ものが等比数列をなして急激に増加することのたとえで、次のような和算で取り上げられた有名な問題がその起源である。すなわち、吉田光由(みつよし)が1627年(寛永4)に刊行した『塵劫記(じんごうき)』という和算の書物の第36に次のような問題がある。「正月に雌雄のねずみが、12匹の子を産む(原本には断りはないが、産まれるのは雌雄同数であるとする)。雌雄は計七つがいになるが、2月にはまた各つがいがそれぞれ12匹の子を産む。ねずみの総数は98匹になる。このようにして、毎月一度ずつ、どの世代のねずみも雌雄一つがいで12匹ずつ雌雄同数の子を産むとすると、12月には何匹になるか」。
毎月のねずみの数は、前月のねずみの数(親の数)に前月のねずみの数の半分(つがいの数)の12倍、すなわち6倍を加えたもので、したがって前月のねずみの数の7倍になる。それゆえ、12月のねずみの数は二匹に七を12回掛けた数、すなわち276億8257万4402匹になる。公比が一より大きい等比数列の各項の増え方は、等差数列に比べて急激であり、意外の感がもたれる。ねずみ算が有名になったのも、また急激な増え方のたとえとしてこの語が用いられるのも、この理由からであろう。
[島田 茂]
… 次に和算などがとり上げた問題で,上記の意味の算術と考えられるものを補う。
[ねずみ算]
《塵劫記》(1627)は次の内容を扱っている。1組のねずみの夫婦から出発して,毎月1回雌雄6匹ずつのねずみを生み,子ねずみも同様にねずみを生むとすれば,12ヵ月後には何匹になるか。…
※「鼠算」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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