アメリカの作家T・ドライサーの長編処女作。1900年刊。都会にあこがれてシカゴにきたキャリー・ミーバーは、セールスマンのドルーエと同棲(どうせい)するうち、一流バーの支配人ハーストウッドを知りニューヨークへかけおちする。そこでキャリーは機会をつかみ、女優として成功するが、ハーストウッドはバーの経営に失敗、キャリーにも捨てられてガス自殺を遂げる。成功者と落後者の対比を軸にアメリカ社会の冷酷な実相をリアルに描き、物質文明の刺激のなかに生きる人間像を浮き彫りにする初期アメリカ自然主義小説の傑作。当時、「不道徳な作品」とみなされて出版が難航し、1000部だけ発行されたが500部も売れなかった。
[大浦暁生]
『小津次郎訳『シスター・キャリー』全3巻(1951・三都書房)』
…その間,H.スペンサー,T.H.ハクスリー,J.ティンダルの思想に感銘を受け,バルザックを通じて小説に関心を持つようになる。1900年,友人のすすめで書いた《シスター・キャリー》がフランク・ノリスの推挙でダブルデー・ページ社から出版されたが,既成道徳に挑戦するような内容であり,期待したほどの反響もなく,失意のあまり神経衰弱にかかる。その後,女性問題で雑誌社を辞し,創作に専心,薄幸の女を描いた《ジェニー・ガーハート》(1911)によって作家的地位を確立する。…
※「シスターキャリー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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