翻訳|hammer
塑性加工では鍛造機のこと。木工や金工の金づちもハンマーというが,これはまた〈ふいご〉で加熱した火床で焼いた鉄塊を金床の上でたたく鍛冶屋の道具でもある。人力で行われていた鍛造も,動力源が水力,蒸気,空気圧などに変わり,仕事率も非常に大きくなった。このような装置で行われる加工は,主として自由鍛造や伸ばし鍛造といわれる類の鍛造である。人力という小さいエネルギー源で大きな加工を与えるのには,何十回も材料をたたいたのであるが,今日の蒸気ハンマーやエアハンマーでも一打一打のエネルギーはそれほど大きくはない。せいぜい数t・m(1t・m=105J)の大きさである。したがって,これらの鍛造は1工程を数打以上で仕上げるいわゆる逐次加工と呼ばれるものに属する。
ハンマーによる鍛造は,強力な枠組み(ハウジング)を備えたプレスの出現により,鍛造加工の主流から退いた。すなわち,材料に加工を与えるエネルギーは,ハンマーの場合はハンマーの運動エネルギーであり,ハンマーを支持する構造のほうは,あまり反力を受けないようになっているのである。それに対して,プレスは加工力とハウジング中に生ずる応力とがつねに相拮抗するような形で,加工が進行するように設計されている。そのために高い加工荷重を支える強固なハウジングが必要である。また,ハンマーの場合はハンマーの運動エネルギーを利用するので,逐次加工のたびにエネルギーを補給するという意味があるが,プレスの場合は加工を中断することはせいぜい中断中の材料の変形抵抗の緩和を期待すること程度で逐次加工をする意味はそれほどないのである。
ハンマーのもつ利点,すなわち運動エネルギーの利用により小型・小容量でも逐次加工によって大きな加工度をもつ製品を製造できることは大きな魅力である。ハンマーが人間の介入によらないで,熟練度の高い作業プロセスをこなす補助システムを備えることができるならば,再び将性のある加工機械として脚光を浴びることは確実である。現在,逐次加工のNC制御(数値計算制御)の開発も進んでおり,ハンマー自体のロボット化も可能になる日が近いといえる。
執筆者:木原 諄二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
金属材料の熱間鍛造機の一種で、ドロップハンマーともいう。ラムとよばれる重い鉄槌(てっつい)に金型工具を取り付け、これの自由落下によって、金敷上に置かれた素材を打撃するのでこの名がある。打撃の際かなりの騒音・振動を生じる。ハンマーの容量は落下部の総重量で表し、数百キログラムから2トン程度までのものが多い。ラムを所定の高さに引き上げるのにチェーンを使うのがチェーンハンマー、ベルトを使うのがベルトハンマーである。硬質の長い厚板を二つの互いに逆方向に回転する摩擦ローラーの間に挟み、ローラーの回転によって板を引き上げる方式のものがボードハンマーである。ばねハンマーは、板ばねの反動を利用して、ラムに加速度をつけて打撃力を増すようにくふうした機械である。圧縮空気を利用して落下の加速度をつけるハンマーには、低圧(5~7気圧)で作動する空気ハンマーと、100気圧以上に及ぶ高圧空気(または窒素ガス)を用いるハンマーとがある。後者は1957年にアメリカで開発されダイナパックDynapakの名で知られており、ラムの落下速度が毎秒15~20メートルに及ぶ。高エネルギー高速度鍛造機の代表である。
[高橋裕男]
出典 ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』ダイビング用語集について 情報
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