PD6型直6

日本の自動車技術240選 「PD6型直6」の解説

PD6(T)型直6

1.日産ディーゼルが1955年以来生産を続けてきた2サイクルUD系エンジンが、排気ガス対策や騒音低減で限界を感じられるようになったため、10t車用のUD6型(240PS)に代わりに開発されたエンジンである。2.自然吸気式のPD6型をベースに米国ギャレット(現ハネウェルターボチャージャシステムズ)社製ターボチャージャを搭載し、噴射ポンプもヂーゼル機器(現(株)ボッシュオートモティブシステムズ)社製ボッシュ式のB型からP型に増強され、噴射圧力も一層高圧化された。その卓越した燃料経済性と高信頼性は静かな燃焼音と共に好評を博し、10t車のみでなく高速トラクタにも搭載された。3.本エンジンは折から全通した東名高速道路での大量長距離輸送時代にマッチしたエンジンとして認識された。特にそれまで他社がターボ過給予燃焼室式エンジンで経験し、未解決に終わった熱負荷問題を解決し、新時代を担うにふさわしいエンジンとして定着し、その後のインタークーラー付直噴ターボ過給エンジンへの発展の重要な一歩を築いた。4.ベースエンジンであるPD6型の次の基本構造はそのまま引き継がれている。カムシャフトの位置はシリンダブロックの最高所近くに配置された。水ポンプはギヤ駆動され、サーモスタットは小型で即応性が高く開弁温度の異なる3個を並列に用いて高信頼性を指向した。5.過給による熱負荷増大に対しては、トップリングにバレルフェース式両面キーストンリング、セカンドリングにテーパリングを採用した上、リング幅を増大してシール性を向上させ、トラック用エンジンとしては先駆的な3本リング構成ピストンを堅持した。その他吸気弁の潤滑性向上策として弁座角を45度から30度にし、バルブガイド内径に排気弁用と同様な螺旋溝を設けて対処した。6.このエンジンはその後シリンダ口径を8mm拡大したPE6T型や、それにインタークーラを追加したPE6TA型、PE6TB型などへ進化し系列エンジンを構成しながら更に発展を続けることになる。保管場所日産ディーゼル工業株式会社 〒362-8523 埼玉県上尾市大字壱丁目1番地)
製作(製造)年1971
製作者(社)日産ディーゼル工業株式会社
資料の種類量産品
現状保存・非公開
型式日産ディーゼル PD6(T)
種類ディーゼル
会社名日産ディーゼル工業株式会社
実物所在あり
搭載車種CD40.CK40BT.CW40
製作開始年1971
設計者林 裕、大崎邦彦
シリンダ配列・数直列6
サイクル/冷却方式4/水冷
弁型式/数頭上弁式/各気筒2弁
燃焼方式直接噴射
燃焼室トロイダル形
総排気量10,308L
内径×行程125×140
圧縮比16.0:1
質量(重量)940kg
寸法1405×1078×1300
噴射ノズルボッシュ多孔式DLLA-S
最高出力/回転数191.2kW{260PS/2300rpm}
最大トルク/回転数901.6Nm{92kgm}/1400rpm
燃料消費率217.5g/kWh{160g/PSh}/1600rpm
排気ガス対応なし
過給機形式Garrett TE06型
インタークーラーなし
可変装置なし
エピソード・話題性日産ディーゼルが2サイクル UD型系列機関に代わり発売した日本で初の直噴ターボ過給ディーゼルエンジン。
特徴自然吸気のPD6型にギャレット社のターボチャージャを搭載し、噴射ポンプをボッシュのPE-P型に変更して191.2kW{260PS}の出力を発揮し、当時の10t車用6気筒エンジンとしての最高出力で競合エンジンと肩を並べた。
参考文献林裕、大崎邦彦「直噴ターボ過給ディーゼルエンジン搭載大型トラックの開発」自動車技術Vol.51.No.11. P.69-75.1997.11.蓮沼英彦、佐藤容弘、永久保輝昭「新型キャブオーバトラック用エンジンについて」日産ディーゼル技報No.34.p.78-82.1973.6.大塚新太郎、石原荘一「わが国における2サイクル自動車用エンジンの変遷(5)日産ディーゼル」内燃機関Vol.30.No.2.p.36-44.1991.2.
その他事項通称名:日産ディーゼル PD6T;協力者:ギャレットターボ社;吸気方式:ターボ過給;燃料供給方式:ボッシュ列型PE-P;点火方式:圧縮着火;比出力:18.4kW{25.2PS}/L;三元触媒:なし;トーショナルダンパ:ラバーマス式;吸気系:電気式リボンヒータ予熱;排気系:エキゾーストシャッタ;

出典 社団法人自動車技術会日本の自動車技術240選について 情報

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