圧縮機などにより圧力を加えて体積を縮小させ高圧にした空気。酸素補給用,物質輸送用,空気分離用,化学工業用など日常多方面に利用されている。圧縮空気は,圧力エネルギーとして大きな潜在エネルギーを保有しているので,この空気が膨張し,熱降下が起きるとき,外部にエネルギーを放出し,仕事を行うことができる。このように圧縮空気のもつエネルギーを有効な仕事に変換する機械は圧縮空気機械,圧縮空気機関と呼ばれ,安全性に優れ,取扱いが容易であり,とくに火気を避けなければならない環境下では,動力発生用原動機として重用される。具体的な使用例としては(圧力は大気圧を基準とするゲージ圧力で示してある),0.1kgf/cm2(9.8kPa)以下の圧力の低い圧縮空気は,空調用として室内換気や冷却塔,あるいはトンネル内送・排風用やごみ焼却炉用として用いられ,やや圧力が高いものに火力発電プラントにおける燃料の燃焼用の空気や下水道の曝気(ばつき)用の供給空気などがあり,粉体輸送にも比較的低圧の空気の流れが利用される。1~7.5kgf/cm2程度の高圧の圧縮空気は,製鉄・製鋼用の高炉で銑鉄を作る際に用いられるほか,空気から酸素と窒素とを分離生成する空気分離装置などで利用される。また,風胴などでは0.01~20×106kgf/cm2の広範囲の圧縮空気が用いられる。圧縮空気機械の例としては,孔あけ加工をする空気ドリル,ピストンの衝撃力によりびょう打ちを行う空気リベッター,空気ハンマー,ボルト,ナットなどの着脱作業に用いる空気レンチなどがあり,いずれも6~7kgf/cm2程度の圧縮空気により駆動される。岩工・鉱山・トンネル工事用の削岩機も同程度の圧力の圧縮空気を利用している。車両用空気機械としては空気ブレーキやドアエンジンがある。圧縮空気のもつエネルギーを動力源とした原動機である圧縮空気機関には,容積型とターボ型がある。前者には,炭鉱などで坑内運搬用機関車として用いられる圧縮空気機関車の原動機用の蒸気機関型,各種の空気機械に使用される星形シリンダー回転型,ホイストなど減速機付き原動機として用いられる歯車型,小型空気工具や渦巻ポンプなどと組み合わせ使用する回転可動翼型などがあり,後者は空気タービンとして軸流送風機,渦巻ポンプ,または小型機械と組み合わせてその原動機として用いられる。
執筆者:有賀 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
空気を押し縮めて圧力を高くしたもの。使用目的によってその圧力は異なるが、一般にエアコンプレッサー(空気圧縮機)によって一定容積の容器の中に空気を目的圧力まで詰め込んでつくる。圧縮空気は、これを容器の口から大気中に放出したときに働く力を利用して、いろいろな仕事をさせることができる。電車のブレーキの操作、ドアの開閉には、1平方センチメートル当り5~7キログラムの圧縮空気が、鉄道トンネル、地下鉄トンネル内、あるいは鉱山の坑道などの換気のためには、1平方センチメートル当り0.1キログラム以下の圧縮空気が使われている。また、ガソリン内燃機関のかわりに、引火の危険性のない圧縮空気を用いた原動機も広く使われている。とくに爆発性ガスのある炭坑内や化学工場で、圧縮空気機関車、さく岩機、空気ハンマー、空気ホイスト、空気ドリルなどの形で使われる。そのほかアクアラングの呼吸用に、また燃焼バーナーの支燃性ガス用に使われる。
[戸田源治郎]
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