ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「A.R.ペンク」の意味・わかりやすい解説
A.R.ペンク
エー・アール・ペンク
A.R.Penck
[没]2017.5.2. スイス,チューリヒ
ドイツの新表現主義の画家。本名 Ralf Winkler。1960年代に,先史時代の洞窟画に見られる棒線画や統一的な記号に形象的な美的価値観を見出した。段ボールや空き瓶などを用いた彫刻作品も制作した。東ベルリンに住んだ 1970年代前半に,共産主義の圧政下で政治的含意のある前衛的な作品に取り組み,秘密警察の監視対象になった。1968年「A.R.ペンク」の筆名を名のる。翌 1969年,ケルンの画廊で個展を開催。1975~76年にはスイスで回顧展が開かれた。1980年にドイツ民主共和国(東ドイツ)からの出国許可を求めると国籍を剥奪され,ケルンに移住。当時の西側は新表現主義運動が活性化しつつあり,ペンクの「新原始主義」的画風はこの流れに違和感なく溶け込んだ。ジュッセルドルフ美術アカデミーの教授を 1989年から長年務めた。世界各地の主要美術館で個展が開かれ,ドイツの現代美術祭ドクメンタやベネチア・ビエンナーレにも参加した。
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