日本大百科全書(ニッポニカ) 「透明導電膜付ガラス」の意味・わかりやすい解説
透明導電膜付ガラス
とうめいどうでんまくつきがらす
glass with transparent conductive oxide
表面に透明な金属膜のコーティングがしてあり導電性をもつガラスをいう。一般的に、ガラスは抵抗値が高く電気が流れないが、透明導電膜を形成することで、低い比抵抗と高い透過率を付与することができる。透明導電膜付ガラスは、液晶やプラズマなどのディスプレーや太陽電池用の透明電極、冷蔵ショーウィンドーなどの曇り防止のための透明ヒーター、各種帯電防止膜として利用される。透明導電膜は、赤外線(熱線)反射性を有しているため、建築用の熱線反射窓ガラスとしても利用される。代表的な透明導電膜としてITO(Indium Tin oxide、酸化インジウムスズ)、SnO2(酸化スズ(Ⅳ))、ZnO(酸化亜鉛)がある。ITOは、SnO2やZnOより低抵抗の膜を得やすい。テレビやパソコン用ディスプレーの製造工程では、洗浄や画素のパターニングなどのために、膜付ガラスを特殊溶液につける。洗浄液に対しては劣化せず、パターニング用液に対しては容易に溶出する必要がある。ITOは前記特性に優れており、製造工程で取り扱いやすい材料である。ただし、成膜が真空プロセスのため製造コストが高くなりやすく、また希少材料でもあることから高価である。SnO2膜は、耐久性に優れ、化学蒸着法(CVD)で作製できるためガラス製造時にコーティング処理をすることができ、製造コストを安くできる。微細な凹凸形状を付与することもできるため、テクスチャー構造を必要とする太陽電池用の薄膜Si(シリコン)用透明導電膜として優位な立場にある。ただ、パターニング加工に難がある。ZnOは、原材料であるZn(亜鉛)が安価なため低コスト透明導電膜として期待されている。また、光吸収の基礎吸収端が可視光に近いため、紫外線(UV)カット性能に優れる特徴もあるが、酸やアルカリに弱いという欠点を有する。
[伊藤節郎]