内科学 第10版 「高IgE症候群」の解説
高IgE症候群(原発性免疫不全症候群)
概念・病因
黄色ブドウ球菌による皮膚膿瘍と肺炎,アトピー性皮膚炎,血清IgEの著しい高値を3主徴とする免疫不全症である.免疫系だけではなく骨,軟部組織,歯牙の異常を呈する多系統疾患である.高IgE症候群の責任遺伝子としてTYK2とSTAT3がある.
臨床症状
皮膚膿瘍が寒冷膿瘍(cold abscess)となることが特徴である.免疫異常以外に特有の顔貌,骨粗鬆症,病的骨折,脊椎側弯,関節の過伸展,乳歯の脱落遅延などを合併する.
検査成績
高IgE血症(2000 IU/mL以上),好酸球増加(700/μL以上).
合併症
肺炎罹患後の肺囊胞は,本症に特徴的である.
予後
肺囊胞が存在する症例ではアスペルギルス,多剤耐性緑膿菌感染症の治療に難渋することがある.
診断
血清IgE値や好酸球数,肺炎・皮膚膿瘍の罹患回数,脊椎側弯症,病的骨折,乳歯の脱落遅延,特徴的顔貌,肺の器質的病変の有無などをスコア化し,高得点のものを高IgE症候群と臨床診断する.遺伝子検査により確定する.
治療
スキンケアと感染症に対する早期の治療が重要である.本症の患児では感染症に罹患していても重症感に乏しく,CRPの上昇も軽度で感染症の早期発見が困難である.予防的抗菌薬(ST合剤など)と抗真菌薬の投与を行う.[峯岸克行]
■文献
Notarangelo LD, Fischer A, et al: Primary immunodeficiencies: 2009 update. J Allergy Clin Immunol, 124: 1161-1178, 2009.
Ochs HD, Smith CIE, et al: Primary Immunodeficiency Diseases, 2nd ed, Oxford University Press, New York, 2007.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報