ゲル(英語表記)gel

翻訳|gel

デジタル大辞泉 「ゲル」の意味・読み・例文・類語

ゲル(〈ドイツ〉Gel)

コロイド溶液が固まって、半固体ないし固体の状態になったもの。ゲルが分散媒を含んだまま固化したものをゼリーといい、狭い意味ではゲルはゼリーのこと。豆腐・こんにゃくゆで卵など。→ゾルジェル
[類語]溶液水溶液乳液原液薬液廃液膠質コロイドゾル

ゲル

《「ゲルト」の略。戦前の学生語》金銭。かね。

ゲル(〈モンゴル〉ger)

モンゴルなどの遊牧民が用いる饅頭形をした組み立て式の家屋。骨組みを木で作り、その上をフェルトで覆う。中国語では「パオ」という。

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精選版 日本国語大辞典 「ゲル」の意味・読み・例文・類語

ゲル

  1. 〘 名詞 〙 ( 主に戦前の学生用語。「ゲルト」の略 ) 金銭。〔モダン用語辞典(1930)〕
    1. [初出の実例]「だって、ゲル(金)はどうするんだよう? ゲルがないぜ」(出典:女給夕子の一生(1956)〈井上友一郎〉五)

ゲル

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Gel ) コロイド溶液中の粒子が互いにつながってゼリー状に固化したもの。また、その状態。ゼラチンや寒天、豆腐、こんにゃくなどのほか、生物体の原形質内などにみられる。⇔ゾル

ゲル

  1. 〘 名詞 〙 ( [モンゴル語] gher ) 「パオ(包)」のモンゴル名。

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改訂新版 世界大百科事典 「ゲル」の意味・わかりやすい解説

ゲル
gel

コロイド分散系の分散粒子間にかなり強い結合力が働き,重力程度の外力によっては破壊されない網状組織をつくってゼリー状に固化した状態をいう。これに対して液状のコロイド分散系をゾルという。ゼラチンや寒天のつくるゲルが代表的であるが,各種のゼリー,豆腐,こんにゃく,あるいは生物体や土壌のある部分もゲルと考えられる。液体成分として水をもつものをヒドロゲルhydrogel,有機溶媒をもつものをオルガノゲルorganogelという。かなり多量の液体成分を含むことがあり,たとえば寒天ゲルは99.8%以上の水を含むこともできる。

 ゲルの種類によってその構造安定性は広範囲に変わる。たとえば水酸化鉄,水酸化アルミニウム,ベントナイトなどの粒子がつくるゲルは一般に不安定で,外力により支持構造が容易にこわれゾルとなるが,静置すると再び構造形成が起こりゲル化する。この場合,強い構造粘性やチキソトロピーの現象を示すし,また温度の上昇,下降によりゾル-ゲルの変換を起こすこともある。これに対しポリケイ酸のつくるシリカゲル架橋高分子のつくる種々の高分子ゲルは安定な骨格構造をもっている。ゼラチンなどのタンパク質水素結合などの比較的強い分子間力によってつくるゲルは前2者の中間の安定性を示す。安定なゲルから液体成分を除くと,あとに固相の骨格が残る。これをキセロゲルxerogelといい,乾燥したケイ酸ゲル,ケイ藻土,酸性白土などがその例である。これらは多孔質のため,気体の吸着や乾燥剤,触媒の担体などとして利用されている。
コロイド
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ゲル
gher

モンゴルの椀型天幕家屋。包(パオ)はその中国語。細棒から成る壁部(伸縮自在の矢来組)と屋根部の骨組みに,フェルトをまき(夏は1枚,冬は2枚重ね),獣毛製ロープで縛る。トルコ系のユルタとは,屋根棒がまっすぐな点が異なる。ゲルは軽量で,携帯に楽であり,また組立てと解体が容易で,移動生活に便利である。入口は南面し,内部は中央に炉があり,北側が上座,西側が男席,東側が女席で,男席には馬乳酒製造用具,狩猟具など,女席には台所用品,長持などが置かれる。これらの配置もトルコ人の場合とは異なる。新夫婦は新しいゲルを与えられる。ゲルは家族の意味ももっている。
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百科事典マイペディア 「ゲル」の意味・わかりやすい解説

ゲル

ゾルが流動性を失い,粘度を増してゼリー状に固まったもの。ゼラチンや寒天の濃い溶液はこの例。コロイド粒子が一定の組織的な結びつきをつくり,自由に動けなくなった状態と考えられる。熱するとコロイド粒子の結びつきが壊れてゾルとなり,冷やすと再びゲルになる可逆的なものと,いったんゲルになると再びゾルにならない不可逆的なものがある。分散媒としての水が入ったものをヒドロゲル,この水を乾燥除去したものをキセロゲルという。シリカゲル,ケイ藻土などは後者の例で,乾燥剤,吸着剤として広く利用される。→チキソトロピー
→関連項目金属セッケン固形アルコールコロイド水銀電池膨潤リーゼガング現象

ゲル

パオ(包)

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化学辞典 第2版 「ゲル」の解説

ゲル
ゲル
gel

液体を分散媒とするコロイド分散系が流動性を失って固化した状態で,分散相の溶解度が低下し,互いに連結して網目構造をとって,そのなかに分散媒が含まれたものと考えられる.したがって,分散媒も分散相も連続していることになり,一般にいちじるしい弾性を示すのが特徴である.寒天やゼラチンは温水中に分散してゾルとなるが,冷却するとゲル状態をとる.その濃度が小さいときには流動性を示すが,弾性もあることが検出される.一般に,糸状高分子は溶媒中でゲルとなりやすい.ケイ酸ナトリウム(水ガラス)の水溶液(アルカリ性)を酸で中和するとゲル化する.これはケイ酸が重合するときに網目構造をとるものと考えられる.これを乾燥したものはシリカゲルとして乾燥剤や触媒の担体として用いられる.ゲルの弾性は,あまり希薄でない場合には,温度とともに増大する傾向を示し,ゴム弾性と同様にエントロピー弾性に属するものと考えられている.無定形沈殿をゲル状沈殿などということもある.

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デジタル大辞泉プラス 「ゲル」の解説

ゲル

モンゴルの遊牧民が使用する伝統的な移動式住居。木製の骨組みにフェルトの覆いをかけ、ロープでとめる組立て式の住居で、壁は円筒形、屋根は円錐形の伏せた椀のような形状になる。骨組みは移動時には小さく折りたためるよう工夫されている。「パオ」ともいう。

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岩石学辞典 「ゲル」の解説

ゲル

コロイド(colloid)溶液であるゾル(sol)がゼリー状に固化したもの.多量の水などの液体成分あるいは空隙を含むことが多いが,系全体にわたる支持構造をもち,その形状をたもっている.

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栄養・生化学辞典 「ゲル」の解説

ゲル

 コロイド溶液が流動性を失って固化した状態.

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世界大百科事典(旧版)内のゲルの言及

【住居】より

…農耕社会でも焼畑を経営する人々の住居は多少なりとも移動性を伴う。遊牧民ベドウィンのテントやモンゴルのゲルに代表されるような移動式住居は,われわれにもう一つの住居観を教えている。それは一ヵ所に定住しない世界であり,家船(えぶね)を住居とする漂海民にも通じていく。…

【テント】より

…移動式の家屋で解体して持ち運びのできる簡易なものを指す。獲物や家畜を追って移動する狩猟民,牧畜民の住居として,北アジアの狩猟民や北米インディアンの用いた3本の木を組み合わせた形や2本ずつ組み合わせた上に1本を渡し,さらにその上に皮や草で編んだマットを覆ったものやモンゴル,キルギスの遊牧民のユルタゲルのような柳の枝などで組んだ笠状の屋根にフェルトをかぶせたもの,西南アジアの遊牧民の長方形のブラックテントなど,現在も用いられているものもあるが,一般的には日常的住居としてではなく,臨時の露営,キャンプ用として軍事,探検,登山などで用いられる布製のテントを指すと考えてよかろう。運動会用や工事用に用いる野外の日よけ,雨よけに用いるものもテントと呼んでいる。…

【コロイド】より

…これは線状分子が長い分子鎖のところどころで会合し系全体にわたる網目構造をつくるためで,その間隙を水分子がうずめる。ゼラチンや寒天がつくるゼリー状構造が典型的であり,非常に軟らかいが固体状態をとりゲルと呼ばれる。しかしこの三次元網目構造をつくる分子鎖の会合はそれほど強くないので,温度が高くなり分子鎖の運動が激しくなるとほどけて液体状態となる。…

※「ゲル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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