改訂新版 世界大百科事典 「魯班」の意味・わかりやすい解説
魯班 (ろはん)
Lǔ Bān
古代中国の著名な工匠。魯般とも書く。姓は公輸(こうしゆ),名は般。春秋時代魯国の人で,奇巧の器具を制作して名高かったと伝える。公輸子ともいい,魯の哀公(前494-前468)の時代の人で,魯の昭公の子ともいわれるが定かでなく,また一説には魯班と公輸は別人ともいう。《墨子》に公輸の一編があり,公輸般が楚国のために〈雲梯(うんてい)〉と呼ばれる高く長い攻城の器具を作り宋を攻めようとしたことが記される。また同書の魯問篇に,竹木を削って(鵲(かささぎ),あるいは鳶(とび)ともいう)を作り,飛ばすと3日間も落ちることがなかったという。同種の挿話は《孟子》《韓非子》《淮南子(えなんじ)》などに伝えられており,古代の名匠として広く知られ,以来しばしば名匠の例に引かれ,後世,工匠の始祖として崇祀された。明代の《魯班経》のように建築書に名を冠され,明の名匠の蒯祥(かいしよう)が蒯魯班と称され,営造用の吉祥文字を刻んだ曲尺を魯般尺と呼ぶ等のように,その高名は深く浸透している。
執筆者:田中 淡
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報