日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘロイン」の意味・わかりやすい解説
ヘロイン
へろいん
heroin
ジアセチルモルヒネの通称。麻薬。塩酸塩は白色の結晶性粉末で、水に溶けやすい。生体内で急速に加水分解され、モノアセチルモルヒネからさらにモルヒネとなって作用する。作用はモルヒネの2~5倍強く、持続時間は約2分の1である。すなわち、モルヒネよりさらに強力な鎮痛作用を有するが、依存性の発現も早く、反復投与により高度の精神的ならびに身体的依存を生じ、禁断現象がおこりやすい。ヘロインを注射すると緊張感が著しく低下し、眠気のあとに短い陶酔のときがくる。また、においに対する障害、皮膚のかゆみ、便秘、縮瞳(しゅくどう)がみられる。長期連用により禁断現象のほか、歯が抜けたり貧血をおこすなど慢性中毒症状もみられる。モルヒネの致死的な副作用は呼吸抑制で、大量投与時にみられるが、ヘロインも同様である。国際的に製造、販売、所持、使用が厳禁されている。医療用に使用することも禁止されている。用量が少なくて効くところから、密輸や不正使用される麻薬の中心的薬物となっており、世界的に取締りの対象となっている。
[幸保文治]