酸化スズ(読み)さんかすず(英語表記)tin oxide

改訂新版 世界大百科事典 「酸化スズ」の意味・わかりやすい解説

酸化スズ(錫) (さんかすず)
tin oxide

酸化スズ(Ⅱ)および酸化スズ(Ⅳ)がよく知られている。

化学式SnO。シュウ酸スズ(Ⅱ)SnC2O4を二酸化炭素気流中で熱するか,塩化スズ(Ⅱ)SnCl2アルカリ性溶液を煮沸して得られる水酸化スズ(Ⅱ)Sn(OH2酸素と接触しないように注意して100℃で脱水すると得られる黒色ないし灰色粉末比重6.44。水素中で熱すれば金属スズに,また空気中で熱すれば酸化スズ(Ⅳ)になる。水,希アルカリ,アンモニア水には溶けないが,酸,強アルカリ溶液には溶ける。

化学式SnO2。天然にはスズ石として産し,スズの原料鉱石となる。スズを空気中で強熱したり,硝酸を作用させて生ずるβ-スズ酸メタスズ酸)の沈殿灼熱,脱水するほか,4価のスズ塩を水に溶かし微アルカリ性としたとき生ずる沈殿を加熱しても得られる。酸化スズ(Ⅳ)は一般に無色だが,スズ石はいろいろに着色している。融点1127℃。比重6.95。固体でも電気伝導性があり,導電率には温度履歴性がある。水に不溶。酸,アルカリとも反応しにくいが,濃塩酸硫酸には溶ける。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸化スズ」の意味・わかりやすい解説

酸化スズ
さんかすず
tin oxide

スズと酸素の化合物。次の2種の化合物がよく知られている。ほかに三酸化二スズSn2O3や、さらに酸素の含有量の多いSn3O4なども報告されている。

(1)酸化スズ(Ⅱ) スズ(Ⅱ)塩溶液にアンモニア水を加えて生じた沈殿を脱水してつくる。青黒色の金属様結晶。水に不溶。両性で酸、アルカリに溶ける。空気中で熱すると220℃以上で酸化スズ(Ⅳ)になる。還元剤として用いる。スズ(Ⅱ)塩を加水分解すると水和物3SnO・H2Oが得られる。これは[Sn6O8H4]のようなクラスター化合物である。

(2)酸化スズ(Ⅳ) 天然には錫石(すずいし)として産出する。金属スズを空気中で熱するか、スズを硝酸に溶かしたものを強熱して得られる。無色の結晶。水、アルカリ、アンモニア水に不溶。水酸化アルカリと溶融するとスズ(Ⅳ)酸塩となる。電気伝導性がある。炭素または水素と熱すると金属スズを得る。錫石は金属スズの原料、ガラスや金属の研摩材、エナメルや乳色ガラスの製造などに用いる。スズ(Ⅳ)塩水溶液をアンモニアなどで加水分解すると水和物SnO2・H2Oが得られるが、これは通常スズ酸とよばれるゼラチン状沈殿で、乾燥するとガラス状となる。

[守永健一・中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「酸化スズ」の解説

酸化スズ
サンカスズ
tin oxide

】酸化スズ(Ⅱ):SnO(134.71).塩化スズ(Ⅱ)水溶液にアンモニア水,水酸化アルカリ水溶液などを加えて水酸化スズ(Ⅱ)を沈殿させ,これを空気に接しないようにして脱水すると得られる.黒~灰色の等軸晶系結晶.密度6.44 g cm-3.700 ℃ 以上で分解する.水,希アルカリ,アンモニア水に不溶,酸,アルカリに可溶.空気中で熱すると酸化スズ(Ⅳ)になる.水素気流中ではスズに還元される.スズ(Ⅱ)化合物の原料,ガラスのめっき,還元剤に用いられる.[CAS 21651-19-4]【】酸化スズ(Ⅳ):SnO2(150.70).二酸化スズともいう.天然にはスズ石として産出する.スズを空気中で強熱すると得られる.白色の粉末.密度6.95 g cm-3.融点1127 ℃.水,アルカリ,アンモニア水に不溶で,一般試薬と反応しにくいが,濃硫酸にはスズ(Ⅳ)塩となって溶ける.陶磁器のうわぐすり・着色剤,特殊ガラス(透明導電性ガラス),パテ,化粧品,触媒,ガスセンサー材料,金属スズの原料として用いられる.[CAS 18282-10-5]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酸化スズ」の意味・わかりやすい解説

酸化スズ
さんかスズ
tin oxide

(1) 酸化スズ (II) ,酸化第一スズ  SnO 。青黒色ないし灰色の正方晶系結晶。比重 6.39。水に不溶。 (2) 酸化スズ (IV) ,酸化第二スズ,  SnO2 。錫石として産出。天然物は着色しており,合成物は無色粉末である。水に不溶。

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