改訂新版 世界大百科事典 「高エネルギー高速度加工」の意味・わかりやすい解説
高エネルギー・高速度加工 (こうエネルギーこうそくどかこう)
high energy and velocity forming
火薬,高エネルギー放電,圧縮空気などの高エネルギーを使用して,高速で行う金属加工法。小型の機械で大きな加工力が得られ,高速で変形すると低速加工ではできない形状の製品の加工が可能であり,生産能率も高められるなどの面から研究が進められた,第2次大戦後の塑性加工の分野での特徴ある技術開発の一つである。火薬の爆発力を材料の成形力に用いる爆発成形では,従来のプレス機械ではまとめて1回で行うことができなかった成形を1パスで行えるとか,また普通のハンマーで鍛造できなかった材料の加工が可能になるというような利点がある。火薬のエネルギーは空気あるいは液体の衝撃波として材料に加えられ,材料はこの衝撃波のエネルギーを運動エネルギーに変えて変形を開始する。エネルギー源として放電を利用する放電加工もあるが,とくに液中放電が検討されている。これは高圧コンデンサーに充電した電気エネルギーを液体中で瞬間放電し,そのエネルギーを利用する加工法で,放電成形(加工)と呼ばれる。ほかに,油圧や空気圧を一気に解放する形式,電磁エネルギーを利用するものもある。
普通の塑性加工も動力の巨大化とともに加工速度を増してきて,加工される材料の変形速度が高エネルギー加工における変形速度と同程度のものも現れている。そこで現在では,高エネルギー加工と高速度加工とを区別して技術開発が行われている。
執筆者:木原 諄二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報