歴史上、退位後の天皇の呼称として使われた。正式名称は「
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譲位した天皇の称。太上天皇の略。譲位は645年(大化1)皇極天皇が孝徳天皇に皇位を譲ったのに始まり,新帝は姉の皇極に皇祖母尊(すめみおやのみこと)の尊称をたてまつったが,大宝令において〈譲位の帝〉の尊称を太上天皇と定めた。中国の太上皇帝(太上皇)に由来する称で,太上は至上,至高の意。略して太皇などとも称したが,上皇の称がもっとも広く用いられた。大宝令制定以後は,譲位した天皇は自動的に太上天皇と称され,持統より平城まで7人の上皇が出現したが,823年(弘仁14)嵯峨天皇が譲位に当たり太上天皇の尊号を辞退したため,淳和天皇が詔して尊号をたてまつり,以後これが常例となり,譲位後数日ないし十数日の間に新帝から尊号をたてまつる詔を発する儀制が成立し,嵯峨より江戸末期の光格まで,北朝の上皇を含めて53人の上皇が尊号をうけた。そのほか,皇位につかずして太上天皇の尊号をうけた例に,後堀河天皇の父守貞親王(後高倉院)と後花園天皇の父貞成親王(後崇光院)があり,没後に尊号を追贈された例に,後陽成天皇の父誠仁親王(陽光院)と光格天皇の父典仁親王(慶光天皇)がある。太上天皇の異称には,上記の略称のほか,〈おりゐのみかど〉〈もとのうへ〉〈むなしきふね〉などの和風のものもあり,みな譲位の意による称で,〈むなしきふね〉は中国に出典のある〈虚舟〉の和訓である。しかしもっとも広く行われた異称は,上皇の御所を指す呼称から転じた院,仙院,仙洞などで,上皇が複数現存した場合は,一院または本院,中院,新院とよんで区別した。仙院,仙洞は上皇の御所を神仙の居所に見たてたもので,碧洞,洞中,藐姑射山(はこやさん)など,同類の用語もある。また上皇は出家に際して尊号を辞退し,以後太上法皇,あるいは略して法皇と称するのが例となったが,尊号の辞退は受理されないのが通例であり,出家後も身位上の正式の尊号は依然として太上天皇である。
執筆者:橋本 義彦
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譲位した天皇の尊称。正式には太上(だいじょう)天皇と称する。中国の太上皇(たいじょうこう)、太上皇帝の称に始まり、太上は最上または至上の意。日本では697年(文武天皇1)譲位した持統(じとう)天皇が初めて太上天皇と称し、大宝令(たいほうりょう)・養老令(ようろうりょう)両令にもこの称を載せている。平安時代以降、新帝の詔(みことのり)によってこの称を贈る例となり、これを尊号の儀といったが、また上皇と略称した場合も多い。上皇は天皇に准ずる礼遇を受け、ことに平安後期には政治の実権を握って、その権勢は天皇をもしのいだ。上皇の執政を院政というのは、その御所の称から転じて上皇を院と称したためであるが、さらに譲位の先後により、一院、本院、中院(なかのいん)、新院の称も生まれ、ほかに、御所を神仙の居所になぞらえた仙院、仙洞(せんとう)などの語も上皇の別称となった。また出家後の称には、太上法皇、法皇、法帝、禅定仙院などがある。なお特例として、天皇の父で、即位しなかった親王に太上天皇の尊号を贈った例が二、三ある。
[橋本義彦]
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太上天皇の略称。奈良時代に用例はなく,嵯峨太上天皇が太上皇と称されたのをへて,平安中期から諸史料にみえはじめる。出家すると法皇という。
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…太上天皇(上皇)の別称。元来一区画をなす建物をいい,とくに朝堂院,穀倉院,勧学院などのように,宮殿,官舎,倉庫,学校,寺院などの名称につけられたが,平安時代中ごろから単に〈院〉といえば上皇の御所をさす用語となり,転じて上皇の別称ともなった。…
…中国における皇帝の父の尊称。上皇。太上とは最上の意。…
…これは第1の特徴に密接に関係するが,天命を受けた天子が天帝をまつる中国の郊祀とは基本理念を異にするとともに,天皇の地位と不可分であった。孝謙上皇が淳仁天皇から政権を奪ったときの詔に,祭祀と小事のみ天皇の親裁にゆだねると宣したのは,端的にこれを裏づけている。江戸時代に来航した欧米人の目に,天皇が将軍=世俗的皇帝に対して,〈宗教的皇帝〉〈生得の教皇〉と映じたゆえんである。…
※「上皇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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