精選版 日本国語大辞典 「祖霊」の意味・読み・例文・類語
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家族および親族の祖先の霊。死者一般の霊としての死霊と区別される。アフリカの狩猟採集民サンでは、死霊は一般に恐れられているが祖霊と区別されない。しかしケニアに住むバントゥー系の民族集団カンバでは、親族の祖霊と、所属のわからない死霊とに分けられ、前者は違反を犯した子孫に災厄をもたらすが、後者はだれにでも理由なしに祟(たた)る。キリスト教や南米のクナ・インディアンでは、祖霊は生者に直接の影響を与えることはないが、生者と引き続いて強い関係を持ち続けると考える社会においては祖先崇拝となる。日本では死者の霊は三十三年忌においてその個性を失いカミとして集合的祖霊に合一する。この祖霊は多くの場合生前の居住地からあまり遠くない山にいて子孫を見守る。カミとなった祖霊は毎年盆と、かつては正月にも、子孫の家を訪問しては供応を受け、そして家の繁栄を守護するのである。このように帰るべき家をもたず、子孫に祭られることがないのが無縁仏である。日本で生者に災厄をもたらす、すなわち祟るのはおもにこうした無縁仏、人間としての生を全うせず横死した者の死霊である。
祖霊の子孫に対する関係は、病気や災いをもたらす懲罰的なものと、恩恵を与える保護的なものに分けられる。中国や日本の祖霊は後者の傾向が強く、アフリカの諸社会の祖霊は前者の傾向が強い。たとえば西アフリカの農耕民タレンシでは、祖霊は親族集団の秩序や存続を脅かすような行為を行った者を病気にしたり、その他の不幸やときには死をも与えると信じられている。そうした場合、子孫は供犠(くぎ)を行って祖先の怒りをなだめるのである。このような祖霊の性格の相違を親族集団の連帯性の強弱によって説明しようとする試みがなされている。集団が単一の原理で構成されている場合(たとえば父系原理)、連帯性は強く祖霊の制裁は必要ではない。それに対し複数の原理が働く場合、葛藤(かっとう)が生じやすく、祖霊の宗教的制裁が必要になると考えられるのである。
[加藤 泰]
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…柳田国男によれば日本人は古来,死後はその霊が家の裏山のような小高い山や森に昇ることを自然に信じてきたのだという。山に昇った荒魂(あらみたま)は時の経過とともに清められた祖霊となり,やがてカミの地位にまで上昇していく。そしてそれらのカミは,里に降りてくるときは田の神や歳の神としてあがめられ,またいつしか氏神や鎮守の神としても祭られるようになった。…
…しかしその中核は神道と仏教の習合関係にあり,一般には神仏信仰(カミ,ホトケに対する信心)として発展した。その発展の過程でこの神仏信仰は,アニミズムとシャマニズムに基礎をおく祖霊観念と結びついてその活動範囲をひろげ,その結果〈神〉は造化神や自然神や土地神をはじめとする精霊や祖霊までを含み,〈仏〉も仏教の仏,菩薩(ぼさつ)はもちろん,それらとは性格を異にする守護神や先祖や死者までを意味するようになった。以下その性格・特徴と考えられるものを3点に分けて考察してみよう。…
…死者の霊魂である死霊は,身体から独立した存在として存続するが,この間に他界観と関連した諸儀礼が行われることが多い。すなわち,死霊は親族・縁者の供養をうけ続けることによりしだいに死穢を脱し,祖霊化して同一集団の祖霊群の仲間に入り,子孫を守護する存在になるとされる。その期間はさまざまである。…
…神は人間の目には見えず,あらゆるものに宿っていると考えられたが,人間の住む場所から離れた山の上や,海のかなたに神々の世界があると考えられ,人間が死ぬと,肉体を離れた霊魂もそこへ行くと信じられていた。死者の霊魂は年月を重ねるうちに,生前の個性を失って祖霊と融合し,神々の中に加わる。したがって,神々の世界と人間の世とは,隔絶・絶縁されてはおらず,神々は定期的に,あるいは臨時に人間の住む場所を訪れ,ある期間ともに住むものと信じられていた。…
…また〈たま〉は最高の形態としては神霊を意味し,祈願・供養の対象として崇拝された。一般に日本では,人の死後,その死霊は祖霊を経て神霊になるという観念が強く抱かれてきた。不浄の霊(荒魂(あらみたま))から清浄な霊(和霊(にぎみたま))への浄化の過程が意識されたのであり,そこに日本人の間に根強い祖先崇拝の基盤があるといえよう。…
※「祖霊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
[1864~1915]ドイツの精神医学者。クレペリンのもとで研究に従事。1906年、記憶障害に始まって認知機能が急速に低下し、発症から約10年で死亡に至った50代女性患者の症例を報告。クレペリンによっ...
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