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無痛分娩 むつうぶんべんpainless labour

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

無痛分娩
むつうぶんべん
painless labour

経膣分娩時の疼痛を消失,軽減させること。自律訓練法や自己暗示法,教育や条件づけ法による和痛分娩法 (→妊産婦体操 ) と,直接薬品を使用する産科麻酔とを総称する。後者には,陰部神経麻酔と会陰浸潤麻酔,クロルエチルおよび笑気吸入法,仙骨硬膜外麻酔と低位腰椎麻酔などがある。歴史上は,1853年4月7日侍医 J.シンプソンが,ロンドンの麻酔医 J.スノーとともに,当時 34歳のビクトリア女王クロロホルムを用いて,第4王子レオポルドの無痛出産に成功してから,反対の多かった麻酔薬を用いる無痛分娩法が公式に認められるようになった。現在,鎮痛剤鎮静剤によるもの,全身麻酔法,局所麻酔法などいろいろな方法が用いられている。

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知恵蔵の解説

無痛分娩

出産時の痛みをやわらげる分娩(ぶんべん)方法のこと。日本産科麻酔学会によれば、医療機関での無痛分娩は、多くの国で硬膜外鎮痛法という下半身の痛みだけをとる方法が第一選択となっている。この場合、「無痛」とはいえまったく無感覚にするわけではなく、子宮の収縮を感じていきめる程度の感覚は残すのが一般的。「和痛分娩」と呼ぶこともある。
麻酔の方法にはいくつかあるが、硬膜外鎮痛法は、腰の後ろから脊髄(せきずい)の周りの硬膜の外側にカテーテルを入れ、そこから持続的に薬剤を注入する。ただ、硬膜外麻酔は鎮痛効果が現れるまで20分ほどかかるため、より速く鎮痛するために硬膜外より脊髄に近いくも膜下腔に麻酔薬を注入する脊椎(せきつい)麻酔を併用することもある。
痛みがやわらぐことで産婦の心理的・身体的負担を軽減できるほか、分娩時に起こりやすい過換気を防ぎ胎児への酸素供給量を維持・安定させるといったメリットが知られている。母体の呼吸器系への負荷を軽くし、循環器系の働きが安定することから、妊娠高血圧症候群、脊髄損傷、気管支ぜんそく、心疾患、脳血管障害などのある妊婦に医学的適応があるとされている。一方、合併症として、低血圧、神経障害、硬膜外血腫、胎児の一時的徐脈、母体の体温上昇が起こることがある。また、硬膜外麻酔のためのカテーテルが誤って血管内やくも膜下に入ったことに気づかないで麻酔薬を注入してしまうと、母体の意識障害や胎児への酸素供給量低下を来すリスクもある。
2017年に厚生労働省の研究班による調査では、回答のあった約2400の医療施設で16年度に約40万件の分娩があり、そのうち5.2%が無痛分娩だった。また、同年度の無痛分娩のうち58%が診療所で実施されていた。
日本では麻酔科医が不足しているため無痛分娩の実施率が諸外国に比べて低い。日本産科麻酔学会による調べでは、フランスでは約80%、アメリカでは60%以上が無痛分娩であるという。

(石川れい子 ライター/2017年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

無痛分娩

脳に痛みを伝える脊髄(せきずい)の外側にある硬膜外腔(がいくう)という場所に細い管(カテーテル)を入れ、麻酔薬を投与する「硬膜外麻酔」と呼ばれる方法が主流。鎮痛効果は個人差がある。合併症が起きる副作用はまれとされている。血圧が下がったり、鉗子(かんし)や吸引を使うお産が増えたりすることがある。

(2013-12-08 朝日新聞 朝刊 静岡 1地方)

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デジタル大辞泉の解説

むつう‐ぶんべん【無痛分×娩】

陣痛の苦しみを取り除いたり軽減したりして分娩が行われること。麻酔薬を用いる方法や、呼吸法弛緩(しかん)法などの訓練により不安を除く方法がある。

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百科事典マイペディアの解説

無痛分娩【むつうぶんべん】

出産(分娩)時の陣痛と胎児の産道通過時の圧迫による痛みを除去して分娩すること。薬物を使用する方法と,精神的方法があり,併用もされる。薬物による場合は分娩の進行に合わせて催眠薬,鎮痛薬,麻酔薬を使用する。
→関連項目スコポラミンラマーズ法

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世界大百科事典 第2版の解説

むつうぶんべん【無痛分娩 painless delivery】

分娩(出産)は本来生理的な現象ではあるものの,子宮の収縮や胎児の産道通過に伴う子宮口や腟の拡大によって痛みを伴う。これを産痛というが,この痛みをなくして分娩を遂げさせることを無痛分娩といい,そのうちで完全に無痛とはいえないが,痛みを和らげる場合を和痛分娩という。その方法には大別して次の三つがある。
[全身的無痛法]
 鎮静剤,鎮痛剤,鎮痙剤を与える方法で,分娩の初期には内服薬の服用や注射による場合が多く,ときにはモルヒネなどの麻薬を用いる場合もある。

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大辞林 第三版の解説

むつうぶんべん【無痛分娩】

出産時の苦痛を緩和または除去して分娩すること。麻酔剤を用いる方法と心理的に恐怖を除いて苦痛をやわらげる方法(精神予防性無痛分娩)がある。

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知恵蔵miniの解説

無痛分娩

痛みを消失または軽減させた経膣分娩のこと。和痛分娩ともいう。呼吸法や妊産婦体操など薬を使わないものと、鎮痛剤を使ったものとに大別される。世界的にはフランス、米国などを先進国とし、無痛分娩が普及している。日本では呼吸法などの鎮痛剤を使わない方法は広く用いられているものの、小規模産婦人科での出産が多く、設備が整っていないといった理由により、鎮痛剤を使う方法は一般化していない。鎮痛剤を用いる代表的方法には、硬膜外(こうまくがい)鎮痛と点滴からの鎮痛薬投与とがある。硬膜外鎮痛は脊髄近くに麻酔薬などを投与するもので、鎮痛効果が強く、妊産婦、胎児・出生児が眠くなることはほとんどない。点滴による投与は鎮痛効果が弱く、妊産婦、胎児・出生児が共に眠くなったり呼吸が弱くなったりする場合がある。

(2017-4-20)

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

無痛分娩
むつうぶんべん

麻酔などの方法を用いて産婦に産痛を感じさせないで分娩させることをいう。産痛とは、子宮の発作的収縮および腹圧に伴う分娩時の痛みを総称したもので、近年はあまり用いられないが和痛分娩ともよばれるように、産痛をすこしでも和らげようとするのが無痛分娩のねらいであり、無痛ということにはそれほどこだわらないのが実態である。なお、いわゆる帝王切開は完全な無痛分娩であるが、目的を異にするので別に扱われる。
 無痛分娩は、薬物による方法と薬物によらない方法に大別される。[新井正夫]

薬物による無痛分娩

産科麻酔ともよばれるもので、鎮痛法と麻酔法が併用される。まず長時間持続する分娩第一期(開口期)の痛みを除くために鎮痛、鎮静、催眠といった作用をもつ薬を内服または皮下注射して、痛みを感ずる脳を抑制させる。これを前投薬という。このとき薬の量が多すぎると胎児にまで影響を与えて生後新生児仮死をおこすことがあり、また投与が早すぎても分娩を異常に長引かせることになる。
 続いて、痛みがもっとも激しくなる分娩第二期(娩出期)には吸入麻酔と局所麻酔が行われる。吸入麻酔にはおもに笑気(一酸化二窒素)が用いられ、陣痛発作のたびに二呼吸か三呼吸笑気ガスを深く吸い込み、そのまま強く息むように指導する。局所麻酔としては、分娩第一期に行う傍頸管(けいかん)麻酔と、分娩第二期に行う陰部神経ブロックやサドルブロック(自転車のサドルが当たる部位を麻痺(まひ)させる)のほか、分娩第一期と第二期を通じて行う持続硬膜外麻酔などがあり、いずれも産婦の意識を失わせず産痛を感じさせない方法である。しかし、痛みの感じ方には個人差が大きく、麻酔薬の量を人によって加減する必要があり、薬物によらない無痛分娩法の併用も望まれる。なお、産科麻酔には育児上の経済的理由など社会的適応があり、産婦の希望によって行われることが多い。[新井正夫]

薬物によらない無痛分娩

妊娠中に産前教育をして分娩に対する身体的および精神的準備をしておく方法が広く行われている。これには、イギリスの産婦人科医リードG. D. Readが1933年に提唱した自然分娩法をはじめ、旧ソ連で50年ころから始められた精神予防性無痛分娩、さらにこれを発展させたラマーズ法などがある。自然分娩法は「不安なき分娩法」ともいわれるように、産痛に対する恐怖から心身を緊張させ、それによって産痛がひどくなり、ますます恐怖が強まるといった悪循環を断つ目的で妊娠中に分娩準備教育を行い、恐怖心を除くとともに、呼吸法や弛緩(しかん)法を指導することによって安全で産痛の少ない自然分娩を期待するもので、いわゆる妊産婦体操はこの方法の一つとして理学療法士により体系化されたものである。
 一方、精神予防性無痛分娩は、パブロフの条件反射理論を応用して精神神経科医と産科医との協力で始められたもので、やはり産前教育を行い、痛みの条件反射および恐怖や不安による痛覚閾(いき)の低下を防ぎ、分娩時には痛覚の刺激を抑制するような補助動作ができるように指導して産痛の軽減を図る方法である。また、ソ連でこれを習得して帰国したフランスの産婦人科医ラマーズF. Lamaze(1890―1957)が1952年から実施したのがラマーズ法で、呼吸法や弛緩法のほか、姿勢の訓練、腰や足の運動などを精神予防性無痛分娩に加味し、夫を参加させたり、自然分娩法における腹式呼吸を胸式呼吸にかえるなどのくふうもみられる。実際にはいくつかの方法を組み合わせて行う場合が多い。
 なお、これらとは別に、中国で発達した鍼(はり)麻酔による無痛分娩もある。[新井正夫]

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