死者の霊を祀(まつ)るために、法名(戒名(かいみょう))を記した長方形の木牌。大別して野位牌、内位牌、寺位牌の3種がある。野位牌は死後ただちにつくる。白木の粗末なもので、もとは葬式組の人たちの手製、いまは葬具店で買い求める。僧侶(そうりょ)(神式なら神職)に戒名などを書いてもらって枕元(まくらもと)に置く。葬列では相続人が捧持(ほうじ)する。土葬の場合は埋葬した上に立てておき、四十九日まで、あるいは朽ち果てるまで放置する。火葬の場合は、持ち帰って屋内の臨時の祭壇に祀ることが多い。
内位牌は、野位牌を放棄してつくりかえるもので、漆塗りのりっぱなものが多い。常時仏壇に安置して供養(くよう)の対象にする。1人の死者に対して1体が普通であるが、夫婦の戒名を併記したものもある。その場合、一方が存命であれば朱字にしておく。薄板に戒名を書いて幾人分も重ねて、一つの位牌にかけておき、命日の人の分を上に出すようにした繰り出し位牌もつくられている。
寺位牌は、菩提寺(ぼだいじ)(檀那寺(だんなでら))や本山に預けるものである。内位牌とは別に位牌をつくり、供養料を添えて寺に持って行く。寺では本堂のわきや裏、または位牌堂などに安置し、朝夕の勤行(ごんぎょう)のたびに供養することになる。寺位牌は、信心深い人や経済的にゆとりのある人だけがつくる。位牌の起源については、霊の依代(よりしろ)という伝統的な考え方と、仏教の卒塔婆(そとうば)とが習合したものと思われるが、儒教の神主(しんしゅ)の習慣が転じたものだという説もある。
[井之口章次]
死者の法名(戒名),俗名,死亡年月日,年齢を記した仏具。死者霊の依代(よりしろ)とみなされ,仏壇に安置されて盆,彼岸,命日,あるいは朝晩の供養の対象となる。一般に葬式の際に白木に墨書した二つの仮位牌を作り,一つは墓地へ,他は家の仏棚に安置し,忌明けの四十九日ないし一~三年忌のときに漆塗や金箔塗の本位牌に換える。仏教の位牌は儒教の神主(しんしゆ)や神道の霊代(みたましろ)に相当する。日本には禅僧が中国より伝えたものとみられるが,それ以前は民俗的なイハイギや南島に今日もみられる香炉(壺)などであったと考えられる。《園太暦》には1358年(正平13・延文3),足利尊氏の五七日の仏事における位牌の文面に関する論議が記され,《鹿苑院殿薨葬記》には1408年(応永15)に足利義満の位牌作成の記事がある。庶民の位牌は墓地の石塔と同様,近世の元禄以降に一般化した。三十三年忌をすぎると,位牌を焼却,寺納などして個霊祭祀をやめる。なお,生前に作成する逆修位牌もある。
執筆者:赤田 光男
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