EC共同フロート(読み)イーシーきょうどうフロート(その他表記)EC joint floating system

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「EC共同フロート」の意味・わかりやすい解説

EC共同フロート
イーシーきょうどうフロート
EC joint floating system

ヨーロッパ共同体 EC加盟国通貨による対内固定・対外変動の為替相場制度のこと。 EC域内の貿易・投資を促進する観点から,1972年4月に EC通貨相互間の変動幅をスミソニアン協定に基づく EC各通貨の対ドル変動幅 4.5%の半分 (2.25%) に抑えることとした。しかしスミソニアン体制崩壊 (主要通貨の変動為替相場制に移行) に伴い,73年3月 19日以降 EC諸通貨相互間では従来どおり 2.25%の変動幅を維持しながら,対外的には共同して変動することになった。共同フロート参加通貨当局は,自国通貨がそれぞれの基準為替相場の上下限に達したとき,参加国通貨によって無制限に介入する義務を負う。発足当初よりイギリス,イタリア,アイルランドが参加せず,参加国間の経済格差の調整が困難であるため,フランス・フランが2度にわたり脱落するなどしばしば危機に見舞われたが,旧西ドイツを中心にベネルクスデンマークノルウェー (準参加) の参加による為替安定協定として機能した。 79年からはヨーロッパ通貨制度 EMSへと発展し,為替の共同管理 ERMが行われている。

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世界大百科事典(旧版)内のEC共同フロートの言及

【共同フロート】より

…IMFの定めた41/2%のトンネル内を21/4%幅のEC通貨群が蛇行するので,この取決めは〈トンネルの蛇〉と呼ばれた。しかし73年3月にEC諸国が域外通貨に対して変動相場制を採用したためトンネルは消滅し,EC共同フロートが発足した。トンネルの蛇および共同フロートへの参加国・離脱国の推移はめまぐるしく,78年ころには西ドイツと周辺諸国のみのミニ共同フロートに矮小化したため,ヨーロッパ通貨統合の推進を目指すECは79年3月,イギリスを除く8ヵ国の参加を得てヨーロッパ通貨制度(EMS)を発足させることとなった。…

※「EC共同フロート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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