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時効 じこう

知恵蔵の解説

時効

公訴時効制度」のページをご覧ください。

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デジタル大辞泉の解説

じ‐こう〔‐カウ〕【時効】

法律で、一定の事実状態が一定期間継続した場合に、真実の権利関係に合致するかどうかを問わずに、その事実状態を尊重して権利の取得・喪失という法律効果を認める制度民事上では取得時効消滅時効刑事上では公訴時効時効とがある。
[補説]公訴時効は刑事訴訟法に定められており、例えば殺人強盗殺人などの場合、平成22年(2010)の法改正前は25年だったが、改正に伴い廃止された。改正後、最も長いのは強制わいせつ致死罪などで30年。
一定期間が経過して効力のなくなること。「約束はもう時効だ」

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百科事典マイペディアの解説

時効【じこう】

一定の事実状態が一定の期間継続した場合に,この状態が真実の権利関係に合致するものかどうかを問わないで,法律上,この事実状態に対応する法律効果を認める制度。(1)私法上の時効には取得時効消滅時効の2種がある(民法144条以下)。
→関連項目刑事訴訟法刑法催告遡及効取消権免訴

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損害保険用語集の解説

時効

1.損害賠償請求権の時効
損害賠償請求権者が一定期間その請求権を行使しない場合は、
その請求権が消滅し、以後賠償を受けることができなくなります(消滅時効)。
損害賠償請求権の時効は、「損害および加害者を知ったときから3年」、
損害および加害者がわからなかった場合は、「事故発生日から20年」となります
(民法724条)。
2.保険金請求権の時効
保険金請求手続きがおこなわれた場合は保険会社が書類を受領した翌日から
30日を経過した時、請求手続きが行われなかった場合は、次の時の翌日から
起算して2年を経過した場合は、時効により保険金の請求権が消滅します。
(1)対人賠償・対物賠償
損害賠償責任の額が確定した時
(2)自損事故
(イ)死亡保険金については被保険者が死亡した時
(ロ)後遺障害保険金については被保険者に後遺障害が生じた時
(ハ)医療保険金については被保険者が平常の生活もしくは業務に
従事することができる程度になおった時、または事故発生の日を含めて
160日を経過した時のいずれか早い時
(3)搭乗者傷害
(イ)死亡保険金については被保険者が死亡した時
(ロ)後遺障害保険金については被保険者に後遺障害が生じた時、
または事故発生の日を含めて180日を経過した時のいずれか早い時
(ハ)医療保険金については、事故発生の日を含めて180日以内で治療を
開始したとき(部位症状別払の場合)
(4)車両損害
事故の発生の時
3.自賠責保険の時効
(1)加害者請求
加害者が被害者に賠償金を支払った翌日から2年で請求権が消滅します。
分割払いをしている場合はそれぞれの支払の翌日が起算日となりますので
注意が必要です。
(2)被害者請求
事故発生日の翌日から2年で請求権が消滅します。

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とっさの日本語便利帳の解説

時効

ある事実状態が一定期間継続した場合に、真実の権利関係に合致するかどうかを問わずに、その事実状態を尊重して権利の取得や消滅を認める制度。私法上・公法上は取得時効と消滅時効。刑事上では公訴の時効と刑の時効とがあるが、一般に使われるのは公訴の時効で、死刑にあたる罪については一五年で免訴となる。

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世界大百科事典 第2版の解説

じこう【時効】

一定の事実上の状態が一定期間継続した場合に,それが真実の法律関係と合致するかどうかにかかわらず,その事実状態に適合した法律関係を認める制度。種々の法分野で問題となる。
【私法上の時効】
 一定期間の経過によって権利の取得または債務の消滅という効果を認める制度をいう。一般の説明によると,時効のうちの〈取得時効〉によって他人の物の所有権または財産権を取得し,〈消滅時効〉によって本来支払うべき債務を免れると解されている。

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大辞林 第三版の解説

じこう【時効】

〘法〙 ある事実状態が一定の期間継続した場合に、権利の取得・喪失という法律効果を認める制度。 「 -が成立する」 → 取得時効消滅時効
一般に、あることの効力が一定の時間を経過したために無効となること。 「もうあの約束は-だ」

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

時効
じこう
prescription

一定の事実状態が一定の期間継続することにより,権利を取得しあるいは喪失するという法律効果を認める制度。
(1) 私法上の時効は取得時効(権利を取得する)と消滅時効(権利が消滅する)の二つに分けられる。民法は両時効に共通な一般的規則を定めている。一定の事由がある場合には時効の進行は中断され(時効の中断。147条),それまでに経過した時効の利益はすべて無効となる。中断の事由としては,請求,差し押さえ,仮差し押さえ,仮処分および承認がある。また,たとえば時効期間満了のときにあたっての天災,事変など一定の事由があって,時効の中断ができないときは,時効完成が猶予される(時効の停止。161条)。時効による権利得喪の効力はその期間の満了によって生じるが,その効力は,時効期間開始のとき,すなわちその起算日にさかのぼる(144条)。また時効の効力は,当事者が援用しなければ,裁判所は,時効に基づいて裁判をすることはできない(145条)。時効完成後は当事者は,時効の利益を放棄することができる。
(2) 刑法上の時効には刑の時効と公訴の時効がある。(a) 刑の時効 刑の言い渡し確定後,刑の執行を受けず,一定の期間が経過したため,刑の執行を免除する制度(31条以下)。期間は刑の軽重によって異なる(32条)。(b) 公訴の時効 犯罪後一定の期間が経過すると刑事訴追ができなくなる制度(刑事訴訟法250以下)。ただし,人を死亡させ法定刑に死刑を含む罪については,2010年4月施行の改正刑事訴訟法で,公訴時効の対象から除外された。
(3) 国際法上の時効も国内私法の制度を類推して考えられている。国際的請求権,提訴権など権利の消滅に関して,条約上国家間の合意で取り決めることがある。これに対して,領土や島の領有について,しばしば取得時効の権原があると主張されてきたが,学説上対立が多く,長期にわたる占有の黙認として説明されている。

時効
じこう
aging; ageing

合金を熱処理することによって,材料内部で原子が拡散して内部構造が変化し,経時的に材料の性質が変化する現象。固体中に原子の拡散が生じるため,一般に時効現象はかなり遅い反応であるが,温度の上昇に伴い反応速度は指数関数的に増加する。時効に伴い材料の機械的性質,電気的性質,化学的性質および磁気的性質はさまざまに変化する。時効の最も典型的な例としては,アルミニウム合金時効硬化があげられるが,鉄鋼材料では鋼種,熱処理温度によって時効硬化も時効軟化も生じ,また軟鋼では加工後,時効するひずみ時効と呼ばれる手法もあり,時効処理にはさまざまな種類がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

時効
じこう

一定の事実状態が一定期間継続した場合に、この事実状態を尊重し、これに対して権利の取得・喪失という法律効果を認めようとする制度。[淡路剛久]

私法上の時効

取得時効と消滅時効とがある。前者は長期間にわたって他人の物(たとえば土地)を占有する者に権利を与える制度であり(たとえば、民法162条により、10年または20年占有した者は、所有権を取得する。なお、条文に「他人の物」と規定されているが、自己の物について取得時効を主張できないわけではない)、後者は一定期間行使されない権利(主要なものは債権)を消滅させる制度である(民法167条により、債権は、10年間行使しないときは消滅する)。なお、消滅時効は除斥期間に類似するが、中断があること、および援用を必要とする点でそれとは区別される。[淡路剛久]
制度の存在理由
時効制度の存在理由について、一般の学説は次の3点をあげ、これをもって、すべての時効制度に通じる統一的理由とする。すなわち、(1)長期間継続した事実状態は、法律関係を安定させるために法的に保護する必要があること、(2)権利行使を怠り「権利のうえに眠っている者」は法の保護に値しないこと、(3)長期間の経過によって立証が困難となり、したがってこれを救済する必要があること、の3点である。しかし、このような通説に対しては、多様な種類の時効についてこれらの一元的な説明がすべてあてはまるわけではないとの批判があり、異なった観点からの考え方が唱えられている。たとえば、多元的に説明する有力な学説によれば、時効には、(1)請求権の消滅時効(たとえば債権の消滅時効)、(2)他物権(他人の物権のうえに成立する物権)の消滅時効(たとえば地上権の消滅時効)、および(3)取得時効(たとえば所有権の取得時効)の三つがあって、それらはそれぞれ制度の存在理由を異にし、(1)は、期間の経過によって権利関係の証拠が不明確となることが多いので、法定証拠によって義務者を解放することを目的とする制度であり、(2)は、所有権の完全円満性に奉仕する制度であり、(3)は、権原(ある法律的または事実的行為をなすことを正当とする法律上の原因)の証明の困難を容易にすることによって物権取引の流通を安定させることを目的とする制度である、としている。また、時効は非権利者を保護する制度か真の権利者を保護する制度か、という観点もあり、本当は権利者でないが、それを前提としているものを保護するとともに、権利を証明できない真の権利者を保護する制度だと考える説もある。[淡路剛久]
時効の援用
時効の利益を受ける旨の当事者の意思表示を時効の援用という。時効は、単に時効期間が経過しただけでは裁判所はこれによって裁判することができず、当事者が援用しなければならない(民法145条)。この点で援用を必要としない除斥期間と異なる。時効について当事者の援用を必要としたのは、たとえば弁済をしていない者が時効の利益を受けることを潔しとしないことがあるので、自らの良心に任せようとした趣旨だと説明されている(良心規定説)。援用の方法については、裁判上でも裁判外の援用でもよい、とした大審院時代の判例がある。学説は、時効の効果が時効期間の経過により確定的に生じると考えるか(確定効果説)、不確定的に生じて、援用により確定すると考えるか(不確定効果説)で異なり、後者では裁判外の援用を認めてよいこととなる(通説)。援用権者につき判例は、時効によって直接に利益を受ける者との一般論のもとで、時効にかかった債権の債務者・連帯債務者・保証人・物上保証人はこれに該当するとし、抵当不動産の第三取得者、詐害行為の受益者については、かつては否定したが、抵当不動産の第三取得者に関しては1973年12月14日最高裁判決で、詐害行為の受益者に関しては1998年6月22日最高裁判決で、援用権者と認めるに至った。学説は、時効の主張をなす法律上の利益を有する者すべてを援用権者としてよいと解している。[淡路剛久]
時効利益の放棄
時効の利益を受けない旨の当事者の意思表示を時効利益の放棄という。時効の利益は、時効完成前あらかじめ放棄することは認められない(民法146条)。その理由は、債務者が窮迫に乗じられて債権者によってあらかじめ時効の利益を放棄させられることを防止することにある。したがって、そのような危険がない時効完成後においては、時効の利益を放棄することが認められている。なお、判例は、時効利益の放棄とは別に時効完成後に債務者が債務を承認したり、弁済したり、延期証を差し入れたような場合には、もはや援用できない、としている(時効援用権の喪失)。[淡路剛久]
時効の中断
一定の事由があった場合には、それまで経過した期間は法律上無意味なものとされ、新たに時効期間が進行し始める。これが時効の中断である。法定中断事由には、(1)請求(民法149条~153条)、(2)差押え・仮差押え・仮処分(同法154条、155条)、(3)権利の承認(同法156条)の3種類があり、これらは消滅時効および取得時効の両方に適用される。このほか、取得時効には占有の喪失という自然中断事由がある(同法164条)。なお、除斥期間には、中断がない。[淡路剛久]
時効の停止
時効期間の終わりにおいて請求権を行使することがとくに困難な事情(たとえば天災地変など)にある場合には、民法は時効の完成を猶予する(158条~161条)。これが時効の停止である。[淡路剛久]
時効期間と時効の起算点
債権の消滅時効期間は原則として10年(民法167条1項)、不法行為の時効は、短期の期間制限が3年の消滅時効であり、長期の20年は除斥期間と解されている。商事債権は5年(商法522条)である。なお民法は、特定の債権については短期消滅時効を定めており(169条~174条)、それによると、5年、3年、2年、1年のものがあり、立法論として、単純化が必要との意見がある。債権の消滅時効の起算点は、権利を行使する時から(163条1項)であり、不法行為については、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知ったときから(724条)と定められている。これは被害者が加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況のもとで、可能な程度に知ったとき、とするのが判例である。
 所有権は時効消滅しない。債権または所有権でない財産権の消滅時効期間は20年である(民法167条2項)。形成権(たとえば解除権)の時効期間については、判例は債権に準じて10年と解している(取消権については民法126条で特別に規定され、短期の期間制限が5年、長期の20年は除斥期間と解されている)。
 取得時効は、所有権の場合には所有の意思をもって、所有権以外の財産権の場合には自己のためにする意思をもって、平穏かつ公然に、他人の物を一定期間占有することによって成立する(占有者については、所有の意思、善意、平穏、公然は、推定される。民法186条)が、その時効期間は、占有者・準占有者が占有・準占有の始めに善意無過失の場合には10年、その他の場合には20年である(民法162条、163条)。[淡路剛久]

刑事法上の時効

一定期間が経過したことにより、刑罰権を消滅させること。現行法上、「刑の時効」と「公訴時効」とがあり、前者は刑法で、後者は刑事訴訟法で規定されている。なお、2010年(平成22)4月、刑法および刑事訴訟法改正により、人を死亡させた犯罪に対して「適正な公訴権の行使を図るため」として、公訴時効の廃止やその期間延長などの大きな変更が行われ、即日施行された。[名和鐵郎]
刑の時効
刑の言渡しを受けた者が、一定の期間内にその執行を受けない場合、その執行を免除しうる制度である(刑法31条参照)。2010年改正により、死刑は刑の時効の対象外となり、時効の期間は、無期の懲役または禁錮(きんこ)が30年、10年以上の有期の懲役または禁錮が20年、3年以上10年未満の懲役または禁錮が10年と延長された。それら以外は従来と同様に、3年未満の懲役または禁錮が5年、罰金が3年、拘留・科料および没収が1年と規定されている(同法32条)。ただし、2010年改正は、施行前に確定した刑の時効については適用されない(この点で後述する公訴時効の場合とは異なる)。なお、刑の時効は、法令により執行を猶予し、または停止した期間内は進行しない(刑法33条)。また、懲役、禁錮および拘留の時効は、刑の言渡しを受けた者を、その執行のために拘束することによって中断するが、罰金、科料および没収の時効は、執行行為によって中断する(同法34条)。[名和鐵郎]
公訴時効
一定の期間内に公訴が提起されない場合、公訴権を消滅させ、結果的に刑罰権そのものが消滅する制度で、公訴時効が完成したときは、判決で免訴の言渡しをしなければならない(刑事訴訟法337条4号)。公訴時効の期間について刑事訴訟法は、「人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの」に関しては、第250条1項で、死刑にあたる罪(殺人、強盗殺人・強盗致死、強盗強姦致死など)を公訴時効の対象から除外するほか、無期の懲役または禁錮にあたる罪(強制わいせつ致死、強姦致死、集団強姦致死)を30年、長期20年以上の懲役または禁錮にあたる罪(傷害致死、危険運転致死、逮捕監禁致死)を20年、これらの罪以外の罪(自動車運転過失致死、業務上過失致死、自殺関与および同意殺人)を10年と、2010年改正により規定している。また、この改正は、施行前に犯したものであっても、施行時に公訴時効が完成していない場合には、さかのぼって適用される。そして、第250条2項で、1項が規定する罪以外の罪について、従来と同様に、死刑にあたる罪を25年、無期の懲役・禁錮にあたる罪を15年、長期15年以上の懲役・禁錮にあたる罪を10年、長期15年未満の懲役・禁錮にあたる罪を7年、長期10年未満の懲役・禁錮にあたる罪を5年、長期5年未満の懲役・禁錮または罰金にあたる罪を3年、拘留・科料にあたる罪を1年と規定している。なお、公訴時効は、犯罪行為が終わった時から進行し、公訴の提起によって停止する(同法253条1項、254条1項)。共犯の場合には、最終の行為が終わった時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算し、共犯の一人に対する公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対しても、その効力を有する(同法253条2項、254条2項)。また、犯人が国外にいる場合または犯人が逃げ隠れて起訴状の謄本の送達や略式命令の告知が有効にできなかった場合、その期間は時効の進行が停止する(同法255条1項)。[名和鐵郎]

公法(行政法)上の時効

国・地方公共団体と私人の間でも、対等当事者の関係で、特別の規定がなければ民法上の時効制度が適用される。しかし、これについて特別の規定がおかれていたり、特別の解釈がなされることがある。これを従来公法上の時効と称していたが、今日、公法と私法という特別の法体系は存在せず、国・地方公共団体については、その特殊性から、特別の制度が個別におかれるにとどまっている。しかし、法律が不明確なため、その解釈については、判例学説上争いが多いし、判例にも批判的な見解も少なくない。
 行政法上の時効にも消滅時効と取得時効がある。[阿部泰隆]
消滅時効
(1)納入の通知・督促と時効中断の効力
民法第153条は催告が時効中断の効力を有すると規定しているが、それは6か月以内に訴訟を提起するなどしないと効力を失う。これに対し、地方自治法第236条4項では「法令の規定により普通地方公共団体がする納入の通知及び督促は、民法第153条(前項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。」としており(会計法32条も国について同旨。以下、消滅時効については、地方自治法によって説明する)、納入の通知・督促は、裁判を提起することなく時効中断の効力を持つ。しかも、法令の規定による場合というだけで、私法行為である場合に限定されておらず、地方公共団体の有する債権すべてに適用される。いわば主体説である。
(2)消滅時効期間
 消滅時効の期間については、「金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか、5年間これを行なわないときは、時効により消滅する。」(地方自治法236条1項、会計法30条も国につき同旨)と定められている。ここでいう「他の法律に定め」の読み方には二つある。
 一つは、公法と私法二元論的な読み方で、私法上の行為については民法が適用され、ここでいう「他の法律」とは民法以外の行政法規をいうとする。地方税や国民健康保険料(2年)、介護保険料(2年)、区画整理法の清算金、賦課金の徴収債権(5年)、道路法による負担金(5年)等がそれである。地方自治法の5年の時効が適用されるのはそれ以外の公法上の債権についてである。これが伝統的な読み方である。
 これに対して、公法と私法等の区別があるとの前提を取り払って、文理に忠実に読めば、原則は、地方自治法の消滅時効5年の適用があることになり、「他の法律に定めがあるものを除くほか」とは、行政法規に特例があるものを除き、という意味であり、はじめから民法は適用されないことになる。これはいわば主体説的読み方である。
 判例では、もともと、普通財産の売却代金債権は私法上の債権であるから、その消滅時効について、会計法第30条の適用がなく、民法によるとしていた(1966年11月1日最高裁判決)。弁済供託における供託金取戻請求権についても同様である(1970年7月15日最高裁判決)。
 しかし、1975年2月25日最高裁判決では、国に対する損害賠償請求権の時効は民法第167条1項により10年であるとしながらも、「国の権利義務を早期に決裁する必要があるなど」「行政上の便宜を考慮する必要がある金銭債権」には会計法第30条が適用されるとの解釈が示された。この解釈の根拠はわかりにくく、明確ではないが、行政運営の効率性に着目していることに注目すれば、前記の主体説に近いのではないかとも思われた。
 ところが、その後、民事上の債権の消滅時効については、公法と私法の区別を前提とする前者の説を維持することを表明し、民法の適用があるとして、水道料金の消滅時効期間を民法第173条所定の2年間とする判例が出た。(東京高裁2003年10月10日)。
 また最高裁は、公立病院における診療に関する債権の消滅時効期間について、公立病院において行われる診療は、私立病院において行われる診療と本質的な差異はなく、その診療に関する法律関係は本質上私法関係というべきであるから、公立病院の診療に関する債権の消滅時効期間は、地方自治法第236条1項所定の5年ではなく、民法第170条1号により3年と解すべきであるとした(2005年11月21日最高裁判決)。
 こうして、この規定は、公法上の金銭債権について消滅時効期間を定めた規定として意味があるとされたので、ここではまたまた公法と私法の亡霊が生き返っている。これで実務上は解決されたかと思われるが、理論的には、これに対する批判は少なくない。
 まず、「他の法律に定めのあるものを除くほか、5年」とする規定は、特例がなければ(つまりは、通常の債権債務は)5年と考えられるのに、それがなかなか見つからず、法の趣旨にあわない。
 第二に、公法と私法の二元論が認められなくなった今日では、条文を素直に読むべきである。最高裁判例が、公法と私法を分けるのは当然のことというつもりなのか、主体説に反論しておらず、どのような場合に5年の時効の適用があるかも明らかにしていないのでは実務上の処理も困る。
 第三に、判例のとる公法と私法二元説は、役所の文書の保存期間について、公法上の債権なら5年、私法上の債権なら民法の適用があり、病院は3年(民法170条)、水道料金は2年(同法173条1号)、公営宿舎は1年(同法174条)などと、細分化され複雑である。役所の文書の管理の必要性に応じて一律に決めてしまう方が効率的である。
 第四に、先に述べた納入の通知・督促については、公法私法を問わず時効中断の効力の特則が適用されるし、地方自治法第231条の3第3項は、公法私法にとらわれず、「法律で定める使用料」について行政徴収(税金と同様、民事訴訟によらずに滞納処分できる制度)できるとしているのに、消滅時効、援用については民法の適用があると解するのも不自然である。
 解釈論としても、行政事務の効率的な処理のために、民法をはじめから主体説的に排除するのが法の趣旨と解すべきであった。
 なお、公立病院では、5年の間に請求すればよいと思っていたら、3年を超えた分は不納欠損になるので大赤字であり、債権管理の仕方、書類保存の仕方など、実務の変更が必要になる。公営住宅の家賃、義務教育の給食費、高校の授業料なども、おそらくは、公法上の債権ではなく、私法上の債権として、民法によることになろうが、これらは市場原理で成り立つ債権ではないから、公法上の債権というべきであろう。
(3)時効の援用と利益の放棄
 「金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利の時効による消滅については、法律に特別の定めがある場合を除くほか、時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。」(地方自治法236条2項、会計法31条も同旨)。これについても、公法と私法を区別して、私法上の債権については民法を適用するという説が伝統的で、最高裁もその立場であるが、それでは、担当する行政官の意思や運用次第で区々になり、不当な差が生ずる。また、役所は時効の中断手続が必要になるなど、債権管理がめんどうである。国を当事者とする金銭債権については、個人的な意思を尊重する時効制度は排除され、国の会計が納税者たる国民全体により維持されているという公共性から、その迅速な、また画一的・公平な処理が要求されているのであり、時効の援用を要せず、また時効の利益を放棄できないと解すべきであった。
(4)時効の主張が権利濫用になる場合
 原爆被爆者援護法による健康管理手当の支給認定を受けた被爆者が、外国へ出国したことに伴い支給を打ち切られたため、未支給の健康管理手当の支払を求めた訴訟において、地方自治法第236条所定の消滅時効を主張していた広島県が敗訴した事例がある。
 これは、国外からは申請できないとの国の通達があったため、原告が申請できずに時効期間が徒過したもので、広島県の主張は、違法な通達を定めて受給権者の権利行使を困難にしていた国から事務を受託し、自らも違法な事務処理をしていたにもかかわらず、受給権者の権利の不行使を理由として支払義務を免れようとするに等しいものであり、特段の事情のない限り、信義則に反し許されないとするものである(在ブラジル被爆者健康管理手当等請求事件、2007年2月6日最高裁判決)。[阿部泰隆]
公物の時効取得
里道、畦道、水路、海浜地などは国有の公物であるが、いつの間にか公共の用に供するという、公物の実態がなくなり、私人が占拠して、取得時効を主張することがある。このいわゆる公物の時効取得については、かつては、公法関係であるから、民法の取得時効の適用はないとの説もあったが、時効取得が問題となるときは、すでに公物として管理されていないのであるから、民事法の適用があるとすべきである。最高裁(1976年12月24日判決)は、この場合に「黙示的に公用が廃止された」として取得時効の成立を妨げないとしたが、そのような技巧的な説明をせずとも、公物として利用されているときは、「所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した」という民法第162条の要件を満たさないのであるから、民法に即して判断すれば十分である。[阿部泰隆]
『草野元己著『取得時効の研究』(1996・信山社出版) ▽大木康著『時効理論の再構築』(2000・成文堂) ▽松本克美著『時効と正義――消滅時効・除斥期間論の新たな胎動』(2002・日本評論社)』

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世界大百科事典内の時効の言及

【析出硬化】より

…過飽和固溶体を0℃以上の高温,たとえば100~300℃に保持すると分解が始まり,時間の経過とともに種々の析出相が現れ,それに基づいて合金の諸性質(強さ,伸び値,電気抵抗値など)が変化する。このように時間の経過に伴って性質の変化することを時効ageingといい,そのような熱処理を時効処理と称する。時効処理によって合金が硬化する場合が時効硬化age‐hardeningである。…

【旧悪免除】より

…江戸時代の刑事法における制度で,現在の公訴時効にあたり,過去の犯罪に対する刑罰権を消滅させるもの。《公事方御定書》によれば,犯行後犯罪から離れ,12ヵ月経過した場合には逆罪,放火,邪曲にての殺人など一定の重い犯罪を除き,その罪は旧悪として科刑が免ぜられる。…

※「時効」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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大義

1 人として守るべき道義。国家・君主への忠義、親への孝行など。「大義に殉じる」2 重要な意義。大切な事柄。「自由平等の大義を説く」...

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