アメリカの小説家・ジャーナリスト、A・ビアスの辛辣(しんらつ)な警句集。1881年以降『サンフランシスコ・エグザミナー』紙や『ウォスプ』誌などに発表した風刺のきいた定義500余りをまとめて、最初『冷笑家用語集』(1906)として出版し、1911年の全集版で現行の表題に変更した。この版では定義の数は約2倍になっている。さらに、新聞などに発表したものを網羅した完全版が1967年に出版された。「幸福〈名詞〉他人の不幸を眺めることから生ずる気持ちのよい感覚」「外交〈名詞〉祖国のために偽りをいう愛国的な行為」といったように、いずれも彼の冷笑癖と風刺精神が遺憾なく発揮されている。なお、ビアスを日本に最初に紹介したとされる芥川龍之介の『侏儒(しゅじゅ)の言葉』は、この『悪魔の辞典』になんらかの影響を受けて書かれたのではないかといわれている。
[渡辺利雄]
『西川正身訳『新編悪魔の辞典』(1983・岩波書店)』▽『郡司利男訳『悪魔の辞典』正続(1982・こびあん書房)』
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