改訂新版 世界大百科事典 「実存分析」の意味・わかりやすい解説
実存分析 (じつぞんぶんせき)
Existenzanalyse[ドイツ]
《夜と霧》で知られるオーストリアの精神医学者フランクルが第2次大戦後にとなえた学説。人間存在の基盤としての責任性と倫理性に着目しながら,人生の意味と価値を分析していくところに本質があり,その治療理念としてロゴテラピーLogotherapieが生まれた。S.フロイトの〈快楽への意志〉とA.アードラーの〈力への意志〉に対して〈意味への意志〉を鍵概念として主張し,これが満たされない場合には,精神因性神経症noogene Neuroseという名の,実存的危機や良心との葛藤が生ずると説く。ウィーンで活動しながら,フロイトやアードラーよりもM.シェーラーらの実存哲学から影響をうけたが,それにもましてアウシュビッツの強制収容所で生きのびた彼の体験がこの学説の基点になったといわれる。
執筆者:宮本 忠雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報