高野詣(読み)こうやもうで

改訂新版 世界大百科事典 「高野詣」の意味・わかりやすい解説

高野詣 (こうやもうで)

霊場高野山にもうでるには二つの目的があった。その一つは永遠の生命と呪力をもった弘法大師の廟にもうでて,その功徳利益を受けることである。その二は山岳霊場である高野山に納骨し,もしくは位牌を立てて,死者の霊を鎮魂供養することである。この高野山にもうでることは,現在のように交通が開けるまでは難行苦行であったが,平安時代中期以来,法皇上皇,摂政関白をはじめ,貴賤衆庶があつまった。この高野詣の功徳を説いて,諸国から参詣者を誘引したのは高野聖(ひじり)である。しかし一方高野山は山岳霊場として女人禁制であり,高野七口には女人堂があったため,石童丸説話のような哀話を生むことになった。高野聖の唱導では,高野山をひとたび踏むものはすべての罪とわざわいが消えるといったので,一般庶民も生涯一度の高野詣を果たそうとした。こうした諸国参詣者に対して,高野山寺院は宿坊を提供し,また土産物屋ができ,交通業者があつまって,高野山は門前町となった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の高野詣の言及

【紀伊国】より

…同じころから,これらの寺社領をはじめ多数の荘園が設立された。【薗田 香融】
【中世】

[熊野詣・高野詣の盛行]
 院政期になると,上皇・女院および貴族による熊野三山あるいは高野山への参詣が,前代とは比較にならないほど盛んになった。とくに上皇の熊野参詣は回数が多く,後白河上皇は34回にも及び,後鳥羽上皇は平均10ヵ月に1度という頻度である。…

※「高野詣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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