花粉症(読み)カフンショウ(その他表記)Pollinosis

デジタル大辞泉 「花粉症」の意味・読み・例文・類語

かふん‐しょう〔クワフンシヤウ〕【花粉症】

花粉によって起こるアレルギー。花粉が鼻や目の粘膜に触れることにより、くしゃみ・鼻水や、目の充血・かゆみなどの症状が起こるもの。枯草熱こそうねつ
[補説]原因となる植物は50種以上あるとされる。春のスギヒノキ、秋のブタクサヨモギが代表的であるが、シラカバハンノキケヤキブナカモガヤなどによっても起こる。

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共同通信ニュース用語解説 「花粉症」の解説

花粉症

花粉を体の外に出そうとする拒否反応で起こるアレルギー疾患。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、充血といった症状が出る。代表的なスギ花粉の場合、飛散は3月ごろがピークとされる。環境省によると、日本では1960年代に初めて報告され、患者は年々増えて社会問題化した。全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象にした調査では、有病率が4割を超えている。

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精選版 日本国語大辞典 「花粉症」の意味・読み・例文・類語

かふん‐しょうクヮフンシャウ【花粉症】

  1. 〘 名詞 〙 花粉を吸ったために起こる一種のアレルギー反応。春先のスギ、ヒノキ、初夏のオオアワガエリ、秋のブタクサ、ヨモギなどの花粉によって、くしゃみ、鼻水、目の充血・かゆみなどの症状が起こる。花粉病。
    1. [初出の実例]「もともと日本では花粉症は少なく」(出典:保健薬を診断する(1968)〈高橋・佐久間・平沢編〉付二)

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家庭医学館 「花粉症」の解説

かふんしょう【花粉症 Pollinosis】

◎特定の花粉が原因に
[どんな病気か]
[原因]
[症状]
[検査と診断]
◎花粉を避けることがたいせつ
[治療]
[日常生活の注意]
[予防]

[どんな病気か]
 花粉症とは、おもに裸子植物(らししょくぶつ)の花のおしべにできる花粉が、風にのって鼻や目に入り、アレルギー症状をおこす病気です。
 大きく分けて、樹木の花粉と草の花粉があり、開花期になると花粉症の患者さんは、特定の花粉に反応して、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、流涙(りゅうるい)などの症状が出ます。
 日本に多いスギ花粉症(かふんしょう)は、東北より西に多くみられ、毎年2~3月の初めから症状が現われ、4月の終わりまで続きます。
 北海道ではイネ科の植物の花粉による花粉症が多くみられ、多くの患者さんがこの病気で悩んでいます。

[原因]
 花粉症の原因として、スギ花粉がよく知られていますが、ほかにカモガヤ、チモシーなどのイネ科、ブタクサ、ヨモギなどのキク科、カナムグラ(クワ科)などの草の花粉のほか、スギと同類のヒノキ、ハンノキ、マツなどの樹木花粉による花粉症があります。ある地域に特有のヤシャブシ(本州)、カンバ(北海道)といった植物の花粉による花粉症もあります。
 また、果実や観賞用の花の栽培に従事する人たちがかかる花粉症の原因植物として、リンゴ、ナシ、モモ、イチゴ、バラ、コスモス、キク、ブドウなどが知られています。
 いずれの花粉も非常に軽く、風にのって受粉できるようになっているため、多少の風が吹くだけで、空中に大量に飛ぶという性質があります。
 花粉の飛散期(ひさんき)は、それぞれの植物の種類によって異なるので、1年のなかで、ある季節だけに発症するのであれば、その季節にだけ飛散する花粉が原因と考えられます(図「日本におけるおもな花粉飛散と季節」)。
 このような病気は、アレルギー反応(免疫のしくみとはたらきの「アレルギー反応」)によっておこります。
 そのしくみは、ある花粉が大量に鼻や目に入ると、体内で免疫反応(めんえきはんのう)がおこり、花粉という異物(いぶつ)(抗原(こうげん))に対して結合するIgE抗体というものが増え、免疫的に記憶されます。
 つぎに目や鼻に入った花粉抗原は、それらの粘膜(ねんまく)で抗体と反応し、その情報を受けて、粘膜にある肥満細胞(ひまんさいぼう)と呼ばれる細胞から、神経や血管を刺激するヒスタミンなどの刺激物質が放出され、かゆみや鼻汁(びじゅう)の分泌(ぶんぴつ)などの症状がおこるのです。
 スギ花粉症の患者さんが、昭和50年を境として急激に増えたのは、戦後の植林政策によって、スギの花粉量が増えたことに加え、自動車の増加にともなう排気ガス、食生活の変化などの影響により、IgE抗体がつくられやすい環境になったためとみられています。

[症状]
 花粉症の特徴は、鼻と目に症状が出ることです。鼻の症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりで、さらされる花粉の量(期間)が増えると、のどにも、かゆみや痛みなどの症状が出てきます。
 目の症状は、まぶたの粘膜のかゆみや流涙がみられます。アトピー性皮膚炎(せいひふえん)(「子どものアトピー性皮膚炎」、「おとなのアトピー性皮膚炎」)をともなう人は皮膚症状の悪化もみられることがあります。
 これらの症状は、花粉の飛散の開始とともに現われます。なかでもスギ花粉症の場合は、春一番(はるいちばん)といわれる南風が吹き始めると同時に、これらの症状が急に現われます。

[検査と診断]
 毎年一定の季節になると、必ずこのような症状が出る場合は、花粉症が疑われます。確実に診断するための一般的な検査法としては、症状そのものがアレルギー反応によるものかどうかを調べるものと、アレルギー反応によるものであるならば、その原因(抗原)は何かを調べるものの2種類があります。
 前者については、鼻や目の症状がウイルスや細菌による感染など、ほかの病気の可能性もあるので、これらの病気を除外する検査が行なわれます。このために、鼻汁の検査を行なって鼻汁中に好酸球(こうさんきゅう)という細胞が増えているかどうかをみます。
 もし、好酸球が鼻汁中に増えていれば、症状がアレルギーによるものであると診断できます。
 つぎに抗原は何かを調べるための検査が行なわれます。からだの中に、どういう抗原に対するIgE抗体が増えているかをみるため、皮膚テスト(ツベルクリン反応のように皮膚の浅いところに抗原を含んだ液を注射する、あるいは皮膚に傷をつけたところに抗原液をたらして反応をみる)や、患者さんの血液をとって、そのIgE抗体を試験管の中で測定します。
 ある花粉に対するIgE抗体が陽性と出たら、その花粉の飛散時期と症状の出る時期が一致することを確認します。
 一般的には、皮膚テストまたは血液検査によるIgE抗体の検査は、花粉など吸入性抗原10種類を同時に行なうことができます。その抗体のなかから、たとえばスギ花粉だけが陽性と出て、2~4月に症状があると確認されれば、スギ花粉症と診断がつくわけです。
 皮膚反応や血液検査で、IgE抗体の値が陽性と出ても、季節性の発症がなければ、花粉症とは診断されません。

[治療]
 治療法としては、抗原との接触を避けること、薬物療法減感作療法(げんかんさりょうほう)、手術などがあります。
 症状を改善するために、種々の薬物が用いられます。抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、ステロイド薬、抗コリン薬血管収縮薬などです。
 抗ヒスタミン薬は、鼻、目のかゆみ、くしゃみ、鼻水を抑える作用があり、効果が30分以内に現われます。
 ただし、副作用として多少の眠けがともなう場合もありますから、車の運転時などには注意が必要です。最近は、眠けのない抗ヒスタミン薬が発売されるようになりました。内服するものと、局所に噴霧するものとがあります。
 抗アレルギー薬は、肥満細胞から刺激物質の放出を抑えるはたらきがあり、効果が現われるまでに、長期間の使用が必要ですが、くしゃみ、鼻水のほか、鼻づまりにも効果があります。
 また、アレルギー症状の発現を予防する効果があることも、抗アレルギー薬の特徴といえます。これにも、内服するものと噴霧するものがあります。
 ステロイドとは、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンのはたらきをもつ薬で、炎症をしずめる強い作用のほか、細胞の数、性質を変化させる効果があります。
 この薬には、ほかの薬では得ることのないこのような作用がある反面、経口投与(内服)によって免疫能の低下(感染しやすい)、高血圧、糖尿病の悪化などの全身の副作用があります。現在、一般には、使用量を少なくすることによって、副作用をきわめて少なくしたステロイドの外用剤が使われています。こうした局所ステロイド薬は、鼻のかゆみをなくし、くしゃみ、鼻水の回数を減らしたり、鼻の粘膜の腫(は)れをとるのに有効です。効果が出るまでに数日かかります。
 服用薬としては、抗ヒスタミン薬とステロイド薬の複合剤が市販されていますが、全身への副作用の点から、長期間の服用には注意が必要です。
 また、抗コリン薬は、鼻水の多い患者さんに、局所噴霧で使われます。
 最近は、IgE抗体の産生を抑える薬も市販されています。
 また、目の症状に対しては、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、ステロイドの点眼薬(てんがんやく)が用いられます。
 以上の薬物は、花粉症の個々の症状を抑える薬ですが、鼻や目の症状がかなり重い病気ですから、これらの薬を単独で使うよりも、2種類を組み合わせて使うことが多くなっています。
 減感作療法は、抗原を皮内(ひない)に注射することによって、少しずつからだをならしていくという考えで始められた方法です。効果が持続するので根本的療法にもっとも近い療法といえます。
 この注射は、最初の2~3か月は週2回、あとは週1回を1か月、2週に1回を2か月、1か月に1回を2~3年間続けます。すると、治療を中止しても長年にわたり効果があります。
 現在、スギ花粉症に対する減感作療法の効果をより高める、注射用エキスの開発が進行中です。

[日常生活の注意]
 花粉にさらされないようにすることは、症状が出るのを予防するために、もっとも重要なことです。
 そのためには、花粉情報に注意し、飛散の多い日の外出を避けるか、あるいは外出時にはガーゼマスク、帽子、めがねをつけるようにします。
 帰宅時には、コート、帽子などを外でたたいて、花粉を落としてから部屋に入ります。
 また、部屋の中に花粉が入ったり、浮遊したりしないよう、窓を閉めます。また、ふとんや洗濯物を外に干すのをやめます。部屋は加湿して、床はぬれたぞうきんでよく清掃します。

[予防]
 精神的ストレス、睡眠不足、疲労、多忙といった都市型の生活は、大気汚染とともに鼻粘膜(びねんまく)の抵抗力を弱め、正常の機能を乱す原因ともなります。このような悪い環境は、鼻汁の分泌能を変え、粘膜を流れる血液量を変えてしまい、異物が侵入しやすくなる原因にもなります。
 生活環境の改善は、治療にも予防にもつながることを、よく理解しておかなければなりません。

かふんしょう【花粉症】

 風媒花(ふうばいか)(風にのって花粉をとばす花)の花粉が原因でおこるアレルギー性の病気を総称して花粉症といいます。
 アレルギー性鼻炎(せいびえん)(鼻過敏症(「鼻過敏症(アレルギー性鼻炎/血管運動性鼻炎)」))、アレルギー性結膜炎(せいけつまくえん)(「アレルギー性結膜炎(アレルギー性鼻結膜炎)」)、ぜんそく(「ぜんそく(気管支ぜんそく)」)などがその代表です。
 花粉(抗原(こうげん))を吸入しているうちに、これに対する抗体(こうたい)が体内で産生され、抗原が体内に入ると抗原抗体反応(こうげんこうたいはんのう)がおこって症状が出現します。
 原因となる植物はその土地の植生によって異なり、日本ではスギ花粉症が多く、アメリカではブタクサ、イギリスではイネ科の花粉症が多いなどの特徴があります。
 花粉症は、原因植物の開花期に一致した季節性をもって症状が出ます。
 スギは2~4月、イネ科のカモガヤ、オオアワガエリ、スズメノテッポウなどは5~6月、ブタクサは8~9月、ヨモギは9~10月ころに症状が出現します。
 職業に関係したイチゴ、リンゴ、モモなどの果物の花粉症も報告されています。
 治療は、アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎と同様に行ないます。

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改訂新版 世界大百科事典 「花粉症」の意味・わかりやすい解説

花粉症 (かふんしょう)
pollinosis

植物の花粉が原因となって起こるアレルギー性疾患,いわゆる花粉アレルギーで,以前は枯草熱hay feverといわれ,欧米で,サイロに牧草を入れるときに鼻粘膜のかゆみと痛み,くしゃみ,鼻づまり,鼻汁,涙などの発作を起こすものをいった。歴史的には古代ローマのガレノスが同様の記載をしている。19世紀末に,これらの症状が花粉によって起こることが証明され,花粉症と呼ばれるようになった。日本で花粉症に関する詳細な研究報告がなされたのは1960年荒木英斉によるブタクサ花粉症がはじめてで,次いで,64年にスギ花粉症,牧草花粉症などが報告され,多くの花粉症が知られるようになった。花粉症の原因花粉としては,2~6月にかけて木本植物(スギ,マツ,ニレ,カバノキなど),3~10月にかけてイネ科草本植物(カモガヤなど),8~10月にかけて種々の雑草(ブタクサ,ヨモギをはじめとするキク科の草本,カナムグラなど)が知られている。

 花粉症の症状は,花粉によって感作され,抗体が産生された状態に,再び抗原(花粉)が侵入すると,抗原抗体反応によりヒスタミン,ロイコトリエンなどの化学伝達物質が遊離されることによって起こり,鼻症状(鼻のかゆみ,鼻汁,くしゃみ,鼻づまりなど),眼症状(眼のかゆみ,流涙,結膜炎症状など),咽喉症状(のどのかゆみ,不快感,咳など),消化器症状(食欲不振,悪心,嘔吐,下痢など)のほか,全身症状として倦怠感,脱力感,発熱などが出現する。花粉によって喘息(ぜんそく)が起こるものを花粉喘息というが,末梢気道までは花粉が到達しにくいために発作は起こりにくく,頻度は少ない。

 近年,スギ花粉症の患者が多発している。スギ花粉症は,斉藤洋三らが栃木県日光市で発見し,64年にはじめて報告したもので,日本独特の花粉症であり,北海道南部から鹿児島に至るほぼ全国にわたって症例が報告され,年々増加している。最近では,91年および95年春に全国的に大発症がみられ,スギの木のみられない都会地でもスギ花粉症が多発している。

 花粉症の頻度について,まとまった報告はない。アメリカの花粉症(大部分はブタクサ花粉症)の頻度は人口の2~3%といわれている。日光市での筆者の調査(1977)ではスギ花粉症の頻度は約5%であった。90年に日光市内の小学生について調査した結果では,スギ花粉の皮膚テスト陽性率は39%,スギ花粉症の頻度は23.6%に及んでいる。最近では,都市部のスギ花粉症の頻度は20%程度とする報告が多い。

 花粉症などのアレルギー性疾患の発症には体質が関与しており,遺伝的要素が強く,いわゆるアトピー体質者に発症しやすい。しかし,近年のスギ花粉症の多発傾向は,体質的要素以外の要因が考えられる。抗原側の要因として,大気の乾燥により花粉が飛散しやすくなったことがあげられる。また,スギ花粉の飛散量は前年の夏の気温と関連があり,冷夏の翌年は花粉の飛散量が少ないことなどが知られている。環境要因として,大気汚染が重要な要素と考えられる。気管支喘息の発症と大気汚染との関連が示唆されているが,花粉症についても都市部の頻度が高く,大気汚染物質中の粒子状物質,特にディーゼル排出微粒子が鼻粘膜に影響を与え,抗原物質の体内への侵入を容易にしている可能性が強い。

 花粉症の診断には,花粉エキスによる皮膚テストが行われる。症状の出現する季節により,原因花粉を推定することもできる。陽性率の頻度の高いものは,スギのほか,カモガヤ,ブタクサなどである。治療としては,対症療法として抗アレルギー剤の内服,副腎皮質ホルモン剤などの抗アレルギー剤の鼻腔内噴霧,点眼治療が行われる。原因療法として減感作療法が行われるが,効果の発現までに長期間を要し,2~3年治療を続けなければ効果のみられないことが多い。
アレルギー
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「花粉症」の意味・わかりやすい解説

花粉症
かふんしょう
pollinosis

花粉に対するアレルギー反応により、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎が引き起こされる現象。おもな症状は、鼻ではくしゃみ、鼻水(鼻漏)、鼻づまり(鼻閉)、眼(め)ではかゆみである。花粉が鼻腔(びくう)粘膜、結膜に付着することにより発症するため、原因となる花粉が飛散する季節にのみ症状がみられ、「季節性アレルギー性鼻炎」ともいわれる。

[高増哲也 2021年9月17日]

原因と対策

日本において原因となる花粉でもっとも多いのはスギ花粉であり、2019年(平成31)の調査では全人口の39%の人に症状がみられるとされているものもある。どの季節に症状がみられるかによって、原因となる花粉の見当をつけるが、スギは2~4月、ヒノキは3~5月、カモガヤは5~6月、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラは8~10月、シラカンバは4~6月がおもなピークである。地域による差もあり、スギは北海道、南九州、沖縄を除く全国でみられ、シラカンバはおもに北海道でみられる。

 対処法としては、花粉が鼻や眼に付着しないように、マスクやゴーグルをすることなどがある。スギ、ヒノキの花粉は遠くまで飛散するため、森や林に行かなくても影響がみられるが、雑草の花粉は飛散距離があまり長くないため、生えている場所に行くことを避けるという対策も有効である。

[高増哲也 2021年9月17日]

合併症

花粉症がある場合に、果物や野菜に含まれる類似成分に対してアレルギー反応がおこることがある。口の中やのどに限局したかゆみや違和感である場合には、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)といわれる。また、これは花粉症のある人にみられる現象であるため、花粉‐食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome:PFAS)ともよばれている。

[高増哲也 2021年9月17日]

治療

花粉症の薬物治療では、おもに内服薬と点鼻薬、点眼薬が用いられる。内服薬としては、くしゃみ、鼻水、眼のかゆみに対しては抗ヒスタミン薬、鼻づまりに対しては抗ロイコトリエン薬がある。点鼻薬はステロイド薬が中心である。点眼薬は抗ヒスタミン薬、メディエーター遊離抑制薬が中心である。症状が強い場合にはステロイド点眼薬、免疫抑制点眼薬を選択できるが、ステロイド点眼薬は眼圧の上昇に注意が必要である。免疫療法として、スギ花粉抗原エキスを舌下または皮下に繰り返し投与することで抗原に慣れさせる方法があり、原因に対する根本的な治療法となりえる。

[高増哲也 2021年9月17日]

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百科事典マイペディア 「花粉症」の意味・わかりやすい解説

花粉症【かふんしょう】

花粉が原因となってIgE抗体が関与して起こるアレルギー性疾患。花粉が抗原として体内に侵入すると,抗原抗体反応によってヒスタミンなどが分泌され,鼻づまり,眼のかゆみ,流涙,咳(せき),発熱など,風邪様の症状を示す。原因となる花粉は,日本ではスギ,マツが最も多く,米国ではブタクサが主である。診断は花粉エキスによる皮膚テストやラスト法で行い,治療は抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服や減感作療法。原因が明らかになるまでは枯草熱といわれた。
→関連項目スギ(杉)ディーゼル排出ガス公害甜茶

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「花粉症」の意味・わかりやすい解説

花粉症
かふんしょう
pollinosis

アレルギー性鼻炎のうち,特に花粉の飛散期である春と秋に限定して起きるものをいう。普通のアレルギー性鼻炎の場合,日本では主に室内塵 (ハウスダスト) やそれに含まれるコナダニ,チリダニが抗原となるが,花粉症ではスギ花粉やブタクサ花粉,稲科植物 (カモガヤ,オオアワガエリなど) の花粉が原因となってI型アレルギー (免疫グロブリンの一つである IgE抗体が関与する反応) を起す。くしゃみ,鼻水,鼻づまりのほかに,眼,皮膚,のどなどにも発赤や腫脹が起り,さらに全身症状や気管支喘息を随伴する。花粉の飛散期を過ぎると突然,症状は消失する。花粉が原因であることが証明されなかった 1873年以前には,誤って枯草熱 (こそうねつ) hay feverといわれた。治療には対症的に抗ヒスタミン剤や局所用ステロイド剤の使用が試みられるが,最も効果的なのはマスクなどによって花粉の吸入を避けることである。また,開花期の数週間前から花粉毒素を使って脱感作を行うこともある。

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世界大百科事典(旧版)内の花粉症の言及

【鼻アレルギー】より

…小麦粉のような食品,消化剤のような薬剤,カビ,ほこりやほこりのなかにいるダニ,動物のふけや毛のようなものまで,すべてアレルゲンになる。花粉は春のスギ,夏のカモガヤ,秋のブタクサが有名で,花粉アレルギーの人はその花粉が飛散する時期だけとくに症状が悪化し,眼のかゆみを伴うという特徴をもち,〈花粉症〉ともいわれる。臨床的に鼻アレルギーとほとんど同じ症状を呈しているにもかかわらず,アレルギー反応を介しているとは思えない鼻炎がある。…

※「花粉症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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