蛇足(読み)だそく

故事成語を知る辞典「蛇足」の解説

蛇足

余分なもの、なくてもよいむだなもののたとえ。

[使用例] 僕の母の意向は無論聞くまでもなかった。したがって百代子の年寄二人からもたらした返事もここに述べるのは足に過ぎない[夏目漱石*彼岸過迄|1912]

[使用例] こういう議論は、ハンチントンの研究の中では全くの蛇足なのであって[中谷宇吉郎*清々しさの研究の話|1938]

[由来] 「戦国策せい策」に見える話から。中国の戦国時代、という国の大臣が、の国と戦って勝ち、余勢を駆って斉の国まで攻め込もうとしたときのこと。斉から使者がやってきて、こんな話をしました。「主人からもらったお酒を賭けて、だれが最初に蛇の絵を描き上げるか、競争をした人たちがいました。いちばん先に絵を描き上げた人が、調子に乗って蛇に足を付け加えようとしたところ、それが終わらないうちに蛇を描き上げた人が、こう言いました。『もともと蛇には足がないんだから、足なんか描けるもんか』。結局、最初に蛇を描き上げた人はお酒を飲ませてもらえなかったということです」。それを聞いて、魏を相手に勝利を収めたのだから、斉と戦うのは余分なことだとさとった楚の大臣は、そのまま兵を引き上げたのでした。

[解説] ❶蛇に足を付け足すのは余分だ、というのは、わかりやすいですが、けっこう奇抜なたとえです。これが、自国が攻め込まれるかもしれないという切羽詰まった状況の中で生まれたと知ると、意外な重みに驚くのではないでしょうか。❷単に「余分」を指摘するだけではなく、「もう十分なのにまだやるの?」という文脈で使うと、効果的です。

〔異形〕蛇をえがいて足を添う/蛇の為に足を画く。

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精選版 日本国語大辞典「蛇足」の解説

だ‐そく【蛇足】

〘名〙 (「だ」は「蛇」の慣用音)
① 蛇(へび)の足。じゃそく。
② (蛇の絵を早く描く競争で、最初に描いた者が足まで描いて負けたという「戦国策‐斉策上・閔王」の故事から) よけいなもの。なくてもよい無駄なもの。じゃそく。
※丱余集(1409頃)下・識心同居埜語「未更添蛇足
※歌舞伎・曾我綉侠御所染(御所五郎蔵)(1864)六幕「五郎蔵が彼女を殺害なせしなどと、蛇足(ダソク)を添へて言はんは必定」

じゃ‐そく【蛇足】

〘名〙 (「じゃ」は「蛇」の呉音)
① 蛇(へび)の足。
② (蛇を描く競争で足まで書き加えて負けたという「戦国策‐斉策上・閔王伝」の故事から) 余計なもの。あっても何の役に立たないもの。不必要なもの。だそく。
※洒落本・大通秘密論(1778)「亀毛蛇足(ジャソク)の説といへども、等間(なほざり)をなすことなかれ」

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デジタル大辞泉「蛇足」の解説

だ‐そく【蛇足】

《昔、中国のの国で、蛇の絵をはやく描く競争をした時、最初に描き上げた者がつい足まで描いてしまったために負けたという「戦国策」斉策上の故事から》付け加える必要のないもの。無用の長物。
[類語]余計余分不必要不要不用無用無益無駄むだ無くもがなあらずもがな駄目台無しふいおじゃん空中分解挫折くたびれもうけおしまいわやパンクぼつあだいたずら徒労不毛無駄足無駄骨無駄骨折り骨折り損不経済二度手間無にする無になる無に帰する水泡に帰する水の泡

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の蛇足の言及

【曾我蛇足】より

…室町時代の画家の名とされるが,諸説があり不明な点が多い。現行の説で有力なものは,(1)蛇足軒は大徳寺真珠庵客殿の《山水花鳥図襖》あるいは群馬県立近代美術館蔵の《山水図》などを描いた夫泉宗丈(ふうせんそうじよう)(曾我派第2代,別号赤蠅)の軒号であり,確かに存在した名前である,(2)蛇足は江戸時代以降の文献にのみ見られる名前であり,真珠庵創建当時の画人の名としては確認できないので,後世混入の訛伝にほかならない,の2説がある。さらに最近は,(3)蛇足は墨渓以後の曾我派が代々用いた軒号であり,確かに存在した名前ではあるが一人の人物に確定することはできない,とする説も出されている。…

※「蛇足」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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