発酵の終わった清酒もろみを搾り袋(酒袋(さかぶくろ))に入れ,槽(ふね)と呼ばれる圧搾機で搾って新酒をとったあと袋に残った固形分。酒にならなかった白米とこうじの未溶解部分と酵母の菌体からなる。その成分の一例をあげると,水分50%,アルコール8%,デンプン・糖分25%,タンパク質15%,灰分など2%である。酒かすの重量の15~20%が酵母菌体であるため栄養に富み,ビタミンが多い。
《万葉集》巻五の山上憶良の〈貧窮問答の歌〉には〈糟湯酒(かすゆざけ)〉で寒さをしのぐ様子が歌われており,8世紀初頭にはどぶろくをこした残りのかすを湯にといて飲んでいたのであろう。《延喜式》には〈大篩(おおぶるい)で酒を篩う〉とあり,また〈酒槽(さかふね)〉を用いて,〈糟垂袋(かすたれぶくろ)〉すなわち酒袋に入れたもろみを搾り,現在に近い酒かすがえられていたと思われる。かす漬の記録は奈良時代からみられるが,《本朝食鑑》には塩を加えた酒かすに野菜や魚介を漬け保存する方法が記載されている。ウリなどのかす漬を奈良漬というのは,奈良が中世における銘醸地であったためである。江戸時代に入り焼酎の製造技術が伝来し,新かすをせいろうで蒸留したかすとり焼酎がつくられるようになり,その蒸留かすは稲作の肥料として米収を増加させ,またかす酢(〈酢〉の項目を参照)の原料ともされるようになった。板状のかすは板かすと呼ばれ,そのまま焼いて食用とし,またかすを湯にといて砂糖を加え即席甘酒として飲んだり,塩魚や野菜などとともにかす汁にする。
→清酒
執筆者:菅間 誠之助+松本 仲子
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清酒もろみを濾過(ろか)して酒を分離した残り。以前はもろみを搾り袋(酒袋(さかぶくろ))に入れ、槽(ふね)(圧搾機)にかけて圧搾し、清酒を分離したが、今日では袋や槽を用いない効率のよい搾り機がある。酒粕は白米成分のうち清酒にならなかった部分で、酒粕の量は原料米の約20~25%である。タンパク質、繊維やデンプンと酵母からなり、米のタンパク質や酵母からのアミノ酸、核酸が豊富で、また麹(こうじ)の酵素が生きているので、食品の香味の付与材として昔から使われている。成分は水分50%、アルコール分8%、デンプン25%、タンパク質15%であり、ビタミン類(100グラム中B10.03ミリグラム、B20.26ミリグラム、ナイアシン2.0ミリグラム)も多く、栄養豊富な食品に匹敵している。搾りたての板(いた)粕あるいは新粕は、そのまま食用にされたり、汁物に加えて粕汁にしたり、湯に溶かし砂糖を加えて甘酒にして飲用される。タンクに投入して貯蔵した粕は、踏み込み粕あるいは老粕(ひねかす)といわれ、自己消化して柔らかくなっており、奈良漬け、わさび漬け、魚や野菜の粕漬けに用いられる。酒粕は味がよいので、酢酸発酵させて粕酢(かすず)の原料とし、またそのまま蒸留し、あるいは再度粕もろみにして発酵させて蒸留し、「かすとり焼酎(しょうちゅう)」の原料として用いられる。かつては新鮮な酒粕の香気を合成清酒の製造の際に利用したこともある。
[秋山裕一]
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…中華料理とも称される。中国語では料理は〈菜〉と表し,〈菜単〉とはメニューを指す。中国各地方の料理,さらに宗教に由来する〈素菜〉(精進料理),〈清真菜〉(イスラム教徒の料理)などをふくめて中国料理という。
【特色】
中国料理は世界に類のない長い歴史と普遍性をもった料理である。一般的にどの国の誰が食べてもうまい料理として,フランス料理とともにあげられる。それぞれブルボン朝,明・清王朝などの宮廷料理から発達しており,洗練されつくした国際性の高い料理といわれる。…
※「酒粕」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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