草食動物(読み)ソウショクドウブツ(英語表記)herbivorous animals
herbivores

デジタル大辞泉 「草食動物」の意味・読み・例文・類語

そうしょく‐どうぶつ〔サウシヨク‐〕【草食動物】

草食性の動物。
[類語]肉食動物肉食獣雑食動物

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精選版 日本国語大辞典 「草食動物」の意味・読み・例文・類語

そうしょく‐どうぶつサウショク‥【草食動物】

  1. 〘 名詞 〙食性の動物。
    1. [初出の実例]「草食動物は噛断を要せず」(出典:気海観瀾広義(1851‐58)三)

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改訂新版 世界大百科事典 「草食動物」の意味・わかりやすい解説

草食動物 (そうしょくどうぶつ)
herbivorous animals
herbivores

(1)草本植物の葉を主食とする哺乳類,(2)植物食性の動物の2通りの意味で使われる。本来は前者のみを意味するものであったが,一方では哺乳類以外の動物一般へ,一方では草の葉以外の植物体一般へと定義が拡張されて,後者の意味が生まれた。英語では草の葉食の動物grazersと木の葉食の動物browsersとを使い分けることもある。また,(1)と(2)の中間の用法もある。例えば,草の葉食の鳥獣と昆虫,植物食の哺乳類,草木の葉を食べる鳥獣などを指していうこともある。さらに,(2)の意味に植物の生体だけでなく遺体(枯木や落葉など)を食べる動物まで含める場合もあるが,それに対しては植(物)食動物phytophagous animalsという別のことばがある。

 植食動物という意味での広義の草食動物は,植物が無機化合物から作った植物体という食物を消費して生活し,広義の肉食動物に対して自分たちの身体を食物として供給するという地位を占めているわけであり,地球上の物質循環という点からすれば,第1次消費者という役割をもつということができ,動物群集という観点からすれば,肉食動物を支える基幹産業動物key industryとしての役割をもつということができる。この意味での植食動物は陸上と水中でたいへん異なったあり方をしている。それは植物のあり方が大きく異なるからである。植物は陸上ではおもに草木という形をとっているが,水中ではおもにプランクトンという形をとっている。水草や藻は日光の届く浅い水底にしか生えられない。浮遊性の微小な植物プランクトンを効率よく得るには,それを食べる動物も小さなプランクトンでなければならない。その代り大きな運動性をもつ必要はない。浅い所には海牛類やアオウミガメハクチョウソウギョといった植食動物も少数いるが,海や湖では植食動物がほとんど目に触れないのはこのためである。一方,陸上の草木は固着性であって,プランクトンのように水とともに動いてきてはくれない。したがって,陸上の植食動物は運動性がなければならない。その代り大きな身体になってもかまわないのである。

 陸上での植食動物には実にさまざまなものがいる。大きいものはゾウやサイや過去の草食恐竜から,小さいものは1~2mmの昆虫(細菌を食べる原生動物はもっと小さい)まである。それは一つには植物に,草木だけでなくキノコやカビや細菌までさまざまなものがあるからであり,一つには草木にも葉だけでなく幹や茎,根,いも,種子,果実,花みつ,花粉などさまざまな部分があるからであり,もう一つには敵から逃れるためのやり方にいろいろなものがあるからである。花みつや花粉を食べようとすれば大きな身体をしているわけにはいかない。草の種子や木の実を食べようとすれば,小型でその中にくぐりこんでしまうか,中型で活発に動きまわって樹上の枝先や草の間を捜しまわるか,どちらかでなければならない。前者が昆虫のやり方で,後者がリスやネズミや小鳥のやり方である。根やいもを食べようとすれば,地中にもぐれるかそれを掘り出せるかでなければならない。柔らかい草の茎から汁を吸うにしても堅い木の幹に食い入るにしても,それができる身体をもっていなければならない。いちばん楽に見つけることができて楽に食べることができるのは柔らかい葉である。だから,葉食性の動物がいちばん目につくことになる。しかし,葉は繁殖器官より栄養価が低いから大量に食べなければならない。それを効率よく消化するには,腸内細菌や腸内原生動物の助けを必要としたり,大きな盲腸や反芻(はんすう)胃が必要だったりするし,歯の形もすりつぶし型になっていなければならない。広義の草食動物つまり植食動物にさまざまなものがいるのはこのような摂食適応のためである。

 葉食性動物は三つに大きく分けられる。葉食性昆虫と木の葉食哺乳類と草の葉食哺乳類である。鳥には葉食性のものはひじょうに少ないし,現生両生・爬虫類には葉食性のものはない。木の葉食哺乳類もキリンなど一部の有蹄類とゾウと一部のサルにすぎない。したがって,葉食性動物の大部分は小型な昆虫と大型な草の葉食哺乳類だけになる。昆虫と哺乳類では生活がひじょうに異なっているところから,植食動物の代表として草の葉食哺乳類が取り上げられて草食動物といわれることになったのであろう。なお,日本では純粋な草の葉食哺乳類はウサギだけで,カモシカシカは半ば木の葉食,木の皮食であり,イノシシ雑食性である。
肉食動物
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「草食動物」の意味・わかりやすい解説

草食動物
そうしょくどうぶつ

植物性の食物を摂取する動物をさす。このような食性を草食性という。この食性の動物に植食動物の語をあてて、草本植物を食べるものに限定してこの語を用いる場合もある。植物性の食物には、葉、枝、幹、果実、根、花と花粉、蜜(みつ)、藻体などさまざまな形態があり、同じ分類群の草食動物のなかでも摂食器官や消化器官は食物に応じて多様な形態をしている。たとえば、反芻(はんすう)を行う有蹄(ゆうてい)類では胃が大きく分室している。また、ウサギは盲腸が著しく大きい。しかし普遍的な特徴もある。一般に草食動物の腸は体の大きさに比べて長く、この特徴は哺乳(ほにゅう)類だけでなく魚類にも当てはまる。臼歯(きゅうし)が文字どおり臼(うす)状なのは哺乳類に一般的である。植物質は繊維質などが多いために消化しにくい。大きな消化器官や臼状の歯はそれに対して発達したものである。消化方法にも特異なものがある。有蹄類の反芻やウサギ、ネズミなどの糞(ふん)の再食がそれである。

 草食動物は生態系のなかでは一次消費者であり、植物の生産した有機物質を摂取する一方、肉食動物に食べられるか、またその死体や排出物が分解されることによって物質の流れを形成している。植物は活発に移動しないので草食動物は容易に食物を得られるが、家畜の過放牧や昆虫の大発生による草木や作物の食害以外には、極度に植物を減らすことは少ない。草食動物の個体数は、肉食動物による捕食や、植物の量、また同種・異種の草食動物との競争などによって増減する。たとえば、プラタナスやサクラなどの街路樹を食い荒らすアメリカシロヒトリは、その幼虫期に小鳥やアシナガバチの捕食によって死亡率が高くなることが知られている。

[高村健二]

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