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ニヒリズム ニヒリズム nihilism

翻訳|nihilism

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ニヒリズム
ニヒリズム
nihilism

虚無主義の意。ドイツの哲学者 F.ヤコービが『フィヒテ宛書簡』 (1799) でニヒリズムの語を初めて用い,ロシアの小説家 I.ツルゲーネフの小説『父と子』 (1862) によって広まった。認識論的には真理認識の可能性を否定する絶対的懐疑論であり,存在論的には一切の実在の否定である。

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デジタル大辞泉の解説

ニヒリズム(nihilism)

虚無主義。
すべての事象の根底に虚無を見いだし、何物も真に存在せず、また認識もできないとする立場。
既存の価値体系や権威をすべて否定する思想や態度。ツルゲーネフニーチェカミュなどに代表される。

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百科事典マイペディアの解説

ニヒリズム

虚無主義〉。語源は〈無・虚無〉を意味するラテン語nihil。一切の既成の価値・秩序・権威を否定する立場。この語の使用はF.ヤコビ(1799年)に始まり,バーダー(1826年)によって信仰と知性の分裂をもたらした反教会的危険思想の意で用いられ,さらにツルゲーネフが《父の子》(1862年)の中で主人公ニヒリストと呼んで以来一般化し,ニヒリズムは1860年代から1970年代にかけて,ロシアの急進的革命思想として盛行した。

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世界大百科事典 第2版の解説

ニヒリズム【nihilism】

ラテン語のニヒルnihil(虚無)に基づく造語。あらゆる既成の宗教的・道徳的・政治的権威や既成の社会的秩序とそのイデオロギーに対する無条件的な否定の立場を表し,虚無主義と訳される。この語が哲学用語として比較的重要な意味で最初に使用された場合の一つとして認められているのは,1799年にF.H.ヤコビがフィヒテにあてた公開書簡の場合であり,そこではフィヒテの観念論がニヒリズムとして非難されている。一説によれば,弁証法を神学の対象にも適用したアベラールの説を継承した12世紀の神学者たちの一派のいわゆるニヒリアニズムnihilianism,すなわちキリストの人間性は偶有性にすぎず,キリストは人間としてはニヒルであるという中世キリスト論が,当時のヤコビたちに影響を与えていたといわれる。

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大辞林 第三版の解説

ニヒリズム【nihilism】

真理・価値・超越的なものの実在やその既成の様態をことごとく否定する思想的立場。
一般に無や空を主張する思想態度。仏教・老荘思想をはじめとして古来から多くの形態がみられる。
特にヨーロッパ近代社会やキリスト教文明の根底に対する否認の思想。一九世紀後半のロシアの文学思潮・革命思想,ニーチェの哲学などに顕著。虚無主義。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ニヒリズム
にひりずむ
Nihilismusドイツ語

「虚無主義」と訳される。通説によれば、「ニヒリズム」はヤコービがフィヒテの知識学を非難して用いたのが最初だとされる。「ニヒリズム」はまた、19世紀の後半、ロシアの社会運動に現れた伝統的権威、政治社会上の諸制度、宗教などを否定し排斥する傾向をさし、盛んに用いられた。しかし今日、「ニヒリズム」ということばを耳にして普通念頭に浮かぶのは、もっぱらニーチェとその現代批判であろう。
 ニーチェによれば、「徹底したニヒリズムとは、承認されている最高の諸価値が問題になるようでは、生存は絶対的に不安定だという確信、およびそれに加えて、“神的”であり、道徳の化身でもあるような彼岸(ひがん)ないしは事物自体を調製する権利は、われわれには些(いささ)かもないという洞察のことである」が、現代はそのニヒリズムの到来の時代である。「私が語るのは来るべき20世紀の歴史である。私はやって来るもの、もはや別様にはやって来えないもの、つまりニヒリズムの到来を記すのだ」とニーチェは語る。[山崎庸佑]

神への信仰とその動揺

ニヒリズムの「ニヒル」nihilはラテン語で「無」を意味し、それゆえニヒリズムはしばしば「虚無主義」と訳されるが、このニヒリズムは、いったい何が「無」くなったことを主張するかといえば、それは前出の引用文で暗示されたように、「最高の諸価値」が崩壊したことである。「ニヒリズム=目標の欠如、“なんのため?”に対する答えの欠如。ニヒリズムは何を意味するか?――最高の諸価値が無価値化されるということである」(ニーチェ)。すなわち、人間存在に意味を与えてきた世界観的、人生観的な諸価値が「無」くなったがゆえに、ニヒリズムとよばれる精神状況が到来したのである。
 ヨーロッパの精神史を支配してきた価値観の根底には、永遠のものを現世的な生成変化の彼岸に置くプラトン主義があった。ニーチェによれば、このプラトン主義の民衆版であるキリスト教とその道徳観において、生成変化する現世的―感性的な生を非難、断罪し、価値あるもの、真であるものを生の彼岸に求める世界観はとくに顕著である。
 キリスト教の世界観は――人間と世界を連続親縁(シュンピュイア)の間柄にあるとみた初期ギリシアの汎(はん)自然的で調和(コスモス)的な世界観とは違って――肉と霊、此岸(しがん)と彼岸、自由と摂理といった二元的な差別と乖離(かいり)をもたらし、人間を深い緊張のうちに投げ込んだが、しかし世界の階層的な差別の頂点には神があり、二元的な分裂をそれでも究極のところで統一してはいた。だからこそ、差別が同時に秩序でもありえたわけだが、しかし、いまもしその神への信仰が突然消滅し、差別や分裂が差別や分裂としてのみ残存するに至ったとすれば、いったいどうなるか。すべてが支離滅裂となり、混沌(こんとん)に帰する以外にないであろう。「結局、何がおこったのか? 現存在の全体的性格は“目的”という概念によっても、“統一”という概念によっても、“真理”という概念によっても解釈されてはならない、ということが理解されたとき、無価値性の感情が得られたのである」。[山崎庸佑]

ニヒリズムの遠因

ニヒリズムという「無価値性の感情」はいったいどこからくるかという問いに対しては、前記のような次第で、社会的な困窮状態や生理学上の変質や心的困窮といったものからではなくて、「一つのまったく特定の解釈、つまりキリスト教的、道徳的な解釈」からくると答えなければならない。
 生成変化に超然とした彼岸的真理の秩序、その秩序の根であるキリスト教の神への信仰が動揺し、差別や分裂が差別や分裂としてのみ残存するに至るところにニヒリズムは発生するが、そのことは、「“神的”であり、道徳の化身でもあるような彼岸」、もともと「調製する権利」のなかった虚構に2000年の信を置いてきたことの報いが一転した「無価値性の感情」だということを意味する。あまりにも長く「特定の解釈」に信を置き続けた人間が、その特定の解釈、キリスト教的世界観の動揺を経験するとき、彼はその世界観だけではなく、世界観一般、それどころか世界そのものの無価値性の感情に襲われるのである。[山崎庸佑]
『西谷啓治著『ニヒリズム』(1972・創文社) ▽渡辺二郎著『ニヒリズム』(1975・東京大学出版会)』

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世界大百科事典内のニヒリズムの言及

【永劫回帰】より

…ニーチェはヨーロッパが依拠してきたいっさいのものを――主体や意識や理性という概念も,科学や宗教や民主主義も――生の実相から離れた虚偽であると看破した。これらの背後にあるプラトン主義やキリスト教も実はニヒリズムの発現でしかないとする彼にとって,唯一の実在は,生成の全体としての自然であり,生の唯一の原理は〈力への意志〉となる。近代的な理性の歴史とその進歩信仰は単なる幕間劇としてその意義を失い,存在の全体の根本性格は無限の時間の中での有限な〈力への意志〉の戯れ,つまり永劫回帰であると彼は言う。…

【神の死】より

ニーチェの用語。〈神は死んだ〉と説いたニーチェにとって,神の死とは単にキリスト教の超克ではなく,ニヒリズムの宣言でもあった。ニーチェによると生の本質は〈力への意志〉であり,力への意志はみずからを維持するために必要な世界解釈を行う。…

【ニーチェ】より

…いずれもアフォリズム集である。《曙光》では特に権力感情の分析が展開され,ヨーロッパ的価値観の底に潜むニヒリズムと〈力への意志〉という後期の問題関連の萌芽が認められる。《華やぐ知慧》には批判的解体に伴うペシミズムから新たな晴朗さへの回復がはっきりと認められる。…

【ハイデッガー】より

…それも人類の歴史の重要な転換期ごとに存在・真理・世界がそのつど別な現象の系列として出現するというだけではなく,それらがきわめて早期からそれぞれの人間的意味を減衰させ,ついには存在と世界の喪失へむかって滔々と流れていくという含みを帯びてくる。すなわち後期ハイデッガーの思想は,その先端において〈ヨーロッパのニヒリズム〉との,ニーチェのそれとはまったく異なる対決へと呼び立てられるのである。この世界はギリシア人のいうコスモスでも,キリスト教徒の信じる摂理の舞台でもなく,もはやいかなる体系化も意味づけをも不可能にする渾沌,無へと突きすすんでいく過程そのものにほかならない。…

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