ボッシュ(読み)ぼっしゅ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボッシュ」の意味・わかりやすい解説

ボッシュ(Carl Bosch)
ぼっしゅ
Carl Bosch
(1874―1940)

ドイツの化学者、化学工業家。父はガス器具・鉛管などの販売業者であり、父の弟は電気機械で有名なボッシュ社を創立した。ケルンに生まれ、ケルン、シャルロッテンブルクの工業大学で金属学などを学んだのち、ライプツィヒ大学で化学を学ぶ。1898年にライプツィヒ大学で学位を取得し、翌1899年BASF社に入社、のち1919年よりIG染料会社(イー・ゲー・ファルベン)社長、1935年から理事長。ボッシュの最大の功績ハーバーアンモニア合成法を工業化したことであり、問題点はきわめて多岐にわたったが、触媒についてはミタッシュAlwin Mittasch(1869―1953)が中心となって解決し、反応装置については水素腐食が深刻であったが、ボッシュは二重筒構造の反応筒を設計することで解決した。BASFは1911年に硫安にして年産3万6000トンという巨大な工場をオッパウに建設することを決定、1913年には日産5トンから生産を開始し、第一次世界大戦が勃発(ぼっぱつ)すると、硫安の生産から硝酸の生産へと切り替え、火薬生産を中心として設備をさらに拡張した。さらにロイナにも新工場の建設を始め、ここでは1917年から生産が開始された。1917年10月、カイザー・ウィルヘルム協会(現、マックスプランク協会)の理事に選出され、1937年6月、プランクの後を継ぎ、同協会会長となる。また、化学工業会社の集中に努力し、IG染料会社の成立に大きな役割を果たした。1931年にベルギウスとともに、高圧化学反応研究の発展に寄与したとしてノーベル化学賞を受賞した。

[加藤邦興]


ボッシュ(Hieronymus Bosch)
ぼっしゅ

ボス

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボッシュ」の意味・わかりやすい解説

ボッシュ

燃料噴射装置や制動装置ブレーキ)など自動車関連機器や部品および電動工具の開発,製造,販売を手がける企業。日本のボッシュ・グループの中核企業として油圧機器,包装機械メーカー等の関係会社とともにグループを構成,またドイツのボッシュ・グループの傘下にある。1911年ドイツの自動車部品メーカー,ロバート・ボッシュが日本で同社製品の販売・修理の代理店契約を締結,翌 1912年横浜に修理工場を開設。1939年ロバート・ボッシュの技術援助と三菱重工業,東京自動車工業(→いすゞ自動車)の出資を得て,ディーゼルエンジン付属機器メーカーのヂーゼル機器(1990ゼクセルに社名変更)が設立。第2次世界大戦後のモータリゼーションによる需要拡大とともに発展した。1955年ヂーゼル機器からブレーキ倍力装置事業を分離,自動車機器を設立。1972年ロバート・ボッシュの 100%出資子会社,ロバート・ボッシュ・ジャパン(1985ボッシュに社名変更)が設立。1999年ボッシュ,自動車機器,ゼクセル(2000ボッシュオートモーティブシステムに社名変更),ほか 2社が乗用車用ブレーキ事業を統合し,ボッシュブレーキシステムを設立。2002年ボッシュオートモーティブシステム,ボッシュブレーキシステム,ボッシュエレクトロニクス(1992ゼクセルとボッシュが設立)が,ボッシュオートモーティブシステムを存続会社として合併。2005年ボッシュとボッシュオートモーティブシステムが後者を存続会社として合併,同時に社名をボッシュと改める。2008年ロバート・ボッシュの完全子会社となる。

ボッシュ
Bosch, Carl

[生]1874.8.27. ケルン
[没]1940.4.26. ハイデルベルク
ドイツの工業化学者。ライプチヒ大学で有機化学を専攻し,1898年学位を得た。 94年シャルロッテンブルクで工業技術を学び,現場作業の経験をした。バーディシェ・アニリン・ウント・ソーダ・ファブリーク (のちのイー・ゲー・ファルベン社,現バスフ社) に入社,1919年社長となった。 1913年高圧下で触媒を使って水素と窒素を合成させてアンモニアをつくるハーバー法の工業化に成功 (→ハーバー=ボッシュ法 ) 。さらに,水蒸気と水性ガスの混合物を高圧下で金属触媒に通して,水素を大規模に生産するボッシュ法を発見。 31年高圧化学の研究に対して F.ベルギウスとともにノーベル化学賞を受賞した。

ボッシュ
Bosch, Juan

[生]1909.6.30. ラベガ
[没]2001.11.1. サントドミンゴ
ドミニカ共和国の政治家。 1961年5月 30日独裁者 R.トルヒーヨ・モリナが暗殺されたのち,20年間にわたる海外亡命から帰国,ドミニカ革命党の党首として活発な政治活動を開始。 62年 12月に 38年ぶりに行われた大統領選挙で当選,翌 63年2月大統領に就任したが,同年9月 25日軍部クーデターで追放された。 65年軍部の革新派がボッシュの復権を目指して反乱 (ドミニカ危機 ) を起したが,米州機構 OASの介入で挫折。同年の選挙は敗北した。 73年ドミニカ革命党離党。 78,82,86,90年総選挙にドミニカ解放党を率いて出馬,いずれも落選した。

ボッシュ
Bosch, Hieronymus

[生]1450頃. セルトヘンボス
[没]1516.8.9. セルトヘンボス
オランダの画家。本名 Hieronymus van Aeken。ボッシュは生地ボス (ボッシュのオランダ読み) に由来する。その生涯については不明な点が多いが,おそらく地方画家のヤン・ファン・アーケンの孫と考えられ,生涯に 40点ほどの作品を残した。作品は初期の『七つの大罪』 (プラド美術館) ,『馬鹿の治療』 (同) ,中期 (1485頃~1505頃) の『干し草の車』 (同) ,『悦楽の園』 (同) ,『いばらの戴冠』 (ロンドン,ナショナル・ギャラリーおよびプラド美術館) など。透明な色彩と細密な描写で,半動物,半植物,半機械的な人間や,不思議な幻想的情景を描いた。

ボッシュ
Bosch(Bos), Cornelis

[生]1510頃
[没]?
オランダの画家,版画家。主としてローマで活躍。マニエリスム風な作品を手がけた。またラファエロや G.ロマーノの油絵から版画を制作した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

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