コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

実存主義 じつぞんしゅぎexistentialisme(仏)

知恵蔵の解説

実存主義

実存の哲学」のページをご覧ください。

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について | 情報

デジタル大辞泉の解説

じつぞん‐しゅぎ【実存主義】

《〈フランス〉existentialisme》人間の実存を哲学の中心におく思想的立場。合理主義実証主義に対抗しておこり、20世紀、特に第二次大戦後に文学・芸術を含む思想運動として展開される。キルケゴールニーチェらに始まり、ヤスパースハイデッガーマルセルサルトルらが代表者。実存哲学

出典|小学館デジタル大辞泉について | 情報 凡例

百科事典マイペディアの解説

実存主義【じつぞんしゅぎ】

英語existentialism,ドイツ語Existentialismus,フランス語existentialismeなどの訳。人間を〈本質存在〉ではなく,個別具体的かつ主体的な事実存在,すなわち〈実存〉としてとらえる立場で,20世紀の哲学・思想の有力な潮流。
→関連項目アンガージュマン九鬼周造構造主義第二の性ドストエフスキーボーボアールメルロー・ポンティ和辻哲郎

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト百科事典マイペディアについて | 情報

世界大百科事典 第2版の解説

じつぞんしゅぎ【実存主義 existentialism】

人間の本来的なあり方を主体的な実存に求める立場。実存existence(existentia)とは現実存在の意であり,元来は中世のスコラ哲学で本質essence(essentia)の対概念として用いられた表現である。例えば,ペーパーナイフの実存といえば,材質や形状がまちまちである個々の具体的な現実のペーパーナイフの存在を意味するが,その本質といえば,この木片もその金属棒もあの象牙細工もいずれもがペーパーナイフであると言える場合の基準の存在を指すことになる。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

大辞林 第三版の解説

じつぞんしゅぎ【実存主義】

〘哲〙 人間の実存を中心的関心とする思想。一九世紀中葉から後半にかけてのキルケゴール・ニーチェらをはじめ、ドイツのハイデッガー・ヤスパース、フランスのサルトル・マルセルらに代表される。合理主義・実証主義による客観的ないし観念的人間把握、近代の科学技術による人間の自己喪失などを批判し、二〇世紀、特に第二次大戦後、文学・芸術を含む思想運動として盛り上がった。実存哲学。

出典|三省堂大辞林 第三版について | 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

実存主義
じつぞんしゅぎ
Existentialism

世界における人間の実存 (現実存在) を説明しようとする哲学の一派。主として 20世紀に意識的な運動となって現れ,ハイデガーヤスパースサルトルマルセルメルロー=ポンティらが実存主義哲学者とされるが,その特徴は 19世紀の思想家であるニーチェキルケゴールにもすでに認められる。直接の先駆者であるキルケゴールは人間の自由選択の意義を強調し,未来の一部分はこの選択にかかっており,閉鎖的な合理的体系によって予知しうるものではないとし,このような人間存在を実存と呼んだ。他のものと代置しえないこの個別的実存のもつ哲学的重要性を強調する立場が広く実存主義と称される。
非合理主義者による伝統哲学への反抗とみられることもあるが,実存主義はおもにその内部で発展した理論であった。次の3つの理由から認識論を否定し,人間に関する知識を深めようとする立場である。第1に,人間は単に認識主体ではなく,心配し,望み,あやつり,そしてなかんずく選択し,行動する。ハイデガーは物体を認識のための「物」ではなく,使うための道具とみなす。メルロー=ポンティは生の経験はみずからの肉体の経験から始るとする。第2に,認識論の教義にときとして必要な自己 (自我) は,内省以前の経験の基本的特徴ではなく,他人の経験から生じる。認識主体たる自我は,外の物の存在を推論したり構成するというよりは,むしろ前提としている。第3に,人間は世界の独立した観察者ではなく,「世界のなか」に存在する。人間は木石のような存在とは違う特殊な意味で「存在」する。しかし,デカルトの見解に反して,人間は知識や知覚の介在なしに世界を受入れる。人間が外の物を推論したり,映したり,疑う独立した意識の領域は存在しない。実存主義者がデカルト主義者の二元論を拒絶する理由の一つは,認識より存在に関心があり,現象学は存在論でもあると考えるからである。
特殊な意味で人間が存在するということは,みずからの選択と行動で決めた未来が開かれていることを意味する。木石やトラなどの他の存在は,自分が何であり,何をなすかを決める本質ないし本能をもつ。反対に,人間は自分の行動を支配するような本質を,種としても個としてももたない。人間は,みずからの選択,生き方の選択 (キルケゴール) ,特殊な行動 (サルトル) によって,みずからが何たるかを決める。単に「与えられた」役割を演じたり,「与えられた」価値 (たとえば神や社会から与えられた) に従っているときでさえ,実際にはそうすることを選んでいるのである。なぜなら,合理的にせよ偶然にせよ,人間の選択を単独で決定する与えられた価値は存在しないからである。どんな選択でも可能というわけではない。人間の「存在が世界のなかにある」ということは,特殊な状況に「放擲」 (ハイデガー) されていることを意味する。自由に利用できると思えるものも,実際にそうとは限らない。それを前もって知ることもできない。人間の選択は,どのような形にせよ説明できるものではないと実存論者は主張して,科学的唯物論を否定する。未来の開放性,個人とそのおかれた状況の特異性は合理的哲学体系を寄せつけない,とも主張する。それが,彼らが「存在」にこだわるもう一つの理由である。存在は,認識と異なるだけでなく,個人的なものや特殊なものをきちんととらえられない抽象概念とも異なる。
実存主義者は人間の選択には合理的な理由はないとしているので,規則や価値観という意味での倫理を提唱しない。むしろ倫理を行動や選択を考える枠組みとみる。この枠組みは選択すべきものを示唆するのではなく,正しい選択と誤った選択があることを示す。人は信頼できるものにも信頼できないものにもなれる (ハイデガー) し,誠実にも不誠実にも行動できる (サルトル) 。不誠実な行動とは,多数派に盲目的に従ったり,既存の価値や制度を支持することなどをいう。特に,人間は死,苦悩,争い,罪などの「限界状況」 (ヤスパース) に直面すると,自分が行動すべき世界の究極的な不可解さとともに,みずからの行為者としての責任を認識するようになる。
実存主義は,心理学 (ヤスパース,ビンスワンガーレーン ) やキリスト教 (キルケゴール,マルセル) だけでなく,無神論 (ハイデガー,サルトル) や神学 (バルトティリヒブルトマン ) など,哲学以外の分野にも大きな影響を与えた。実存主義は特定の政治的信条を内包しないが,政治的直接行動主義につながる人間の自由をそこなうものや体制順応主義への反感と責任の強調 (サルトル) を伴う。キルケゴールが唯一すすめる「間接的伝達」は実存主義者の多くに無視されたが,特定の状況と自律的選択の重視は,哲学論文だけでなくドラマや小説によっても,実存的真理を伝えうることを意味する。実存主義への関心は数々の想像力にあふれた文学作品 (サルトル,カミュボーボアール ) を生んだ。そのうえ,実存主義哲学はあらゆる時代の文学作品,たとえばソクラテスシェークスピアドストエフスキーフォークナーに共通する主題を表現したり解釈する手段をもたらした。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について | 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

実存主義
じつぞんしゅぎ

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

世界大百科事典内の実存主義の言及

【西洋哲学】より

…自然的事物に関しては,形相と質料の区別と同様にその〈である=本質存在〉と〈がある=事実存在〉とを区別して考えることは困難だからである。 現代の哲学者,たとえばサルトルが〈事実存在〉に対して〈本質存在〉を優先させてきた西洋哲学の伝統に逆らい――話を人間の存在に限ってのことではあるが――〈本質存在〉に〈事実存在〉つまり〈実存〉を優先させ,そうすることによって人間の根源的自由を主張する実存主義を提唱したことはすでに知られていよう(《実存主義とは何か》)。 同じような企てはすでに19世紀初頭のシェリングの後期思想にも見られる。…

【戦間期】より

…日常性の容赦なき破壊という点で,シュルレアリストは革命運動と相通ずるものをもっていたから,彼らの中で共産党に入党し,そこにとどまった者も少なくなかったが(L.アラゴン,P.エリュアールなど),それ以上の数が党の集権的統制に幻滅して,そこから離れた。 同じように,同時代人の思想のうちに刻印を残した哲学的立場として実存主義論理実証主義をあげることができよう。前者は社会的分裂と政治的崩壊の時代を生きる現代人の不安と孤独をみつめ,そこから真の主体性確立の契機を引き出そうとするもので,M.ハイデッガー,K.ヤスパースがその代表者であった。…

【超越】より

…(2)神学的超越概念 神学においては,有限な偶然的存在を超え出た必然的存在者つまり神を〈超越者〉とよぶ。そこから転じて,信仰によって世俗的生活を脱却し超越者に直面せんとすることや,さらにはヤスパースやサルトルの実存主義においてのように,人間がおのれの無自覚な惰性的存在を脱して,決断と選択の絶対的自由をもつ主体的実存へ飛躍することが〈超越〉とよばれるようになった。しかし,超越の上記の二つの意味はしばしば混同され,またもつれ合ってきた。…

【ヤスパース】より

…キルケゴール,ニーチェ,M.ウェーバーの影響のもと10年余に及ぶ思索の末に,《現代の精神的状況》(1931)と大著《哲学》3巻(1932)とを公刊。前者では大衆社会の中に埋没して自己を喪失している現代人を批判し,後者では限界状況(死,苦,争,責)における挫折を直視することによって超越者の暗号の世界へと立ちいでていく実存の形而上学を展開,〈実存哲学〉の立場を体系化して,現代実存主義哲学の礎石を築いた。リッケルト引退の32年に哲学科主任教授となったが,翌年ナチスにより大学運営参加を締め出される。…

※「実存主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

実存主義の関連キーワードエグジスタンシアリスムシュティルナーベルジャーエフリスペクトールジーン カナパ永遠なる序章ボーボワール無関心な人々非合理主義ブロンデルフランクルラ・クール田中千禾夫松浪信三郎存在と時間戦後派文学存在と無科学技術マリタンムーニエ

今日のキーワード

大義

1 人として守るべき道義。国家・君主への忠義、親への孝行など。「大義に殉じる」2 重要な意義。大切な事柄。「自由平等の大義を説く」...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

実存主義の関連情報