翻訳|gel
コロイド分散系の分散粒子間にかなり強い結合力が働き,重力程度の外力によっては破壊されない網状組織をつくってゼリー状に固化した状態をいう。これに対して液状のコロイド分散系をゾルという。ゼラチンや寒天のつくるゲルが代表的であるが,各種のゼリー,豆腐,こんにゃく,あるいは生物体や土壌のある部分もゲルと考えられる。液体成分として水をもつものをヒドロゲルhydrogel,有機溶媒をもつものをオルガノゲルorganogelという。かなり多量の液体成分を含むことがあり,たとえば寒天ゲルは99.8%以上の水を含むこともできる。
ゲルの種類によってその構造安定性は広範囲に変わる。たとえば水酸化鉄,水酸化アルミニウム,ベントナイトなどの粒子がつくるゲルは一般に不安定で,外力により支持構造が容易にこわれゾルとなるが,静置すると再び構造形成が起こりゲル化する。この場合,強い構造粘性やチキソトロピーの現象を示すし,また温度の上昇,下降によりゾル-ゲルの変換を起こすこともある。これに対しポリケイ酸のつくるシリカゲル,架橋高分子のつくる種々の高分子ゲルは安定な骨格構造をもっている。ゼラチンなどのタンパク質が水素結合などの比較的強い分子間力によってつくるゲルは前2者の中間の安定性を示す。安定なゲルから液体成分を除くと,あとに固相の骨格が残る。これをキセロゲルxerogelといい,乾燥したケイ酸ゲル,ケイ藻土,酸性白土などがその例である。これらは多孔質のため,気体の吸着や乾燥剤,触媒の担体などとして利用されている。
→コロイド
執筆者:妹尾 学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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液体を分散媒とするコロイド分散系が流動性を失って固化した状態で,分散相の溶解度が低下し,互いに連結して網目構造をとって,そのなかに分散媒が含まれたものと考えられる.したがって,分散媒も分散相も連続していることになり,一般にいちじるしい弾性を示すのが特徴である.寒天やゼラチンは温水中に分散してゾルとなるが,冷却するとゲル状態をとる.その濃度が小さいときには流動性を示すが,弾性もあることが検出される.一般に,糸状高分子は溶媒中でゲルとなりやすい.ケイ酸ナトリウム(水ガラス)の水溶液(アルカリ性)を酸で中和するとゲル化する.これはケイ酸が重合するときに網目構造をとるものと考えられる.これを乾燥したものはシリカゲルとして乾燥剤や触媒の担体として用いられる.ゲルの弾性は,あまり希薄でない場合には,温度とともに増大する傾向を示し,ゴム弾性と同様にエントロピー弾性に属するものと考えられている.無定形沈殿をゲル状沈殿などということもある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…農耕社会でも焼畑を経営する人々の住居は多少なりとも移動性を伴う。遊牧民ベドウィンのテントやモンゴルのゲルに代表されるような移動式住居は,われわれにもう一つの住居観を教えている。それは一ヵ所に定住しない世界であり,家船(えぶね)を住居とする漂海民にも通じていく。…
…移動式の家屋で解体して持ち運びのできる簡易なものを指す。獲物や家畜を追って移動する狩猟民,牧畜民の住居として,北アジアの狩猟民や北米インディアンの用いた3本の木を組み合わせた形や2本ずつ組み合わせた上に1本を渡し,さらにその上に皮や草で編んだマットを覆ったものやモンゴル,キルギスの遊牧民のユルタやゲルのような柳の枝などで組んだ笠状の屋根にフェルトをかぶせたもの,西南アジアの遊牧民の長方形のブラックテントなど,現在も用いられているものもあるが,一般的には日常的住居としてではなく,臨時の露営,キャンプ用として軍事,探検,登山などで用いられる布製のテントを指すと考えてよかろう。運動会用や工事用に用いる野外の日よけ,雨よけに用いるものもテントと呼んでいる。…
…これは線状分子が長い分子鎖のところどころで会合し系全体にわたる網目構造をつくるためで,その間隙を水分子がうずめる。ゼラチンや寒天がつくるゼリー状構造が典型的であり,非常に軟らかいが固体状態をとりゲルと呼ばれる。しかしこの三次元網目構造をつくる分子鎖の会合はそれほど強くないので,温度が高くなり分子鎖の運動が激しくなるとほどけて液体状態となる。…
※「ゲル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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