日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
レン(Sir Chrisopher Wren)
れん
Sir Chrisopher Wren
(1632―1723)
イギリスの科学者、建築家。ウィルトシャーのイースト・ノイルに高教会派の司祭の息子として生まれ、幼時から自然科学に才能を示した。1657年にはロンドンで、60年にはオックスフォードで天文学の教授を務め、ロイヤル・ソサイエティーの創立メンバーの一人でもあった。ケンブリッジのペンブローク・カレッジ礼拝堂の設計(1663)から本格的に建築に取り組み、65~66年をパリでフランス古典主義建築の研究に費やす。ベルニーニにも会っている。66年9月ロンドンをみまった大火が彼に大きな機会を与えることになった。彼の提案したバロック的なロンドン再建都市計画こそ実現しなかったものの、建築総監としてセント・ポール大聖堂の再建(1675~1710)や51の教区教会堂の再建(1670~86)に腕を振るい、ケンブリッジのトリニティ・カレッジの図書館(1676~84)やグリニジ・ホスピタル(1702)など数多くの建築を設計建造した。バロック的な要素を巧みに取り入れた彼の雄勁(ゆうけい)な古典主義建築は、範として長く後代の建築家に慕われた。
[谷田博行]