伝送理論(読み)でんそうりろん(英語表記)transmission-line theory

改訂新版 世界大百科事典 「伝送理論」の意味・わかりやすい解説

伝送理論 (でんそうりろん)
transmission-line theory

伝送路には雑音,漏話,損失,ひずみなどを生ずる不完全さがあり,信号伝送を損なう。こういった伝送系の不完全性に基づく信号の劣化の一般的な解析法を与え,信号の伝送を劣化させる各種要因を明らかにする理論を伝送理論という。以下,代表的な劣化要因について述べる。

伝送系の入力側に加えられた電流,または電圧波形と,出力側に現れる電流,または電圧波形とは一般に異なる。この変形をひずみといい,直線ひずみと非直線ひずみの二つに大きく分けられる。直線ひずみには,減衰ひずみ位相ひずみがある。伝送系の減衰量の周波数特性が平たんでない場合,減衰ひずみを生じているという。伝送系の位相の周波数特性が直線でない場合,位相ひずみがあるという。また非直線ひずみとは,システムの非直線性,例えば伝送系に含まれる増幅器の飽和特性に起因するひずみである。非直線ひずみを有する伝送系では,直線ひずみのみの場合と異なり,入力信号に含まれない周波数成分が出力に現れて妨害要因となる。

平行した伝送線路間で電磁的,静電的な結合により通話が他の回線に漏れる現象をいう。漏話は高周波になるほど大きくなる。

一般に加入者線は送受話信号を同一伝送路で共用する2線式構成をとる。一方,長距離回線は途中で増幅する必要があるため,送受話信号の伝送路が別々である4線式構成を採用している。この二つの回線構成の接続には2線4線変換用ハイブリッド回路が用いられ,バランス回路により両回線のインピーダンス整合を図っている。しかし,2線式伝送系のインピーダンスは線種,線路長の変化や端末機,搬送回線などの時変性により多様に変化するため,バランス回路だけではつねに十分なインピーダンス整合を得ることができない。このため,例えば送話者Aの音声信号の一部が相手側のハイブリッド回路でまわり込み,送話者A自身に戻ってくる。これを反響という。反響は伝搬遅延の長い衛星通信,あるいは海底ケーブルを用いた通信において大きな障害となる。また4線2線変換点における漏れにより,4線ループ内で起こる一種の発振現象を鳴音という。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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