… 以上からもわかるように,祟り霊はその規模のいかんを問わず祭祀や祈禱によって鎮められるとの観念が生みだされた。つまり祟りと鎮魂との相関が意識されることになったのであるが,それは全体として閉鎖的な社会・政治環境における精神病理的な現象であったと考えることができる。ところで,このような祟りと鎮魂のメカニズムは,道真の事例においてみられるように,それ以降の日本の政治史にもしばしば現れるようになった。…
…ところで仏教は原則として,その無我説の立場から霊魂の存在を説かなかったが,浄土教思想の勃興とともに,死後における往生の主体の問題が提起され,それをめぐってやがて霊魂の存在を暗に認める立場をとるようになった。日本では古く霊魂のことを〈たま〉といい,〈たまふり〉や〈たましずめ〉などの鎮魂儀礼が重要視された。それは遊離しやすい状態の〈たま〉を身体につなぎとめるための呪術であったが,他方,遊離した〈たま〉はときに怨念を含む御霊(ごりよう)や物の怪(け)に変貌して,生きている者に危害を加えると信じられた。…
※「鎮魂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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