コカイン(その他表記)cocaine

翻訳|cocaine

デジタル大辞泉 「コカイン」の意味・読み・例文・類語

コカイン(cocaine)

コカの葉からとるアルカロイド。無色の結晶。局所麻酔薬として使用。連用すると中毒を起こすので、麻薬に指定されている。

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共同通信ニュース用語解説 「コカイン」の解説

コカイン

コカの木の葉を原料として作られる違法薬物。コーク、クラックとも呼ばれる。鼻から吸引するなどして体内に取り込まれると、一時的な多幸感や陶酔感が得られるが、依存性が高く、血圧上昇などを招き死に至ることもある。コロンビアなどが生産国とされる。国立精神・神経医療研究センターは、15~64歳の使用経験者は26万人と推計している。麻薬取締法で所持や使用は懲役7年以下の罰則の対象となる。

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精選版 日本国語大辞典 「コカイン」の意味・読み・例文・類語

コカイン

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Kokain [英語] cocaine ) コカ葉の主成分で、アルカロイドの一つ。麻薬の一種。局所麻酔剤として用いられる。大脳皮質に対する興奮作用があり、発揚状態となる。連用すると耽溺性が表われるので麻薬とされる。散瞳剤として使用される。
    1. [初出の実例]「コカインを点(さ)して、銀水を点じて、それを食塩水で洗ひ落す」(出典:南小泉村(1907‐09)〈真山青果〉七)

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改訂新版 世界大百科事典 「コカイン」の意味・わかりやすい解説

コカイン
cocaine



コカをはじめ南アメリカ産のコカノキ科コカ属植物各種の葉から抽出されるアルカロイドで,メチルベンゾイルエクゴニンという化合物。化学的合成も可能である。塩化物の塩酸コカインは無色ないし白色の結晶または結晶状粉末で,味は苦く,舌を麻痺させる。代表的な局所麻酔薬であり,南アメリカのインディオはコカ葉を傷に塗布すると痛みが軽減することを古くから知っていた。局所麻酔薬としては粘膜の麻酔に都合がよいので眼科や耳鼻科領域でよく用いられる(1~10%溶液)。吸収されると多様な薬理作用を引き起こすので表面麻酔以外には用いられない。また表面麻酔に用いる場合も吸収は最小限になるようにする。吸収された場合に現れる薬理作用は次のとおりである。(1)中枢作用 初めに興奮,次いで抑制を起こす。中枢興奮によって,陶酔感,楽しい幻覚,能力の増大感などが出現するので,これらがコカイン嗜癖の誘因となる。南アメリカ,ペルーのインディオには古くからコカ葉をかむ習慣があったが,空腹をいやし,疲労感からの解放があるという。また陶酔感が味わえることから,宗教的,軍事的にも使われた。慢性的に用いると薬物依存が形成される。身体的依存はモルヒネほどではないが麻薬に指定されている。(2)交感神経系への作用 交感神経の伝達物質であるノルアドレナリンノルエピネフリン),およびその誘導体アドレナリンエピネフリン)の作用を増強する。交感神経末端から放出されたノルアドレナリンは神経末端その他の貯蔵部位に取り込まれることによって一種の不活性化を受けるが,コカインはこの取込みを抑えることによってノルアドレナリンの作用を増強すると考えられている。したがってコカイン適用時には,他の合成局所麻酔薬の場合とは異なり,アドレナリンの併用は避ける。(3)心血管系に対する作用 上述のノルアドレナリン作用増強の結果として,心臓促進,血管収縮を起こすが,大量では心臓抑制,血管拡張が起こり,血圧が低下する。

中毒量は0.1g,致死量は1.0gとされているが,当然個人差がある。急性中毒では,めまい,顔面蒼白,散瞳などが現れ,重症では精神錯乱,酩酊,振戦,悪心,幻覚,幻聴などが起こり,さらにはてんかん様痙攣(けいれん)から中枢性呼吸抑制に至り死亡する。急性中毒の経過は速く,2時間以上を経過すれば助かることが多い。処置としては胃洗浄のほか,各種症状について対症療法を行うが,モルヒネや呼吸興奮薬(痙攣を助長するおそれがある)の投与はすべきでない。慢性中毒では,食欲不振,下痢または便秘,不眠などのほか,種々の精神障害を起こす。局所症状として鼻粘膜の壊死ないし鼻中隔欠損を起こすことがある。禁断症状はモルヒネ中毒より軽く,慢性中毒の治療もモルヒネの場合よりは容易である。
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百科事典マイペディア 「コカイン」の意味・わかりやすい解説

コカイン

化学式はC17H21O4N。 コカノキの葉に含まれるアルカロイド。ふつう塩酸塩(無色結晶または白色の結晶性粉末で苦味,舌を麻痺(まひ))として用いる。中枢神経興奮作用があり反射機構の促進,血圧上昇,筋肉の疲労感の一時的遮断(しゃだん)などの効がある。また重要な局所麻酔薬の一つとして表面麻酔に塩酸エピレナミンと併用される。習慣性による中毒症状を起こすので麻薬に指定されている。劇薬
→関連項目クラック興奮薬手術麻薬薬物依存症

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コカイン」の意味・わかりやすい解説

コカイン
こかいん
cocaine

南アメリカのペルーおよびボリビア原産のコカノキの葉に含まれるアルカロイド。コカイン塩酸塩として局所麻酔の目的で使用される。無色の結晶または白色の結晶性粉末で、においはない。主として眼科、耳鼻咽喉(いんこう)科で表面麻酔に用いる。毒性が強く習慣性となりやすいため、麻薬に指定されている。大量使用による急性中毒では、めまい、顔面蒼白(がんめんそうはく)、散瞳(さんどう)などに始まり酩酊(めいてい)状態に陥り、精神錯乱、幻覚、幻聴、失神などがみられ、呼吸困難や虚脱をおこして死亡する。現在ではリドカインなどの合成局所麻酔剤が繁用され、コカインはこの目的ではあまり用いられなくなった。また、乱用薬物として問題となっている「クラック」は、コカインを少し加工してコカイン塩基とした不純物の多いものである。粒、粉末、塊状などさまざまな形態があり、吸煙で使用される。

[幸保文治]

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化学辞典 第2版 「コカイン」の解説

コカイン
コカイン
cocaine

C17H21NO4(303.35).コカ葉Erythroxylon cocaより抽出されるトロパンアルカロイド融点98 ℃.-35°(50% エタノール).加水分解によりメタノール,安息香酸,エクゴニンを生じる.局所では,知覚神経末しょうの麻ひを有し,吸収すれば中枢神経を興奮させ,ついで麻ひする.悪心,直立不能,こん睡などの副作用がある.精神依存性が強く,麻薬に指定されている.コカイン塩酸塩は融点195 ℃.-72°(水).局所麻酔薬として用いられる.[CAS 50-36-2][CAS 53-21-4:塩酸塩]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コカイン」の意味・わかりやすい解説

コカイン
cocaine

南アメリカのアンデス原産のコカノキ科のコカノキをはじめ,同属の植物各種の葉に含まれている結晶性のアルカロイド。おもに局所麻酔に用いられる。常用すると中毒症状を起しやすく,麻薬及び向精神薬取締法の対象となっている。モルヒネ中毒に比べて,散瞳や幻覚など特殊な知覚異常が認められている。南アメリカのインディオは傷にコカノキの葉をかんで塗ると痛みが軽減することを古くから知っていた。

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栄養・生化学辞典 「コカイン」の解説

コカイン

 コカの葉から得られるアルカロイドで,麻酔薬.

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世界大百科事典(旧版)内のコカインの言及

【局所麻酔薬】より

…ペルーのインディオは,2000年も前からコカ葉を嗜好品として用いていたが,これを外傷に使用すると痛みが緩和されることも知っていた。コカ葉の成分がコカインであり,これは現在でも代表的な局所麻酔薬である。知覚神経の末端が痛みを刺激としてとらえると,これは信号として神経繊維上を中枢へ伝えられる(求心性神経)。…

【麻薬】より

…しかし,全身麻酔薬とはまったく別のものである。 一方,行政的,法律的には,薬理学的規定とは若干異なり,国際的には〈1961年の麻薬に関する単一条約〉に規定されている薬物をいい,上記の薬理学的麻薬のほか,コカイン,大麻およびその抽出成分が含まれる。日本では,麻薬取締法,あへん法によって規制されている薬物を狭義の麻薬とし,さらに大麻取締法によって規制された薬物を含めて,広義の麻薬としている。…

※「コカイン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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