油中で材料と電極との間にアークを飛ばすと材料表面が少しずつ欠落していく現象を利用して,彫刻や切削などの加工を行う方法。電極には炭素棒,銅,黄銅などが使用される。材料の切断の際に電極に細い黄銅線を使用すると,切断速度が遅いきらいはあるものの,黄銅線の太さにわずか加えた程度の切代(きりしろ)で切断ができ,歩留りがよいうえ,材料に圧力や摩擦力を加えることがないので材料に大きなひずみを残さない。また切断面は材料が溶け散るような機構で切断が進行するため,ごく薄い層だけ高温から急冷した組織になるのが特徴である。被加工材の用途によってはこの加工面の特徴がかえって問題を起こす場合があるが,この組織はごくわずかの化学研削や研磨で除去できるので大きな障害とはならない。加工速度が遅いので,生産性向上のためにはならい装置をつけたり,NC化(数値制御化)して無人運転の方法がとられている。材料の切削や彫刻の場合には機械加工では材料の硬さが問題になるが,放電加工では放電の熱により材料表面が微量ずつ溶け散る形で加工が進むので,材料の強度とは無関係である。他の切削法で十分生産性を上げて工作できるような材料を対象とするのではなく,焼入硬化した工具鋼など他の方法では削ることが困難な物体に対する切断,穴あけ,研削などへの利用に意義がある。
執筆者:木原 諄二
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金属電極間に電圧を加えると、電極間に放電がおこる。放電によって電極が消耗していく。この原理を用いて、ソ連のラザレンコ夫妻は、1943年に金属の切削に成功した。これを放電加工といい、欧文略号でEDMともいう。放電加工は通常、ケロシン油や脱イオン水中で行われ、加熱による材質の変化を防止している。電極間の電圧は1マイクロメートル当り20ボルトで、電極の形状のとおりに切削できるようになる。また電極に金属細線を用いて糸鋸(いとのこぎり)のように自由な形状に切削することができるワイヤーカット放電加工機もつくられている。これらの放電加工機は超硬合金のような難加工性材料の切削には有用であって、今日では重要な工作機の一つになっている。また、放電を利用して粉末の焼結、放電における圧力を利用した変形加工なども行われている。
[本間基文]
数十マイクロメートル単位の加工が可能となるマイクロ放電加工技術も開発されている。
[編集部]
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