64(読み)ろくよん

知恵蔵 「64」の解説

64

横山秀夫の小説。小説誌「別冊文藝春秋」に2004年5月号から06年5月号まで2度の中断を挟んで掲載され、全面改稿を経て12年10月に単行本として刊行された。15年4月にNHKが「土曜ドラマ」枠でピエール瀧主演によりテレビドラマ化し、16年に東宝が佐藤浩市の主演で2部作として映画化した。
昭和“64”(1989) 年1月5日に、D県で7歳女児が誘拐され、殺された未解決事件をテーマとしており、事件の符丁ロクヨン」が作品タイトルとなっている。主人公三上義信は事件発生当時、D県警の刑事でロクヨンを担当していたが、14年後の現在には警務部の広報官となっていた。
広報官の三上は、警務部上層部からは常に厳しい要求を突き付けられ、古巣の刑事部からは「よそ者」とされ情報をもらえない状況にあり、新聞記者とは対立を深めていた。ロクヨンの時効まであと1年となった時期に、ロクヨンを模した誘拐事件が発生する。三上は、捜査とマスコミ対応の現場を行き来しながら、事件の真相を知り、広報官として職務を全うすべく、警察官としての生き方を見つめ直していくというストーリー。
横山は2004年4月に『64』を連載として書き始めたものの、途中で何度か思うように書き続けられなくなり、連載という形は解消して書き継いだ。掲載を終えた原稿をまとめた単行本を09年に刊行すべく進めていたものの納得がいかなかったことから発売を取りやめて全面改稿、12年秋にようやく長編小説として発表された。13年の「このミステリーがすごい!」で1位を獲得している。
NHKのテレビドラマは大森寿美男が脚本を、井上剛と増田靜雄が演出を担当した。出演はピエール瀧のほか永山絢斗、木村佳乃、吉田栄作、柴田恭兵、萩原聖人など。15年4月18日より全5回で放送、同年度の文化庁芸術祭賞大賞(テレビ・ドラマ部門)を受賞した。
映画の公開はNHKテレビドラマの放映後になったが、映画版の企画の方が先に決定していた。監督は瀬々敬久、脚本は久松真一と瀬々監督による。主演の佐藤は企画段階から携わり、ラストの展開を原作とは異なる形とすることなどについては、瀬々監督と共に横山と交渉した。主題歌「風は止んだ」は小田和正が5年ぶりに映画の主題曲を書き下ろしたことでも話題を集めている。キャストは、NHKテレビドラマで新聞記者の秋川修次を演じた永山の兄、瑛太が映画版で秋川を演じている。このほか、三浦友和、永瀬正敏、綾野剛、夏川結衣、仲村トオル、榮倉奈々、椎名桔平、滝藤賢一、奥田瑛二など。前編は16年5月7日、後編は6月11日に公開。

(若林朋子 ライター/2016年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

デジタル大辞泉プラス 「64」の解説

64(ろくよん)〔小説〕

横山秀夫の長編推理小説。時効間近の未解決事件をめぐるミステリー。「D県警シリーズ」の作品のひとつ。2004年から2006年にかけて、雑誌「別冊文芸春秋」に断続的に連載された作品を全面改稿し、2012年に刊行。2013年、第10回本屋大賞にて2位入賞。2015年、NHKでピエール瀧主演によりテレビドラマ化。2016年、佐藤浩市主演による映画化作品を公開。

64(ロクヨン)〔ドラマ〕

日本のテレビドラマ。放映はNHK(2015年4月~5月)。全5回。原作:横山秀夫による小説。脚本:大森寿美男、演出:井上剛ほか、音楽:大友良英。出演:ピエール瀧、段田安則、木村佳乃、萩原聖人ほか。未解決の誘拐殺人事件を模倣した事件の真相に迫る地方県警の広報官を主人公とした警察ドラマ。

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