反対の意味をもつ一対の語のおのおのをいう。反義語、反意語、反対語、対語ともいうが、専門的な論述を除いては、一般にこれらの名称の間に厳密な使い分けがなされているわけではない。対義語のなかには「男・女」のように明瞭(めいりょう)な一対をなしているものもあるが、「遮断機があがる」に対して「さがる」というべきか、「おりる」というべきか、かならずしもはっきりしないというような場合もあるし、用法に従って別の語と対義関係を結ぶ語もある。われわれが日常に用いている自然発生的な言語では、対義語の組を用意するというようなことが、かならずしも最初から意識されていたわけではないので、このような状態が生じているものと考えられる。ときには一群の語が複雑な対義関係をつくりだしていることがある。
一対の対義語は、一見、意味の全体が真反対になっているようにみえるが、実は意味のほとんどは共通で、ある1点においてのみ反対になっているのであり、同義語と並んで、意味の非常に近い語といえる。いわば鏡像関係のようなものである。たとえば、「太い」と「細い」は、両方ともに棒のような物について、その直径の大小をいうのであり、異なるのは「大」か「小」かという1点だけである。
対義語はさらに細かく分類される。以下には、区別のために便宜上異なった名称を用いるが、学界全体で認められたものというわけではない。
(1)相補的反義語 「男・女」「おもて・うら」「出席・欠席」「ある・ない」のように、明瞭な一対をなしていて、その中間段階がなく、片方を否定すると他方の意味になる。
(2)段階的反義語 「大きい・小さい」「長い・短い」「暑い・寒い」などで、「かなり大きい・すこし大きい・大きくも小さくもない」などの中間段階がある。片方を否定しても、かならずしも他方の意味にならず、意味はあいまいとなる。段階的反義語はつねに比較の基準を必要とし、「これはそれより重い」のように明示されることもあるが、「これは重い」のように明示されないこともある。その場合、暗黙のうちに考えられている基準にはいくつかの種類がある。「大きい・長い」などプラスのほうの語は「大きさ・長さ」のように用いられるときはプラスの要素が消えて中立的な語となる。
(3)対義語 「売る・買う」「貸す・借りる」のように、ある単一のできごとを相反する立場からみたり、「親・子」「夫・妻」のように、ある一つの関係を相反する立場からみるときの語。片方が生じたり存在したりすれば、かならず同時に他方も生じたり存在したりする。「売る人」がいればかならず「買う人」がおり、「子」をもたない「親」は存在しない。
(4)対立語 中心点を挟んで空間的に対立する位置・方向をさす語で、「東・西」「南・北」「右・左」「前・後ろ」など。
(5)文化的反義語 特定の言語で社会的に反義と認めるもので、言語が異なるとかならずしも成立しない。日本語では「赤・白」「山・川」「山・海」「甘い・辛い」などがあり、英語では‘man-brute’‘bitter-sweet’などがある。
[国広哲弥]
『国広哲弥著『意味論の方法』(1982・大修館書店)』
…〈行く〉と〈来る〉のような反対の意味をもった対語(対義語)antonymのこと。これにはいくつかの種類が考えられる。…
※「対義語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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