日本大百科全書(ニッポニカ) 「鮒ずし」の意味・わかりやすい解説
鮒ずし
ふなずし
琵琶(びわ)湖とそこに流れ込む川の入口でとれるゲンゴロウブナ、ニゴロブナを材料とする滋賀県の郷土料理。平安時代の『延喜式(えんぎしき)』に記載されている自然発酵(乳酸発酵)の古い形のすしで、いまにその片鱗(へんりん)が残っている。フナの腹わたを抜き、独特の塩漬けにしておき、別の桶(おけ)に塩と酒粕(さけかす)を敷き、その上にフナの腹に飯、頭に酒粕を詰めて並べる。その上に飯と酒粕、またその上にフナを置くというぐあいに数段重ね、焼酎(しょうちゅう)をふりかけて重石(おもし)をかけ自然発酵させる。漬けてから2~3か月後に用いる。晩春から初夏の子持ちブナを材料にしてつくるが、酒の肴(さかな)にも飯のおかずにもよい。
[多田鉄之助]