麻薬拮抗薬(読み)まやくきっこうやく

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

麻薬拮抗薬
まやくきっこうやく

麻薬拮抗剤。モルヒネやヘロインなどのアヘンアルカロイド系麻薬およびその合成麻薬の示す諸作用に拮抗する薬剤の総称で、モルヒネ拮抗剤ともいう。
 麻薬拮抗剤は、麻薬の作用に拮抗するだけでそれ自体は鎮痛作用をもたない薬物(ナロキソンやナルトレキソンなど)と、それ自体もある程度の鎮痛作用を有する薬物(ナロルフィンやレバロルファンなど)との2種に大別されるが、モルヒネ代用剤で依存を生じにくい強力な鎮痛剤ペンタゾシンも後者に属する。これらはいずれも化学構造が類似しており、作動薬と拮抗剤との関係では、たとえばモルヒネのメチル基をアリル基に置換したものがナロルフィンで、オキシモルフィンのメチル基をアリル基に置換したものがナロキソン、レボルファノールのメチル基をアリル基に置換したものがレバロルファンである。
 麻薬性鎮痛剤は脳内にあるオピオイド(麻薬類)受容体に作用してその効果を現すとされており、オピオイド受容体にはミュー(μ)、カッパ(κ)、シグマ(σ)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)などが知られている。このうち、鎮痛作用に関係するのはμとκで、σ受容体は身体違和感、幻覚、血管収縮などに作用するとされている。ナロキソンはこのμ、κ、σのすべてに拮抗的に作用するといわれ、拮抗効果はもっとも強力である。
 麻薬拮抗剤は、コカインやLSDを除く麻薬のもつほとんどの作用に拮抗し、依存者に与えると禁断症状を呈する点で共通しているが、臨床的には鎮痛作用の有無などによって多少使用目的を異にする。ナロキソンは、モルヒネやペチジンなどすべてのアヘンアルカロイド系麻薬の急性中毒の治療に最適とされているが、麻薬以外でも吸入麻酔剤であるハロタンの呼吸・循環抑制作用にも拮抗し、ショックによる低血圧にも有効である。また、ナロルフィンは、禁断症状を現すかどうかによって麻薬依存者を発見する目的で使われるほか、ペチジンを用いた無痛分娩(ぶんべん)でおこる新生児の無呼吸に対する治療などにも用いられる。[幸保文治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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