家庭医学館 「HAワクチン」の解説
えっちえーわくちん【HAワクチン】
A型肝炎は、慢性化せず、A型肝炎ウイルス抗体(こうたい)(HA抗体)が体内でつくられて治る病気です。そのため、重症化を注意すれば、それほどこわい病気ではありません。
ところが、抗体をもっていない人では、A型肝炎ウイルスに汚染された飲食物を摂取(せっしゅ)することで感染するため、衛生状態が悪い地域ではときに大流行し、問題となります。
日本でも戦中戦後周期的に流行したことがあり、高齢者の多くは知らないうちに抗体がつくられています(不顕性感染(ふけんせいかんせん))。抗体をもっていれば、終生免疫(めんえき)として、新たな感染をおこすことはありません。
ところが、抗体をもたない若い人には感染の危険があるため、流行地へ出かけるときは注意する必要があります。
感染予防には2つの方法があります。1つはA型肝炎ウイルスの抗体(免疫グロブリン)を直接大量に注射する方法です。もう1つはA型肝炎ウイルスの不活化(ふかつか)ウイルスを注射し、からだの免疫力で抗体をつくらせる方法です。
免疫グロブリンを注射する方法は、抗体が直接からだに入るため、注射直後から予防が可能ですが、通常3か月ほどで抗体がなくなるため、効果が長続きしません。
不活化ウイルスを注射するワクチンによる方法は、抗体ができるまでに時間はかかりますが、長期間にわたる予防が可能です。長期間汚染地域に滞在しなければならない海外ボランティアや海外駐在員、感染する機会が多い医療従事者に適した予防法といえます。
ワクチンは通常3回注射します。1回目とその1か月後、さらに6か月後に追加します。ほぼ完全な予防ができます。日本では、現在3社が組織培養不活化(そしきばいようふかつか)ワクチンを製造しています。