改訂新版 世界大百科事典 「鸚鵡七十話」の意味・わかりやすい解説
鸚鵡七十話 (おうむななじゅうわ)
Śukasaptati
サンスクリットの説話集《シュカサプタティ》。原本は失われ,原作者も年代も不明であるが,2種の異本が伝わっている。全体の枠物語によれば,賢い鸚鵡が飼主の旅行中,情人の許に行こうとする妻の外出を止めるため,70夜にわたって毎夜興味ある話を語り,最後に窮境を脱する方法を尋ね,妻が返答を考えているうちに夜が明けると,その解決法を語り,かくして無事に夫を迎えた。ここに収められている話は多種多様であるが,浮気女の情事に関するものが多い。ペルシア語訳《トゥーティー・ナーメTūtī-Nāmeh(鸚鵡物語)》(14世紀)をはじめ,トルコ語(15世紀),近代インド諸方言,マレー語等に翻訳,翻案され,東西の説話文学に影響を与えている。
執筆者:田中 於菟弥
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報