日本大百科全書(ニッポニカ) 「コカイン」の意味・わかりやすい解説
コカイン
こかいん
cocaine
南アメリカのペルーおよびボリビア原産のコカノキの葉に含まれるアルカロイド。コカイン塩酸塩として局所麻酔の目的で使用される。無色の結晶または白色の結晶性粉末で、においはない。主として眼科、耳鼻咽喉(いんこう)科で表面麻酔に用いる。毒性が強く習慣性となりやすいため、麻薬に指定されている。大量使用による急性中毒では、めまい、顔面蒼白(がんめんそうはく)、散瞳(さんどう)などに始まり酩酊(めいてい)状態に陥り、精神錯乱、幻覚、幻聴、失神などがみられ、呼吸困難や虚脱をおこして死亡する。現在ではリドカインなどの合成局所麻酔剤が繁用され、コカインはこの目的ではあまり用いられなくなった。また、乱用薬物として問題となっている「クラック」は、コカインを少し加工してコカイン塩基とした不純物の多いものである。粒、粉末、塊状などさまざまな形態があり、吸煙で使用される。
[幸保文治]