命的な弱さ,不完全さに対する共感がある。文体は簡潔明快,優雅。主著,短編集『風車小屋便り』 Lettres de mon moulin (1869) ,小説『タルタラン・ド・タラスコン』 Tartarin de Tarascon (72) ,『月曜物語』 Les Contes du lundi (73) ,『ジャック』 Jack (76) ,『サフォー』 Sapho (84) ,ビゼーの曲で知られる戯曲『アルルの女』L'Arlésienne (72) 。

ドーデ
Daudet, Léon

[生]1867.11.16. パリ
[没]1942.7.1. サンレミドプロバンス
フランスのジャーナリスト,小説家。 A.ドーデの息子。医学を学んだのち新聞記者となり,C.モーラスとともにアクシオン・フランセーズに参加し,王党派国粋主義を掲げて激越な論陣を張った。文芸批評家としてプルースト,セリーヌなどを発掘。小説『シェークスピアの旅』 Le Voyage de Shakespeare (1896) や『回想録』 Souvenirs des milieux littéraires,politiques,artistiques et médicaux (1914~21) などがある。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ドーデ」の解説

ドーデ
Alphonse Daudet

1840〜97
フランスの小説家
モーパッサンらとともに普仏戦争に参加。自然主義派ではあるが,ゾラなどと違って明るい作風で親しまれ,むしろ印象派に近い。『風車小屋だより』『月曜物語』『アルルの女』などの代表作があり,有名な「最後の授業」は『月曜物語』に収められている。反ドイツの勢力に利用されることも多かった。

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