位牌(読み)イハイ

デジタル大辞泉 「位牌」の意味・読み・例文・類語

い‐はい〔ヰ‐〕【位×牌】

死者戒名法名などを記した木の札。禅僧によって中国からもたらされ、江戸時代に一般化した。

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精選版 日本国語大辞典 「位牌」の意味・読み・例文・類語

い‐はいヰ‥【位牌】

  1. 〘 名詞 〙 中世以後の仏教信仰で、死者をまつるために法号、戒名を記して、依代(よりしろ)とする板。死者の冥福を祈る霊牌(れいはい)生前にその寿福を願う逆修牌(ぎゃくしゅはい)などがある。
    1. [初出の実例]「位牌書様并羽林著服等条々談之事」(出典園太暦‐延文三年(1358)六月四日)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「位牌」の意味・わかりやすい解説

位牌
いはい

死者の霊を祀(まつ)るために、法名(戒名(かいみょう))を記した長方形の木牌。大別して野位牌、内位牌、寺位牌の3種がある。野位牌は死後ただちにつくる。白木の粗末なもので、もとは葬式組の人たちの手製、いまは葬具店で買い求める。僧侶(そうりょ)(神式なら神職)に戒名などを書いてもらって枕元(まくらもと)に置く。葬列では相続人が捧持(ほうじ)する。土葬の場合は埋葬した上に立てておき、四十九日まで、あるいは朽ち果てるまで放置する。火葬の場合は、持ち帰って屋内の臨時の祭壇に祀ることが多い。

 内位牌は、野位牌を放棄してつくりかえるもので、漆塗りのりっぱなものが多い。常時仏壇に安置して供養(くよう)の対象にする。1人の死者に対して1体が普通であるが、夫婦の戒名を併記したものもある。その場合、一方が存命であれば朱字にしておく。薄板に戒名を書いて幾人分も重ねて、一つの位牌にかけておき、命日の人の分を上に出すようにした繰り出し位牌もつくられている。

 寺位牌は、菩提寺(ぼだいじ)(檀那寺(だんなでら))や本山に預けるものである。内位牌とは別に位牌をつくり、供養料を添えて寺に持って行く。寺では本堂のわきや裏、または位牌堂などに安置し、朝夕の勤行(ごんぎょう)のたびに供養することになる。寺位牌は、信心深い人や経済的にゆとりのある人だけがつくる。位牌の起源については、霊の依代(よりしろ)という伝統的な考え方と、仏教の卒塔婆(そとうば)とが習合したものと思われるが、儒教の神主(しんしゅ)の習慣が転じたものだという説もある。

[井之口章次]

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改訂新版 世界大百科事典 「位牌」の意味・わかりやすい解説

位牌 (いはい)

死者の法名(戒名),俗名,死亡年月日,年齢を記した仏具。死者霊の依代(よりしろ)とみなされ,仏壇に安置されて盆,彼岸,命日,あるいは朝晩の供養の対象となる。一般に葬式の際に白木に墨書した二つの仮位牌を作り,一つは墓地へ,他は家の仏棚に安置し,忌明けの四十九日ないし一~三年忌のときに漆塗や金箔塗の本位牌に換える。仏教の位牌は儒教の神主(しんしゆ)や神道の霊代(みたましろ)に相当する。日本には禅僧が中国より伝えたものとみられるが,それ以前は民俗的なイハイギや南島に今日もみられる香炉(壺)などであったと考えられる。《園太暦》には1358年(正平13・延文3),足利尊氏の五七日の仏事における位牌の文面に関する論議が記され,《鹿苑院殿薨葬記》には1408年(応永15)に足利義満の位牌作成の記事がある。庶民の位牌は墓地の石塔と同様,近世の元禄以降に一般化した。三十三年忌をすぎると,位牌を焼却,寺納などして個霊祭祀をやめる。なお,生前に作成する逆修位牌もある。
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百科事典マイペディア 「位牌」の意味・わかりやすい解説

位牌【いはい】

死者の霊をまつるため法名忌日などを書き,仏壇に安置する須弥壇形の台のある板。これは官位姓名を記し神霊に託する儒教の制を仏教が取り入れたものといわれ,禅宗に伴って伝来し,江戸以後一般化した。一説では,古代の霊代(たましろ)が仏教に習合したともいう。死亡時は白木で,後に黒,金箔(きんぱく)塗などに造り替える例が多い。

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葬儀辞典 「位牌」の解説

位牌

死者の霊を祀るための木製の碑。表に戒名、裏に俗名・年齢・死亡年月日などが書かれ、四十九日までは白木の位牌を祀ります。忌明け後、白木の位牌は寺に納め、『塗り位牌』といわれる黒塗りの本位牌を仏壇に納めます。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「位牌」の意味・わかりやすい解説

位牌
いはい

死者の霊を祭るための板で,その面に法名を記す。後漢の頃から儒教が行なっていた存命中の人の姓名階位を板に記入して神にゆだねることを,仏教が取入れたといわれる。江戸時代以降広く行われる。

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