改訂新版 世界大百科事典 「スズ(錫)酸」の意味・わかりやすい解説
スズ(錫)酸 (すずさん)
stannic acid
酸化スズ(Ⅳ)SnO2の水和物。一般にはSnO2・xH2Oの組成をもつ。xは一定値をとらず,ゲルとしての性質を示す。スズ酸塩水溶液に少量の希酸を加えると生ずる白色の沈殿はα-スズ酸と呼ばれる。構造などは明らかでない。α-スズ酸は水酸化アルカリや炭酸アルカリに溶ける。吸着性が大きく,有機色素,リン酸などをよく吸着する。溶液中に放置するか,加熱すると結晶性になり,酸化スズ(Ⅳ)に似た性質を示すようになる。これをβ-スズ酸と呼ぶ。比較的さらさらした白色粉末で,スズに濃硝酸を作用させても得られる。酸,アルカリ,炭酸アルカリに不溶。β-スズ酸をメタスズ酸と呼ぶこともあるが,これは正しくない。α-スズ酸とβ-スズ酸との相違はあまり明確ではなく,連続的に変化していると考えられている。
執筆者:大瀧 仁志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報