弁・辯(読み)べん

精選版 日本国語大辞典 「弁・辯」の意味・読み・例文・類語

べん【弁・辯】

〘名〙
① 述べること。話すこと。
※小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉上「こは只概略の辨(ベン)なるから尚解しがたき由もあらめど」
② ことばづかい。ものの言い方。話しぶり。また、地名を表わす語と複合して、その話しぶりやことばのアクセントなどが、その地方独特のものであることを示す。「関西弁」「東北弁」など。
※付焼刃(1905)〈幸田露伴〉三「其様なると困っちまふよ、僕は辯が悪いから」 〔孟子‐滕文公・下〕
③ ものの言い方が巧みであること。雄弁であること。
※霊異記(810‐824)下「沙門辨宗は、大安寺の僧也。天年辨有り」 〔荘子‐盗跖
漢文文体の一種。言行の是非や真偽を解明するもの。唐のころ、盛んに流行した。〔文体明辯‐辯〕
⑤ 日本で、④にならって行なわれた説明文。物事の真実や道理などを解明した文。解説文。また、そのことば。特に、近世俳諧などで盛んに行なわれた。
※俳諧・本朝文選(1706)目録「巻之九 辯類 詩歌誹諧辯 丈草」
読本・椿説弓張月(1807‐11)後「予元来好古の癖あり。ここをもて漫に蛇足の辨(ベン)を添ふ」

べん‐・ずる【弁・辯】

〘他サ変〙 べん・ず 〘他サ変〙
① 言う。述べ言う。述べる。弁説する。弁じる。
※内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉一〇「其(その)(あらた)むべからざるを辨じたるが」
② 言いわけする。弁解する。弁じる。

べん・じる【弁・辯】

〘他ザ上一〙 (サ変動詞「べんずる(弁・辯)」の上一段化したもの) 述べたてる。言う。また、弁解する。弁ずる。
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉六「真うちがしっとりと弁(ベン)じると」

べん‐・ず【弁・辯】

〘他サ変〙 ⇒べんずる(弁・辯)

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