フランクル(Viktor Emil Frankl)(読み)ふらんくる(英語表記)Viktor Emil Frankl

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

フランクル(Viktor Emil Frankl)
ふらんくる
Viktor Emil Frankl
(1905―1997)

オーストリアの精神医学者。ウィーンに生まれる。ウィーン大学神経科教授、ウィーン市立総合病院精神科部長、さらにカリフォルニア州サン・ディエゴにおいて合衆国国際大学教授を務めるとともに、ロゴテラピー研究所を主宰した。フロイト、A・アドラーに師事するが、実存主義、とりわけヤスパースの影響を受け、最初「実存分析」、のちにはロゴテラピーLogotherapieとよぶ独自の人格的心理療法を提唱した。彼によれば、精神分析や行動主義は神経症を心理・身体次元の因果関係に還元して解釈するが、これは一面的であり、人格次元において把握されるべきであるという。すなわち、人間は状況に束縛されつつも、状況を選ぶ自由をもち、それゆえ人生の意味を求める選択と責任とが生ずるという。かくて治療においては、意味を求める人間として医師と患者との真剣な人格的交わりが必要であると説く。『夜と霧――強制収容所における一心理学者の体験』(1947)は、第二次世界大戦中ユダヤ人として自らが体験したナチスの強制収容所の記録であるとともに、限界状況における人々の心理分析によって彼のロゴテラピー理論の基礎となっている。

[小池英光]

『霜山徳爾訳『夜と霧』新装版(1985/新版・池田香代子訳・2002・みすず書房)』『V・フランクル著、真行寺功訳『苦悩の存在論――ニヒリズムの根本問題』新版(1998・新泉社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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