草食系(読み)そうしょくけい

知恵蔵 「草食系」の解説

草食系

恋愛に対して受動的で、物欲や出世欲も薄い、温厚なオトコの子のこと。シラケ世代(団塊世代の少し後)のジュニアで、20代~30代前半の男子に見られる傾向を草食動物の性質になぞらえた表現。バブル崩壊後の長期不況期に少年時代を過ごした彼らは、背伸びすることなく、あらゆることに淡泊。異性に対しては積極性に欠け、消費活動では、オレ様的な見えより、ボク的な心地よさや好みを優先する。エコ教育やジェンダー教育を受けてきた彼らはロハスな生活を好み、異性の友人や家族との関係も良好である。なかでも母親と仲良し。企業・団体の中にあっても、常識的な協調性は持ち合わせている。ただし、自分が傷つきそう、相手を傷つけそうなことには敏感で、無用なあつれきや競争は避け、異なる考え方や生き方にはいっさい干渉しない。対義語は「肉食系」。
同世代の生態を紹介したウエブ版「日経ビジネスONLINE」の連載企画(2006年)で、コラムニストの深澤真紀が「肉食系には理解しにくい、据え膳(ぜん)を食わぬ若い男」を「草食男子」と命名したのが最初。仕事にも消極的な草食系部下に不満をもつ中高年上司や、淡泊な草食系カレシにいらだちを抱く同世代「アラサー肉食系女子たち」の関心を集めた。08年には、女性ファッション誌が、「草食系男子の攻略法」を特集してマスコミの話題に。肉食が当たり前だったオヤジ世代のあいだでは、他の先進国には見られないこうした草食化を、飽和大国日本の「内向き志向」と重ねて憂(うれ)う向きがあるが、森岡正博『草食系男子の恋愛学』、牛窪恵『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』など、草食系男子を肯定的にとらえた論評に共感する声は少なくない。

(大迫秀樹 フリー編集者 / 2009年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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