改訂新版 世界大百科事典 「三人冗語」の意味・わかりやすい解説
三人冗語 (さんにんじょうご)
森鷗外主宰の雑誌《めさまし草》第3~7号(1896年3月~7月)において,鷗外,幸田露伴,斎藤緑雨の3人が行った作品合評。〈頭取(とうどり)〉(鷗外)による作品紹介に続いて,〈ひいき〉〈さし出〉などの変名の人物が批評する形式をとる,最初の匿名座談会形式の文芸時評。当時の批評界の権威として,多くの作品を辛辣に批判したなかで,樋口一葉の《たけくらべ》に対する批評(第4号)は,この小説を絶賛し,彼女の文名を一躍高めたことで有名である。なおこの批評欄は第8号から,上記3人に,依田学海,饗庭篁村(あえばこうそん),森田思軒,尾崎紅葉らを加えて〈雲中語(うんちゆうご)〉に発展し,評壇に君臨した。
執筆者:十川 信介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報