あの世(読み)あのよ

改訂新版 世界大百科事典 「あの世」の意味・わかりやすい解説

あの世 (あのよ)

あの世・この世は仏教でいう彼岸此岸に対応する語であり,その意味であの世は極楽・浄土または地獄をさす。一般にはもっと漠然と死後の世界,この世とは別の場所の意に用いられる。柳田国男によると,日本人の観念には死者が別の遠い国に行くという考えはなく,死者の霊は近くの山にとどまって,祖霊として,農耕の折り目ごとに里に下りてくるという考えが強いという。また隠れ里伝説,鼠浄土譚,竜宮譚などに見られるように口承文芸の中には,山の向こう側海中,地の底に別世界のユートピアがあるという考えがある。また各地の地名にアッチ,アヅチ,アチラ,アテラを冠した山や沢があるが,これも別世界の入口という意味があり,身近にあるあの世である。野辺送りで墓地の入口で草鞋(わらじ)を投げて,振り向かずに帰ってくる儀礼があるが,これも墓地をあの世の入口とみなして,死者をこの世から分ける儀礼といえる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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